【1069号】ファストファッションのザラがネット通販拡大のために大型店を増やす理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Zara’s New Focus: Bigger Bricks, More Clicks
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2)要約
ファストファッション大手・インディテクス社傘下のザラは、ネット通販戦略として他者の先を行く。小型店を大型店に集約することにより、大型店での客単価を引き上げ、同時により利便性の高いネット通販の売上向上を目指している。
この背景には、消費行動の急速な変化がある。つまり、ネット通販の利用を増やすと同時に、実店舗での買い物を減らす消費者が増えているのである。この結果、従来型の小売企業は、アマゾンなどのネット通販専業企業への顧客の流出という事態に直面しているのである。
3)キーとなる英文
Zara’s new flagship store in its hometown here illustrates part of the fashion retailer’s strategy to stay ahead of its rivals: focusing on bigger brick-and-mortar stores and an online expansion.
4)キーとなる英文の和訳
本拠地に出店したザラの新しい旗艦店を見れば、競合他社よりも先を行くそのファッション小売企業の戦略を垣間見ることができる。
つまり、実店舗の大型化とネット通販の拡大に力を注ぐということである。
5)気になる単語・表現
shun | 他動詞 | ~を避ける |
replenish | 他動詞 | ~を再び満たす |
rapid-fire | 形容詞 | 矢継ぎばやの;迅速な |
prod | 他動詞 | ~を駆り立てる |
(特に覚えておきたい単語)
【relevant】
(意味)
- 関連がある;適切な、妥当な
closely connected with the subject you are discussing or the situation you are thinking about
- 実際的な意味(重要性)を持つ
having ideas that are valuable and useful to people in their lives and work
(コメント)
店舗ビジネスに関する記事で頻出の単語。各社、顧客との関係性を深める努力をしており、その意味としてrelevantがよく使われる。
6)ビジネスのヒント
今回の記事も、消費のネット通販シフトに関係します。ネット通販関連の記事がここまで増えると、ネット通販シフトが従来型の実店舗主体の小売企業をどれだけ苦しめているのかが理解できます。
今回取り上げるのは、ファストファションチェーンのザラを運営するインディテックス社。このインディテックスが、ザラ店舗の大型化を進めているようです。もっと詳しく説明すれば、小型店を閉めると同時に、その近くに大型店を出店しています。つまり、小型店の大型店への集約を進めているのです。
この背景には、もちろん消費者のネット通販シフトがあります。つまり、逆説的ですが、店舗の大型化を進めるのは、ネット通販売上を拡大するためでもあるのです。そのカラクリをまとめると、次のようになります。
【店舗の大型化とネット通販の拡大が関連する理由】
- より身近な小型店が少なくなることで、より利便性の高いネット通販の利用が増えるから。
- 大型店を増やすことにより、ブランドの考え方を伝えやすくなり、顧客との関係性が深まり、ブランドロイヤルティが高まるから。
1について、大型店を増やすと同時に、小型店を閉鎖しています。それで割を食うのが、その小型店を利用していた顧客。大型店までわざわざ足を向けるのが面倒になります。そこで登場するのが、ネット通販です。閉鎖する小型店の顧客にネット通販の利用を薦めることにより、インディテックス社自らがネット通販シフトを進めることになります。この結果、ネット通販の売上を拡大することができます。
2について、一方で大型店は、ザラの考え方を伝えるショールームのような役割を果たすことになります。品揃えも豊富で、売場の装飾も豊かならば、店内を回遊すること自体が楽しくなります。その結果、買上げ点数の増加が期待できるのです。つまり、実店舗の売上も増加が期待できることになります。
このように、店舗の大型化を進めることで、ネット通販売上の拡大のみならず、実店舗の売上拡大も同時に狙うことができるのです。ここが、インディテックス社の店舗戦略の秀悦なところです。
ザラの実店舗戦略をまとめると、次のようになります。
【ザラの実店舗戦略】
- 小型店の閉鎖と大型店の出店を同時に進めることにより、1店舗あたりの売り場面積を増やし、固定費比率を削減できる。
- 大型店を増やすことで、客単価の向上が期待でき、1店舗あたりの売上を伸ばすことができる。
- 小型店の顧客にネット通販の利用を薦めることで、ネット通販の売上を拡大できる。
1はコスト削減、2・3は売上拡大です。従来型小売企業がネット通販への投資を拡大させると、とかく費用が増幅し、収益が悪化しがちです。その点、インディテックス社は小型店の閉鎖・大型店の出店を同時に進めることにより、コスト削減にも力を入れています。また、小型店を閉鎖することで、実店舗とネット通販のカニバリを回避しています。この結果、収益の向上が期待できます。
実際、この実店舗戦略を採用した2016年の通期業績は、大きく向上しています。
