【1083号】ウーバーにとって、自動運転はチャンスかピンチか?
◎本日のニュース
1)見出し
How Self-Driving Cars Could End Uber
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2)要約
自動運転をビジネスチャンスと捉えるウーバーにとって、自動運転の普及は脅威になりかねない。というのみ、自動運転による交通サービスが始まると、自動車を所有する人が激減し、ビジネスモデルが成り立たなくなる恐れがあるからである。
自動運転車は、人が運転する自動車よりもずっとコストが低い。その結果、自動車を所有するよりも、自動運転交通サービスを使用する消費者が増加し、自動車を所有する人が激減しかねない。
この大きな変化を予測し、ウーバーも自動運転技術への投資を拡大している。しかし、交通サービスの基礎となる自動車を製造するメーカーの方が、サービスを提供するだけのウーバーよりも分がある。
3)キーとなる英文
If Uber Technologies Inc. ever collapses, historians may trace its undoing not to its troubles with labor relations, intellectual property, regulatory conflicts or sexual-harassment allegations, but to technological disruption.
4)キーとなる英文の和訳
ウーバーテクノロジー社がたとえ崩壊しても、歴史家はその失敗を、労務トラブルや知的財産・規制との衝突、セクハラ訴訟に帰せないだろう。
技術の大変革をその原因とするかもしれない。
5)気になる単語・表現
allegation | 名詞 | 主張 |
pledge to do | 他動詞句 | ~することを堅く約束する |
upend | 他動詞 | ~を打ち負かす |
oblivion | 名詞 | 忘却;無意識 |
subsidiary | 名詞 | 子会社 |
hassle | 名詞 | 苦心;わずらわしいこと |
contender | 名詞 | 競争相手 |
spar | 自動詞 | スパークリングする;友好的に議論する |
hinge on | 自動詞句 | ~次第である |
autonomous | 形容詞 | 自治権のある;独立した |
owing to | 接続詞 | ~のために |
repurpose | 他動詞 | ~を少し手を加えて再利用する |
fickle | 形容詞 | 気まぐれの |
congested | 形容詞 | 密集した |
to date | 副詞 | 現在までのところ |
loom | 自動詞 | ぼんやりと現れる |
(特に覚えておきたい単語)
【allegation】
a public statement that is made without giving proof, accusing somebody of doing something that is wrong or illegal
「(証拠のない)主張、申し立て」
(コメント)
「公式な」というニュアンスが入ることに注意。
6)ビジネスのヒント
シェアリングエコノミーで飛ぶ鳥を落とす勢いのウーバー。そして、自動運転技術は既存の産業構造をぶち壊す威力を持つだけに、ウーバーにとって優位に働くように思いがちです。しかし、全くの逆。ウーバーにとって、自動運転技術はチャンスどころか、存在意義を消滅させかねない大きなピンチなのです。
【ウーバーにとって自動運転技術がピンチな】
- 自動運転技術が普及することで、自動車を所有する人が激減し、ビジネスモデル自体が成立しなくなるから。
- 交通サービスとしての自動運転車にとって、ウーバーは強みを発揮できないから。
- サービスとしてのロイヤルティは低く、顧客のブランドスイッチが簡単に起こるから。
1について、自動運転による交通サービスが普及すれば、自動車の所有者は一気に減ると予想されています。というのも、人が運転するタクシーよりも自動運転交通サービスはコストが低く、自動車を所有・維持するよりも、安い自動運転交通サービスを利用する方が安上がりだからです。よっぽど自動車好きな人以外、自動車を所有する経済的恩恵はあまり感じなくなるのです。これは、人が所有する自動車をシェアすることを事業の根幹とするウーバーのビジネスモデルを崩壊しかねません。極端な話、ウーバーは廃業するか、大手自動車メーカーに買収される運命にあるのです
2について、交通サービスとしての自動運転車が普及すれば、自動運転車の所有者が大きな力を持つようになります。どんなブランドの自動車を所有するのか、どのような機能があるのかで、消費者はサービスを選択するからです。この点、自動車を製造できる大手自動車メーカーに分があります。一方のウーバーは、マッチングすることに優位性があるだけであり、技術力と資本力を必要とする自動運転車の所有については強みを発揮しません。
3について、ウーバーの巨大な会員数も一見強みのようです。しかし、きまぐれな消費者は、その時々で自動運転サービスをスイッチできます。アプリのしがらみのあり、ブランドスイッチが起きにくいスマホOSとは異なるのです。逆にウーバーは、スイッチしやすい顧客を維持するのに高いコストを負担しなければなりません。
ウーバーは、労務トラブル(請負運転手との契約など)や知的財産訴訟・規制当局との対立・セクハラ訴訟などの問題に直面しています。しかし、これらはウーバーの存立・ビジネスモデルを脅かすほどのものではありません。ウーバーにとって一番の問題は、自動運転技術によるビジネスモデルの崩壊なのです。
