【1074号】赤字のテスラの時価総額がフォードを抜いた本当の理由とは?
※火曜日は簡易版に変更しました。
◎本日のニュース
1)見出し
Not a Dot-Com Bubble, Not 2007, but a Nasty Mix of Both
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2)ビジネスのヒント
今日は久しぶりに金融市場のお話。日経新聞等でも報じられた通り、電気自動車のテスラ社の時価総額が、フォード・モーター社を抜きました。それどころか、先週にはGMをも抜き、ついに米自動車メーカーの首位に。これだけ見ると、アメリカ自動車業界で異変が起こっているように捉えられますが、実はテスラの損益は赤字。さらに、収益規模がフォード・GMよりも小さいのです。収益が小さくてしかも赤字の企業の時価総額が、業界首位に立ったのはなぜか?
【テスラの時価総額が米自動車業界首位になった理由】
- 現在のバランスシートよりも、将来の収益期待が重視されるから
- 債券市場・株式市場双方から資金調達しやすいから
1について、現状だけを見れば、テスラはフォードやGMよりも収益規模・収益性は劣ります。しかし、将来期待は両社よりもずっと高く、テスラの主要事業である電気自動車は将来性の高い商材なのです。だから、規模・収益性で劣るにも関わらず、期待で株価は上昇し、時価総額が首位になったのです。
2について、赤字企業でも株価が上昇するということは、それだけマネーが株式市場に流れ込んでいるという証拠。さらに、債券市場でも、FRBの低金利政策により資金調達しやすい環境が整っています。この背景には、アメリカ経済の経済成長率は低い一方で、着実な成長が予想されていることがあります。だから、低金利(=債券高)と株高が両立しているのです。実際、借り入れし易い環境から、債券発行による自社株買いを行い、ROEを見せかけで上昇させ、株価上昇・時価総額拡大を目指す企業が多々あります。
もし、低金利と着実な成長という2つの条件が見直されれば、収益期待よりも現状のバランスシートが着目され、負債バブルとも言うべき現状が崩壊するかもしれません。今回の記事では、この警鐘が過去のネットバブル・金融バブルとの比較で説明されています。
【2000年ネットバブルの特徴】
- ネットという新しいテクノロジーが高収益成長を導くという期待から株価上昇
- IPOラッシュで株式市場から資金調達する企業が急増
- バブル崩壊するも株価の調整により景気後退はさほど大きくなかった
【2007年の金融バブルの特徴】
- 低金利により企業の債券発行による資金調達が急増
- バブル崩壊により企業は負債の株式化を余儀なくされた
現在の状況は、2000年と2007年をミックスしたようなもの。つまり、株式市場は上昇しているものの、債券よりも依然割安なため、株式市場からの資金調達も盛んです。一方で、低金利政策により債券発行・自社株買いも頻繁に行われ、この結果さらに株価は上昇しています。
注意を要するのが、FRBの資産圧縮と景気拡大の終了。前者は、金利引き上げと米国債の圧縮により、債券価格の低下・金利上昇を引き起こします。後者は、自動車販売などのデータに7年以上継続した景気拡大の終焉がちらほら表れてきました。この影響は、負債額の大きく、現状収益の悪い企業を直撃します。これはまさにテスラに他なりません。つまり、将来期待よりも現在のバランスシートが重視されることで、負債額が大きく期待で買われた企業の株価が暴落しかねないのです。
実際、米国の優良企業の有利子負債キャッシュフロー倍率(=有利子負債/営業キャッシュフロー)が、昨年をピークに下がってきています。つまり、優良企業はこのユーフォリアのような環境がそろそろ終わると予想して、負債を減らしてきているのです。
ちなみに、テスラに時価総額を抜かれたフォードは、2008年の金融危機を教訓に自動車事業では負債よりも多いキャッシュを保持しています。(「自動車事業」としたのは、ローンなどの「金融事業」ではその事業形態上負債が大きいから。)
【注目点】
期待抜きの企業の実際の姿は、バランスシートに表れる。
企業の実際の姿を知りたいのなら、バランスシートに限ります。株価・時価総額には将来期待が大きく反映されています。また、損益計算書は過去の実績であり、厳密に言えば現在の姿ではありません。
ダウ平均は2万ドルを超えて、なかなか下がる気配がありません。株式市場に詳しい人なら、日柄調整と解するかもしれません。しかし、FRBの政策転換・景気循環により、そろそろ株価の大幅調整が起こっても不思議ではないのです。特に、負債の大きな企業は、財務の方針転換を余儀なくされそうです。
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《今回のヒントのまとめ》
FRBの資産圧縮・景気循環により、7年以上続いた負債バブル・株式バブルが終わりを告げるかもしれない。
企業の本当の姿は、時価総額ではなくバランスシートに表れる。
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7)おすすめ商品・サービス
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編集後記
今年から来年に掛けてアメリカ株の大幅調整が起こると予想しています。
その時のために、できるだけキャッシュ比率を高くしたいのですが、なかなか下がりませんね。
でも、我慢。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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今回は私が恩返しします!
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