【インディテックス社の2016年業績】
- 売上は過去最高の233億1000万ユーロ(全8ブランド・全地域で売上が増加)
- 純利益は10%増
今期も経過した6週間で、既存店売上は6%増、実店舗・通販サイトの合計売上(為替調整後)で13%増を記録しています。ちなみに、同業他社のヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)社は、既存店売上が11%減。この対照的な結果は、実店舗戦略の差でしょうか。
H&M社は、スピード重視で店舗拡大策を継続していますが、収益にはプラスに働いていません。一方のインディテックス社は、H&M社との店舗拡大競争を止め、小型店の閉鎖と大型店の出店に転換。この結果、店舗の純増数はあまり大きくないものの、収益は大きく向上しました。(2016年の店舗純増数は279で、全部で7300店舗にまで拡大。)今期も、450から500店舗の大型店の出店を進めると同時に、150から200の小型店の閉鎖を予定しています。
消費のネット通販シフトに直面するアパレル企業ですが、多くの企業は、不採算店など多数の店舗を閉めて出血を止めてから、再度出店に転換しています。(例えばギャップ社)周回遅れで、店舗閉鎖を積極的に進める段階の企業も存在します。(例えばメイシーズ社)この点、小型店舗の閉鎖と大型店の出店を進め、同時にネット通販の売上拡大を目指すインディテックス社は、商品開発から販売まで素早く行うのと同じように、実店舗戦略でも素早さが感じられます。これが、好業績に結びついているのでしょう。
【注目点】
- 消費のネット通販シフトが続く中、実店舗には販売以上の意味が求められる。
- 大きな投資を要するネット通販売上の拡大を成功させるには、一方で厳格なコストコントロールが必要。
1について、大型店の出店を進めるインディテックス社ですが、単にザラの大型化だけではなく、複数のブランドを集めた店舗も増やしています。つまり、そこに行けば、インディテックス社の考え方を楽しめるのです。売場を見るだけでも楽しめるので、実店舗を訪問することはコト消費と言っても過言ではありません。単にモノを並べて売るだけでは、実店舗ビジネスは成り立たないのかもしれません。
2について、ネット通販に力を入れる実店舗型小売企業は多いものの、うまく行ってるところは少ないのが現実。それは、ネット通販への投資はカネが掛かるからです。その点、インディテックス社はネット通販への投資と同時に、小型店の閉鎖・大型店の出店を同時に進めています。つまり、コストコントロールをしながら、ネット通販対策を行っているのです。だから、収益拡大に成功しているのではないでしょうか。
個人的には、サイズが合わないことの多いザラで買い物することは滅多にありません。ただ、これだけ収益を拡大していることを知ると、一度店舗を視察する意味でも、訪問したいと思います。これも、インディテックス社の戦略なのかなぁ。(笑)
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《今回のヒントのまとめ》
- ザラは小型店の閉鎖と大型店の出店をすることにより、小型店の顧客にネット通販の利用を促すことができる。この結果、ネット通販売上は増加する。
- 一方で、大型店を増やすことで、店舗滞在時間が増えるので、ブランドロやルティを高めることができる。また短期的には、買い物点数が増えることで、客単価の向上が期待できる。
- さらに、固定費比率の低い大型店は、収益性の向上にも寄与する。だから、ザラを運営するインディテックス社の業績は、すこぶる良い。
- 一方、消費のネット通販シフトに直面する実店舗型小売企業は、店舗閉鎖を行ってから再度出店に転換する企業が多い。店舗の大型化とネット通販売上の拡大を同時に目指すインディテックス社は、この点競合他社よりも進んでいる。
- 実店舗には、物販だけではなく売場を楽しむコトとしての価値も期待されている。また、カネの掛かるネット通販への投資は、より厳格なコストコントロールをあってこそ、成功するのではないか。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
年末はふるさと納税を幾つかしたのですが、この御礼品はかなりお得と思いませんか?
なんと900mlの芋焼酎が6本も入っているのです。
これが1万円の寄付でもらえます。(もちろん、税額控除されるので、ある程度所得のある人ならば、2000円の負担になります。)
ふるさと納税の芋焼酎を、他の自治体でも調べましたが、1万円で1.8mlX3本が最高。この小正醸造のセットは、900mlながら総量は同じです。900mlの分だけ、注ぎやすいという利点もあります。
まだ飲んでいませんが、かなり楽しみです。
ちなみに、小正醸造の鹿児島県限定焼酎は、楽天市場でも販売されています。
7000円ほどなので、7割の還元になりますね。
スゴイコスパです。
編集後記
3月に大型プロジェクトがあった関係で、睡眠時間がすこぶる短くなりました。
一睡もせずに、翌朝の仕事が始まることも何度あったことか。
そろそろカダラが悲鳴をあげそうなので、一度休ませてあげる必要があるでしょうね。
温泉でも行きたいなぁ。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2017/04/03 | ファッション・アパレル業界, 小売業界 アパレル, コストコントロール, ネット通販, ファストファッション, 店舗
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