【1063号】自動運転ベンチャーがトラック業界に注目する理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Self-Driving-Truck Startups Race to Take On Uber
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2)要約
これまで乗用車への適用に力が注がれていた自動運転技術が、トラック業界に着目している。というのも、トラック業界には、ドライバー不足と労働時間の規制強化という逆風が吹いており、自動運転へのニーズが高いからである。
また、AIの専門家によると、自動運転は市街地の込み入った道よりも、単調な高速道路の方が適応しやすいという。これらの理由から、スタートアップ企業による、自動運転の貨物トラックへの適応事例が増加している。
3)キーとなる英文
As a legal dispute ensnares Uber Technologies Inc.’s robot-trucking division, several startups are showing off their own efforts toward self-driving delivery vehicles that would reinvent the freight business.
4)キーとなる英文の和訳
法律上の論争により、ウーバー・テクノロジー社がロボットトラック部門を立ち上げたように、いくつかのスタートアップ企業が、配送用自動運転車の開発を公表している。
それらは、貨物輸送ビジネスを再定義するだろう。
5)気になる単語・表現
ensnare | 他動詞 | ~を(わなに)掛ける;~を誘惑する |
freight | 名詞 | 貨物輸送 |
substantial | 形容詞 | 相当な |
swagger | 名詞 | いばった歩き方 |
stunt | 名詞 | 離れ業;扇情的な行為 |
haul | 他動詞 | (物)を車で運ぶ |
(特に覚えておきたい単語)
【substantial】
(英英)
- large in amount, value or importance
- (usually before noun)(formal) large and solid; strongly built
(コメント)
「数量・価値などが大きい」という意味で覚える。
6)ビジネスのヒント
自動運転の記事が日経新聞に掲載されない日がないぐらい、自動車業界のみならずビジネス好き(?)の人の中で話題の自動運転ですが、アメリカではさらにその先を行っています。これまで乗用車への導入が大きなトピックになっていましたが、今ホットなのは貨物トラックへの導入です。次のような理由を見れば、ビジネスチャンスの大きさがわかるかと思います。
【自動運転技術が貨物トラック業界に着目する理由】
- ドライバー不足のため、自動運転ニーズが高いから
- 労働時間の規制強化のため、少ない人数で稼働時間・収益の最大化を目指す必要性が生じたから
- もともと市場自体が大きいから
- 貨物トラックのメインルートである高速道路の方が、市街地路よりも自動運転技術を適応しやすいから
- ベンチャーキャピタル(VC)の注目度が高く、イグジットしやすいから
1・2は、トラック業界が直面する外部環境の変化です。1について、ドライバー不足の理由は明記されていませんが、恐らくキツい割に給料が安いから敬遠されるのでしょう。だから、ドライバー不足に陥っています。この供給のボトルネックを克服してくれるのが、人手が不要(完全ではないかもしれませんが)な自動運転技術なのです。
2について、労働時間規制の強化も、働けるドライバーの減少を導き、1と似た要因になります。
3について、これはトラックへの自動運転技術の適用を目指すスタートアップ企業・エンバークの創業者の言葉が物語っています。創業者のアレックス・ロドリゲス(メジャーリーガーではありません)は、高速道路でトラブった時に、6秒おきにトラックを見たようです。しかも、多くのトラックには、「ドライバー募集」の張り紙が。この2つの光景から、トラック業界に自動運転ニーズが強いことを察知したのです。6秒に1台トラックが走っているということは、それだけ稼働しているトラックの数量が多く、市場自体が大きなことを物語っています。
4について、そもそも自動運転技術は、複雑な市街地の道路より単純な高速道路を得意とします。得意とするというよりも、適応が簡単なのです。技術的側面からも、トラック業界への導入を目指すことは理にかなっているのです。
5について、トラック業界への自動運転技術の導入を目指すスタートアップ企業が最近急増していますが、その一番の要因はVCの注目度の高さでしょう。また、ウーバー社による買収事例もあります。つまり、資金調達しやすく、さらに売却によるイグジットもしやすい環境だからこそ、スタートアップ企業が着目しているのです。
記事で紹介された各スタートアップ企業をまとめると、次のようになります。
【トラック業界に着目する自動運転系スタートアップ企業】
- エンバーク(サンフランシスコ):2つのレーザーとカメラで自動運転が可能に。大手ベンチャーファームのマベン・ベンチャーズが投資。
- スタースカイ・ロボティクス(サンフランシスコ):375万ドルの調達に成功。貨物企業と協業し、試験ドライブを目指す。
- ドライブアイ(マウンテンビュー):エリア限定の中距離輸送こそ、自動運転を導入しやすいと考える。コンピューターの消費電力の削減を目指す。
すべてに共通するのは、シリコンバレーが創業地・本社であること。自動車に適用される自動運転技術ですが、IT企業・IT業界が主体であることがわかります。
ただし、次のような課題も存在します。
【トラック業界への自動運転技術適応に関する課題】
- ベンチャー企業が詳細な計画を発表したのはつい最近のことで、実現性はまだ乏しい。
- ウーバー社・アルファベット社(グーグル親会社)など大手もひしめくほど競争が激しい。
- 貨物企業との協力がないと、公道での試験運転ができない。
1について、トラック業界への適応が騒がれたのは、つい最近のこと。まだ計画が発表されたに過ぎません。どの程度現実に適応できるかよくわからない、これが現状でしょう。
2について、スタートアップ企業が注目するからには、大手も見逃しません。だからこそ、企業売却によるイグジットが可能なのかもしれませんが、それまでは大手と競争しなければならないのです。成功すれば大きいですが、それまでが大変なのです。
3について、貨物トラックを自前で用意できるスタートアップはなかなかないようです。さらに、トラック業界の実情に合わせるにも、貨物トラック企業との協業は避けられません。提携なら簡単にできそうですが、記事によると提携・協業にまで至るまでがなかなか大変みたい。創業したての企業だからこその信用不足も関係しているのでしょう。
【注目点】
- 自動運転の先にあるのは、貨物量・ルートのデータ取得?