ウーバーもこの危機を乗り越えるべく、いやこのピンチをチャンスに変えるべく、動いています。配車サービス・自動車シェアリングサービスの競合他社のみならず、ソフトを開発するIT企業、自動車メーカーよりも先に、自動運転技術の開発を急いでいるのです。
大手自動車メーカーもこの技術変革で覇権を維持すべく、技術開発・他企業との提携を進めています。
【大手自動車メーカーの自動運転に対する動き】
- プジョー:自動車ソフトウェア会社のニュートノミー車と提携
- ヒュンダイ:サムスン電子と提携
- GM:カーシェアリングサービスの1つとして独自に開発
- フォード:配車サービスのチェリオを買収
今後、モノではなく交通サービスとして自動車が捉えられるようになると、信頼できる自動車というインフラが必要とされるようになります。自動運転車が普及すれば、人が運転しないため、より低コストで交通サービスが提供できるようになります。問題はなのは、いかに信頼できる自動運転車を大量に提供できるかということです。ウーバーは、自社が提供しないかぎり、このインフラに依存せざるを得ません。
一方の大手自動車メーカーは、製造ノウハウを持つだけではなく、ディーラー・金融サービス・車両メンテナンスサービスなど多数の企業と協業してきた経験があります。この経験は、大量の自動運転車をインフラとして提供する際に、大いに役立ちます。このインフラを担う立場に立てれば、ウーバーのようなマッチングサービスを提供するのは簡単。一方のウーバーは、固定費の小さなビジネスしか経験のないため、多額の資金を要するインフラを提供することは至難の技です。この視点からも、サービスとしての自動運転車ビジネスで優位に立てるのは、大手自動車メーカーなのです。
消費者にとっても、タクシーのような人が運転する交通サービスよりも、自動運転技術による交通サービスの方が、低価格ゆえ魅力的。社会全体が、消費者・ユーザーのニーズに沿うように変化していることを考えれば、自動運転車による交通サービスは今後必然とも言えるでしょう。
ここからは記事にはありませんが、しかし、もし電気自動車が今後普及すればどうでしょうか?スマホや液晶テレビ同様に、自動車製造のハードルは一気に下がります。技術力よりも、いかに低コストで組み立てるかが問われるようになります。こうなれば、自動車メーカーの優位性は一気に揺らぎます。一方で、巨大な顧客層を持つウーバーは、顧客の要望を取り入れることにより、より魅力的な自動運転車を開発することが出来ます。スマホの世界で言えば、アップルのような存在になれるのです。スマホOSで大きなシェアを持つアップルのように、ウーバーは自動電気自動車のソフトで大きなシェアを握るようになれば、交通サービスとしての自動車業界全体で覇権を握ることは充分可能になります。
【注目点】
- 交通サービスとしての自動車も、いずれ移動+αが求められるようなる
- 会員制サービスは、顧客層という強みが弱まれば、一気に崩壊する脆いサービスである
- 資金調達から開発・製造・販売・回収までのプロセスを持つメーカーは、バリューチェーン上強みを持ちやすい。
1について、自動運転が普及すれば、移動だけでは満足できなくなるはずです。その先に、楽しさや快適さなどプラスαの価値が求められるでしょう。
2について、巨大な会員層を持つウーバーですが、他社への依存度が高くなり、顧客のスイッチが容易になれば、その強みは弱まります。会員数だけのサービスは脆いものです。
3について、メーカーはそのビジネスプロセスにおいて複雑さを要求されます。だからこそ、参入障壁が高くなり、高い利益率を可能にします。自動運転サービスの場合も、インフラとしての大量の自動運転車を提供できる力があるからこそ、大手自動車メーカーは優位に立てるのです。
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《今回のヒントのまとめ》
- 自動運転技術は、ウーバーにとってビジネスモデルを揺るがしかねない大きなピンチである。
- というのも、サービスとしての自動運転車が普及すれば、自動車を自分で所有する人が激減し、ウーバーのビジネスが成立しなくなるからである。さらに、ブランドへのロイヤルティが低くなるため、スイッチが起こりやすく、ウーバーは顧客維持に高いコストを支払わなくてはならないだろう。
- 一方で、自動運転サービスは、大量の自動運転車をインフラとして提供することが前提となるため、資金調達から開発・製造・メンテナンスまでの機能を持つ大手自動車メーカーは優位に立てる。
- ただし、製造・組み立てが容易な電気自動車が普及すれば、大きな顧客層を持つウーバーの強みが活かされる。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
またまたふるさと納税ネタ・小正醸造ネタです。
ふるさと納税で頂いた3升の焼酎が、予想以上に美味しかった。
フルーティーな黄猿しかまだ飲んでいませんが、あまりの美味しさにもったいなく感じ、ちびちび飲むほどです。
ここまでフルーティーな芋焼酎を飲んだことはありません。
さらに、ワイン酵母で仕込んだ麦焼酎の白猿は、飲むのが楽しみで仕方がありません。
今年もいただこうかと思います。
日置市さん・小正醸造さん、ありがとうございます。
【ふるさと納税】赤猿・黄猿・白猿の1升瓶3本セット 小正醸造
いいもの作るなぁ、小正醸造さんは。
編集後記
自動車の買い換えを考えているのですが、なかなか気に入った自動車に出会えないので困っています。
いいなと思ったら、大きすぎて燃費が悪い。
逆に、小型・低燃費の自動車は面白みに欠けます。
どこで手に打つかですが、これがなかなか難しい。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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