【1081号】アメリカの床屋にジャックダニエルのスプレーがある理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Liquor Makers Step Up Efforts to Win Over Hispanic Drinkers
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2)要約
世界の大手リカーブランドは、ヒスパニック系やアフリカ系などアメリカの少数人種の顧客獲得に力を注いでいる。そのため、少数人種の集まりやすい場所に販促物を提供している。
その理由は、平均年齢の低い少数人種の飲酒可能人口が大きく増加しているからである。また、リカーブランドがまだ浸透していないために、新規開拓しやすいというメリットもある。
一方、経済成長率の高い新興国は、収益変動が大きく、グローバル収益全体を左右する。アメリカ市場は変動率の高い新興国の収益を補ってくれる。
3)キーとなる英文
The world’s biggest liquor makers are increasingly targeting members of racial and ethnic minorities—mainly Hispanics and African-Americans.
4)キーとなる英文の和訳
世界のリカーメーカー大手は、少数の人種・民族への販促を増やしている。
大部分はヒスパニックとアフリカ系アメリカ人である。
5)気になる単語・表現
stool | 名詞 | 腰掛け |
jockey for | 自動詞句 | 策を弄して~を狙う |
ethnic | 形容詞 | 民族の |
caucasian | 名詞 | 白人 |
serving | 名詞 | 1単位 |
propensity | 名詞 | (生まれつきの)傾向 |
proponent | 名詞 | 提案者;擁護者 |
wring | 他動詞 | ~を力づくで得る |
(特に覚えておきたい単語)
【propensity】
a tendency to a particular kind of behavior
(コメント)
同じ傾向でも、「好ましくないことへの傾向」である点に注意。
6)ビジネスのヒント
記事には、床屋にジャックダニエルのスプレーの画像が掲載されています。もしかしたら、ジャックダニエルがビューティー商品に進出したのか、と思いましたが、事実は異なるようです。これらは単に販促物。ジャックダニエルは床屋で販促をしているのです。
正確には、ヒスパニック系の集まる床屋での販促。ヒスパニック系などアメリカの少数人種への販促は、ジャックダニエルだけではなく、世界の大手リカーメーカーが行っています。その理由は、以下の通り。
【大手リカーメーカーがアメリカ少数人種への販促に力を注ぐ理由】
- アメリカ市場は安定的に拡大しているから
- 少数人種へのリカーブランドの浸透はまだ弱く、新規開拓しやすいから
- 平均年齢が低く、長期的に飲酒可能人口増が見込めるから
- スピリッツを好む傾向があり、白人よりも消費数量が多いから
1について、対照的なのは、経済成長率の高い新興国市場。こちらは高い成長が期待できる一方で、変動率は高い。よって、新興国への依存度が高まれば、グローバルの収益の変動率も高くなるのです。一方のアメリカ市場は、成熟市場であるものの、巨大で依然成長が見込まれています。
2について、さらに少数人種の消費者は、世界的なリカーブランドをさほど知っておらず、新規顧客の開拓が容易なのです。アメリカという安定市場の中に、少数人種という成長市場があるというイメージです。
3について、また、少数人種は平均年齢が低いために、飲酒可能人口の増加が見込めます。店舗ビジネスで言えば、客数増が見込める市場なのです。例えば、全米ヒスパニックの三分の一は、18歳未満。黒人が26%、白人が19%であることを考えると、その平均年齢の低さが際立っています。
4について、しかも少数人種は、スピリッツを好んで飲む傾向があるようです。店舗ビジネスで言えば、客単価の高い層なのです。例えば、定期的に飲酒するヒスパニックは、アメリカ人の平均的飲酒層よりも、スコッチを34%多く飲むというデータがあります。ヒスパニックが月13本飲むのに対し、アメリカ人平均は10本とのこと。
3・4から、客数の増加が今後見込め、さらに客単価が高いので、長期的な市場拡大が期待できることがわかります。
人口増加に関しても、少数人種に分があります。
【相対的に高い人口増加が見込める少数人種】
- ヒスパニック:全アメリカ人に占める割合18%(2015年)→19%(2025年)
- アフリカ系:12%→13%
(参考)白人62%→58%
※比較年度は同じ
このようにアメリカで市場拡大が見込める少数人種ですが、少数人種をターゲットにした販促増に対しては、次のような批判があります。
【少数人種をターゲットにした販促への批判】
- アルコール度数が高く、容量の大きなスピリッツの販促に力を入れることにより、アルコール依存を高める恐れがある。
- ヒップホップの有名人など若者への販促を強めれば、未成年飲酒を誘発しかねない。