- 日本でも宅配業界での人手不足・労働時間規制強化があるなど、日本にも適応可能なビジネスではないか。
- 個人よりも法人相手なので、ビジネスとして安定しやすい
1について、自動運転技術は、センサー・カメラにより多種多様なデータを取得します。例えば、貨物量やルートのデータが取得できれば、他のビジネスにデータ販売が可能になるかもしれません。もしかしたら、自動運転の本当の目的は、データ取得にあるのかもしれません。
2について、ヤマト運輸のサービス縮小・値上が大きく報じられるように、日本でも宅配業界で人手不足・労働時間規制の強化が存在します。ならば、アメリカでの成功事例は、日本にも持ち込めるのではないでしょうか。日本にもビジネスチャンスはありそうです。
3について、個人が最終的に使う乗用車ではなく、法人が使う貨物トラックは、より経済合理性を優先します。つまり、利益増・コスト減につながるならば売れるのが、ビジネス向けの特徴なのです。また、継続利用もしやすいことも、ビジネスの安定性につながります。
自動運転技術は、人口減少の日本ではニーズの高い技術でしょう。ただ、その技術にどの程度のプレミアム価格が付くかによって、個人にどの程度普及するかを決定づけるます。その点、収益にプラスに働きさえすれば、いくらプレミアム価格が付いたとしても、売れるのが法人向け。スタートアップ企業などIT企業が、乗用車よりも貨物トラックに着目するのは、この点からかもしれません。逆に言えば、乗用車向けの自動運転技術は、コスト・技術面から成立しにくいのかもしれませんね。
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《今回のヒントのまとめ》
- IT系スタートアップが自動運転技術の貨物トラック適用に着目するのは、トラック業界に、人手不足・労働規制強化という外部環境の変化が起こっているからである。
- 技術面では、より単調な高速道路の方が、自動運転技術が適用しやすいということも、トラック業界に注目させる。
- ビジネス面では、市場の大きさ・エグジットのしやすさは、見逃せないだろう。
- ただし課題もある。スタートアップ企業の計画は、最近発表されたばかりで、現実性に乏しい。また、大手との競争が激しい分野であり、貨物企業との協業が不可欠な点も、ハードルを高める。
- 自動運転により移動中に多種多様なデータ取得が可能となる。このデータが次のビジネスを生み出す可能性も高く、データ取得が本当の目的なのかもしれない。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
年末はふるさと納税を幾つかしたのですが、この御礼品はかなりお得と思いませんか?
なんと900mlの芋焼酎が6本も入っているのです。
これが1万円の寄付でもらえます。(もちろん、税額控除されるので、ある程度所得のある人ならば、2000円の負担になります。)
ふるさと納税の芋焼酎を、他の自治体でも調べましたが、1万円で1.8mlX3本が最高。この小正醸造のセットは、900mlながら総量は同じです。900mlの分だけ、注ぎやすいという利点もあります。
まだ飲んでいませんが、かなり楽しみです。
ちなみに、小正醸造の鹿児島県限定焼酎は、楽天市場でも販売されています。
7000円ほどなので、7割の還元になりますね。
スゴイコスパです。
編集後記
肺炎かと思うぐらい、咳が酷いです。
次の週末に病院に行ってみます。
というわけで、最近お酒も全く飲んでいません。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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