【1002号】実店舗型小売がインストアフルフィルメントモデルを導入しても、ネット専業に勝てない理由
◎本日のニュース
1)見出し
Guest Voices: In-Store Fulfillment is No Defense Against Amazon
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2)要約
従来型小売企業が実店舗をネット通販に活かすやり方には、重大な欠点がある。それは、強みを活かしたはずが、逆にコストが大きくかさむことである。その結果、コスト優位性を持つネット専業企業には対抗できなくなる。
実店舗を商品の受け渡しや宅配拠点に活用するインストアフルフィルメントモデルは、企業が担っていた作業を顧客にシフトするというロードシフティングとは真逆になる。底結果、作業が新たに増えることになり、コストは増大する。
3)キーとなる英文
The so-called omnichannel solution envisions those outlets operating both as familiar sites for merchandise display and as fulfillment nodes for online sales.
4)キーとなる英文の和訳
所謂オムニチャネルによる解決手法が想定するのは、商品を陳列するための一般的な場所と、ネット通販のためのフルフィルメントの中心点両方の役割を店舗が担うことである。
5)気になる単語・表現
forge | 他動詞 | (計画など)を案出する;(友情・関係など)を築く |
flaw | 名詞 | 欠点;傷 |
site | 名詞 | 場 |
envision | 他動詞 | ~を心に描く;~ということを予想する(=envisage) |
node | 名詞 | 中心点;結節点;交点 |
outflank | 他動詞 | ~の裏をかく;(競争相手)を出し抜く |
contractor | 名詞 | 請負人 |
roam | 自動詞 | 歩き回る |
retrieve | 他動詞 | ~を探して持ってくる;~を取り戻す、~を回収する |
concerted | 形容詞 | 協定された |
commonplace | 形容詞 | ごくありふれた、平凡な;ありふれた物 |
teller | 名詞 | 金銭出納係 |
merchanize | 他動詞 | ~を機械化する;~に機械を入れる |
congestion | 名詞 | 混雑 |
dubious | 形容詞 | 疑わしい |
stagnant | 形容詞 | 停滞した |
head-on | 副詞 | 正面に;単刀直入に |
utilization | 名詞 | 利用すること |
eliminate | 他動詞 | ~を除く |
dedicate | 他動詞 | ~に捧げる |
in a fashin | 副詞 | やり方で |
a good deal of | 名詞句 | 多くの |
silo buster | 名詞 | サイロ破壊用ミサイル |
inexorable | 形容詞 | 変えられない |
(今回ピックアップ英単語)
【dedicate】
(例文)
「~が(時間・精力など)を(人・目的など)に捧げる;~に専念する SVO to O(doing)」The teacher dedicated herself to teaching English.
「その教師は英語教育に専念した」
「(敬意・感謝・愛情などの印として)(著書・詩など)を~に献呈する」
Dedicated to my wife
「妻に捧ぐ(著書に印刷する献辞)」
(類義語)
「打ち込む、夢中になる」 dive
「捧げる(物を差し上げる)」 offer, sacrifice
「捧げる(尽くす)」 devote, sacrifice, consecrate, give
「専念する」 concentrate, devote, turn, give, be wrapped up in, get at, put one’s mind to
(コメント)
英文作成において、役立つ単語。
6)ビジネスのヒント
記事で取り上げられたインストアフルフィルメントモデルとは、実店舗をネット通販に活用するというもの。
【実店舗のインストアフルフィルメントモデル】
- ネット通販で購入されたものの受け渡し場所
- ネット通販で購入されたものの出荷場所
1は所謂オムニチャネル戦略による実店舗活用手法。日本ではセブン&アイグループが力を入れています。2は、ネットスーパーが好例であり、店舗を物流倉庫として活用し、店舗から宅配することになります。