2については、未成年飲酒は歴史的に低い水準にある、というメーカーの反論があります。
各社の少数人種対策として、以下の事例が紹介されています。
【リカー大手各社によるアメリカ少数人種対策】
- ブラウン・フォーマン社(ジャックダニエル)→ヒスパニック系の集まる床屋などの店舗に販促物を提供
- ディアジオ(スコッチ大手)→ラテンアメリカで人気のスコッチブランド・ブキャナンズの全米販促費用を3倍に増額。過去三年では、ヒスパニックのスコッチ消費量が16%増加。
- ペルノ・リカール社(シーバスリーガル)→中国市場の不振による全売上減から、アメリカのヒスパニック系への販促増。シーバスの全米売上の三分の一は、ヒスパニック系によるものだから。
【注目点】
- 人口増の先進国・アメリカは、安定している一方で成長も見込める魅力的な市場。
- 集客力の高いブランドは、売場を確保しやすい。
- 特定の顧客層をターゲットにすれば、ブランドロイヤルティを高めやすい。
1について、先進国でありながら人口増のアメリカは、安定である一方で成長も見込めるおいしい市場なのです。いまさらと思われるかもしれませんが、政治の影響を無視できない新興国よりは、魅力的と言えるでしょう。だからこそ、大手リカーメーカーはアメリカ市場に注目しているのです。
2について、記事の最後で紹介されていたのですが、ヒスパニック系スーパーでは、シーバスの横にプレミアム炭酸入りミネラルウォーターが販売されています。シーバスを購入した顧客には、その商品のクーポンが配布されているようです。その理由は、シーバスには集客力があるからであり、またシーバスを飲酒する際にソーダが利用されやすいから。集客力の高いブランドは、売場を確保できるだけではなく、他商品の販促にも活用されるのです。つまり、シーバスのような集客力の高いブランドは、小売店にとっては販売する価値のあるブランドなのです。集客力の高いブランドはさらに売場を広げ、低いブランドは売場を失うことになるので、優勝劣敗がさらに明確化することでしょう。
3について、顧客層を特定することは、「私だけに」を強調することであり、このメッセージは顧客層に届きやすくなります。例えば、ディアジオはゲイへの販促を強化した結果、ストレートよりもウォッカを3倍、テキーラを2.5倍飲むようになったようです。顧客数を増やすために、客層を広げるのではなく、狭める方が効果的なことがわかります。
日本食の輸出でも、つい高い経済成長が見込める東南アジア主体になりがちですが、政治が比較的安定して人口増が見込めるアメリカ市場は、灯台下暗しになりかねません。
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《今回のヒントのまとめ》
- 大手リカーブランドがアメリカの少数人種への販促を強化するのは、ロイヤルティの高いブランドがまだ少なく、今後飲酒人口の増加が見込め、飲酒量も比較的大きな成長市場だからである。
- しかし、次のような批判もある。アルコール度数が高く容量の大きなリカーが中心であることに対し、アルコール依存を高める恐れがある。また、若者に人気の有名人を販促に使うことに対し、未成年飲酒を助長している恐れがある。後者に対しては、未成年飲酒は歴史的に少ないとして、メーカーは批判する。
- アメリカ市場に期待するのは、成長率の高い新興国市場の変動率が高いということも影響する。新興国への依存が高まれば、グローバル収益も左右されやすくなる。アメリカ市場はそれを和らげてくれる。
- 人口増加が期待できる先進国・アメリカは、安定と成長が両立する魅力的な市場である。
- 集客力の高いブランドは売場を確保しやすいため、優勝劣敗は今後さらに明確化するのではないか。
- 特定の顧客層への販促は、顧客層を狭める恐れもあるが、逆に強いロイヤルティが期待できる。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
またまたふるさと納税ネタ・小正醸造ネタです。
ふるさと納税で頂いた3升の焼酎が、予想以上に美味しかった。
フルーティーな黄猿しかまだ飲んでいませんが、あまりの美味しさにもったいなく感じ、ちびちび飲むほどです。
ここまでフルーティーな芋焼酎を飲んだことはありません。
さらに、ワイン酵母で仕込んだ麦焼酎の白猿は、飲むのが楽しみで仕方がありません。
今年もいただこうかと思います。
日置市さん・小正醸造さん、ありがとうございます。
【ふるさと納税】赤猿・黄猿・白猿の1升瓶3本セット 小正醸造
いいもの作るなぁ、小正醸造さんは。
編集後記
マクドナルドのハンバーガーを久しぶりに食べたのですが、これが実に美味しかった。
以前食べた時は、小さいしさほど美味しくないし、がっかりした記憶があります。
もしかしたら、日本マクドナルドの収益復活は、ハンバーガーという基本的な商品の改良が要因なのかもしれませんね。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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