実店舗型小売企業が、実店舗にインストアフルフィルメントモデルを導入するのは、ネット通販専業企業に顧客が奪われる中、自社の強みを活かすため。また、実店舗の売上が低迷する一方で、ネット通販は凄まじい勢いで拡大しているので、ネット通販の成長の果実を得るためでもあります。いずれにしても、コストの掛かる実店舗を、ネット専業企業にはない強みとして活かしていることになります。
しかし、現実には強みを活かすどころか、逆にコストが嵩む結果になり、コスト優位性に優るネット専業企業との競争にマイナスに働いています。
【インストアフルフィルメントモデルが成功していない理由】
- 企業活動の一般的なトレンドであるロードシフティングの逆であるから
- 狭い店舗でのフルフィルメント機能には機械化が難しいため
1について、ロードシフティングとは、従来企業が行っていた作業を顧客にシフトすることです。好例は、銀行のATM。顧客がATMを操作することで、自分で現金の預け入れ・引き出しを行うことにより、銀行は金銭出納係を大幅に減らすことができます。同様に、航空会社の自動チェックイン機はカウンター従業員を、スーパーのセルフレジはレジ係を、減らすことができます。一方で、実店舗のインストアフルフィルメントモデルでは、従来顧客が行っていたピックアップ・梱包を企業が行うことになります。ロードシフティングとは真逆になり、作業・コストが増えることになります。これでは、コスト優位性でネット専業企業に勝てません。
2について、本来物流倉庫で行うピッキングから梱包までの作業を、狭い実店舗で行うことには無理があります。当然、大型機械を要する機械化も進まず、生産性を引き上げることは難しくなります。逆に、狭いバックルーム(来店客から見えない実店舗の裏作業場)で多くの人員が様々な作業を行わなければならないので、生産性は大きく下がりがち。これでは、ネット専業とのコスト競争には勝てません。
ただでさえ価格競争の激しいネット通販市場で、作業効率が低くコストが高くなれば、収益拡大はなかなか進まないことになります。
それでも、実店舗企業がインストアフルフィルメントモデルで実店舗の活用を進めるのには、次のような期待があります。
【インストアフルフィルメントモデルへの期待と現実】
- 拡大するネット通販ユーザーの来店が見込めることに寄る客数増→実際には、衝動買いはほとんど見込めない
- 実店舗から宅配することによる配送コストの低減→実際には、最大のコストであるピッキング・梱包作業のため物流トータルコストは増加
1は、店舗を受け渡し拠点にすることで、拡大するネット通販ユーザーの来店が見込めるということです。実店舗内を回遊してもらえることで、追加購入が期待できます。しかし、現実には、利便性重視で店舗受け渡しを選択しているので、購入品を受け取るだけで終わり、衝動買いはほとんど生まれないようです。
2は、宅配の目的地に近い実店舗から配送することで、配送コストの低下が見込めるということです。しかし実際には、最大のコストであるピッキング・梱包作業を狭い実店舗で行わなければならなくなり、逆にトータル物流コストは上昇することになります。
では、実店舗型小売企業は、ネット専業とどう戦えば勝算が生まれるのか?記事では、次のような提案が行われています。
【実店舗型小売企業のやるべき施策】
- 実店舗を使わずに、他社やサードパティーと組んで効率的なフルフィルメントセンター網を構築せず
- 現行のインストアフルフィルメントモデルにイールドマネージメント手法を導入し、固定費を上げずに稼働率を引き上げる
- 実店舗の従来モデルを変更する
1について、もともと機械化の余地の大きなフルフィルメント機能は、大きな倉庫ことでコストを引き下げることができます。そもそも、狭い実店舗には向かない機能なのです。よって、実店舗の活用を諦め、より効率的なフルフィルメントセンター網を他社と組んで作ったり、能力に長けるサードパーティーに委託したりすればいいのです。
2について、現行のインストアフルフィルメントの運営手法を変えるということです。具体的には、固定費を増やさずに、繁忙に応じて価格を変えることで、稼働率を最大化するということです。これにより、限界利益さえ稼げれば、現状の実店舗の営業損益は向上します。
3は実店舗のモデルを変えるということ。つまり、売場と残りのバックルームの比率を変えることで、バックルームでの作業効率を引き上げるのです。例えば、スマホによるコードスキャンで購入できるようにすれば、陳列する商品点数を減らせ、売場面積を小さくできます。また、思い切って売場をショールームにして、購入をネット通販に任せることでも、売場を狭くできます。
実店舗型小売企業が、実店舗の活用にこだわるのには、アマゾン・ドット・コム社の動きにも関係します。アマゾンはいずれ実店舗を開発すると予想されており、その実店舗は、最近発表されたサイトの運営手法を真似ると推測されます。具体的な言及は記事にはありませんが、恐らく、従来店舗のような商品を陳列するだけではなく、購入を喚起するような楽しめる売場(ショールーム)にするのでしょう。このアマゾンの予想される動きを考えれば、現状のインストアフルフィルメントモデルでは、アマゾンの実店舗進出に対処できないことがわかります。
【注目点】
- 製造業だけではなく、実店舗型小売業でも、イールドマネージメントの発想は必須になる
- ネット通販に慣れた消費者が増えると、実店舗に求められる買物体験は変わる
注目点の一つ目は、固定費を増やさず限界利益の最大化を目指すイールドマネージメントの考え方は、実店舗型小売企業にも必須になるのではないか、ということです。実店舗には、来店客の少ない閑散な時間が存在します。その時間に限界利益を稼げる機会を獲得できれば、収益を拡大することはできるのです。
二つ目は、ネット通販の便利さに慣れた消費者が増えると、品揃えと利便性以外の要素が実店舗の必要になるということです。単に取り扱い点数を増やしただけでは、空間に制約のないネット通販には勝てません。実店舗には、ネット通販にはない楽しさやサービスが求められるのではないでしょうか。
何もしなければ、ネット通販に顧客が奪われる。しかし、うまくやらなければ、コストだけ嵩み、収益は悪化する。実店舗型小売企業は、現在こういうジレンマに陥っているのでしょう。今後どのようにネット専業企業に対抗するかには、注目です。
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《今回のヒントのまとめ》
- 実店舗をネット通販の受け渡し場所や宅配拠点に活用するインストアフルフィルメントモデルがうまく機能しないのは、ロードシフティングの逆だからである。インストアフルフィルメントでは、顧客が行っていたピッキングや梱包などの作業を、逆に企業が行うことになる。
- また、狭い実店舗でフルフィルメント機能を行うので、思うような機械化が進まないばかりか、逆にコストが高くなる。これらにより、コスト優位性に優るネット専業よりも劣ることになる。
- 実店舗型小売企業がインストアフルフィルメントモデルに期待するのは、拡大するネット通販ユーザーの来店増と配送コストの低下である。しかし現実には、ネット通販ユーザーには衝動買いは見込めず、また最大のコストであるピッキング・梱包作業が加わることで、トータル物流コストは上昇する。
- 実店舗型小売企業が行うべきことは、実店舗にこだわらず効率的なフルフィルメントセンター網を構築することである。また、現行のインストアフルフィルメントモデルでイールドマネージメント手法を導入したり、実店舗の売場・バックルーム比率を変えることでコストを下げたりして、低コストに徹するということである。
- 実店舗にも、限界利益の最大化を目指すイールドマネージメント手法は必須になるかもしれない。また、ネット通販市場が拡大することにより、実店舗が顧客に提供できる価値は変わるだろう。
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ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
HPのノートパソコン「HP EliteBook Folio G1」
まだ東芝のKIRAが現役なので、購入することはまずないですが、軽さ・価格・性能(スペック)で、毎日持ち運びに耐えるビジネス用パソコンではないでしょうか。
見た目も、アップル製品に似ており、悪くありません。
12.5型というのもいいですね。私のKIRAは13.3型で、無駄に大きいと常に感じています。(その分作業はし易いのも事実ですが)
970gというのは、持ち運びに羨ましいほどの軽さです。
駆動時間は11.5時間。実質どの程度持つかは不安ですが、まぁ8時間持てば十分でしょう。(私は長くても5時間ほどですが)
価格は少し高く感じますが、11万円ほどであり、パナソニックのレッツノートや東芝KIRAよりも割安。
次買い換える時は、候補に上がること間違いなしです。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
セブンのオムニチャネルは、興味がありますが、まだ使ったことがありません。
良く使う通販サイトは、ヨドバシ・ドット・コム。
送料が完全無料で、しかも安いので、必要になるとついついヨドバシで検索してしまうほどです。
ボールペン一本でも送料無料なので、利益が出ているのかどうかは気になるところです。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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