【1095号】メイシーズが復活を賭ける独自のロイヤルティプログラムとは?
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1)見出し
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2)要約
経営再建中のメイシーズが最も重視するのは、収益ではない。それは、常連顧客の売上構成比である。そのために、ロイヤルティプログラムを常連びいきに変えようとしている。
これまでは、他企業も参加するプレンティを導入していた。誰でも公平にポイントを付与するこの仕組みでは、ブランドロイヤルティの向上には寄与しないと判断した。
常連客の購入をさらに増やすプログラムは、他社にもある。アマゾンのプライムや、スターバックスのポイントリワードポログラム、セフォラのビューティーインサイダープログラムなどである。これらに共通するには、常連客の購買意欲をくすぐる特徴を持っていることである。単に支払いに使えるポイントを付与しているだけではない。
3)キーとなる英文
The most important numbers Macy’s shared with investors recently weren’t sales, profits or store closings. They were that 9% of Macy’s customers account for 46% of its annual sales.
4)キーとなる英文の和訳
メイシーズが投資家に発表する一番重要な数字は、売上でも利益でも、閉鎖店舗数でもない。それは、メイシーズの顧客の9%が年間売上の46%を生み出していることである。
5)気になる単語・表現
tout | 他動詞 | ~をうるさく勧誘する |
tailor | 他動詞 | (ある目的のために)~を作る |
devastate | 他動詞 | ~を荒らす;~を打ちのめす |
tier | 名詞 | 層 |
achieve | 他動詞 | ~を成し遂げる |
(特に覚えておきたい単語)
【tout】
to try to persuade people that somebody/something is important or valueable by praising them/it
(コメント)
ビジネスでは、「客引き」という意味でよく使われる。
金融用語では、利害関係のある株式を推奨する「誇大宣伝」という意味がある。
「ダフ屋行為で売る」という意味もあり、あまりいい意味ではない。
6)ビジネスのヒント
店舗閉鎖による収益回復を目指すメイシーズ。しかし、戦後処理的な後ろ向きの対策ばかりではありません。ロイヤルティプログラムの刷新も行います。ただし、その内容は、常連客向けのプログラム開始です。
【メイシーズが始める常連客向けのロイヤルティプログラム】
- 売上構成比の多い常連客の特典を比較的厚くする。
- 安さ・値引き・平等なポイント付与など経済的特典を重視しない。
- また買物したい・もっと買いたいと思われる特典を提供する。
1について、キーセンテンスでも紹介したように、メイシーズが重視するのは常連客の売上構成比。
【メイシーズ顧客分類別の売上構成比】
- 上位9%→全売上の46%
- 2位13%→全売上の19%
- 3位38%→全売上の23%
- 下位40%→全売上の12%
1・2から、上位22%の顧客が全売上の55%を占めていることがわかります。つまり、本当に収益に貢献しているのは、上位9%・40%の得意客であり、その他の約8割の顧客をいくら優遇しても、収益貢献は低いのです。メイシーズは、全顧客を平等に扱う方針から、常連客優遇に切り替えたのです。
新プログラムの2について、常連客が喜ぶのは、経済的な特典ではありません。エクスクルーシブな特典こそ、彼らの心をくすぐるのです。そのために、無料カスタマイズ・送料無料・無料カスタマイズ・コンシェルジュサービス・イベント招待などを提供します。無料サービスは幾分経済的恩恵の強い特典ですが、支払いに使えるポイント付与とは、その性質が全く異なることがわかるかと思います。
3について、これが一番のポイントで、その時の買物に対して特典を付与するのですが、次の購入につながる工夫をしています。例えば、コンシェルジュサービスやイベント参加により、メイシーズをより身近に感じ、愛着が沸いてきます。その結果、次の買物の時も、メイシーズに行こうとなるのです。
この新ロイヤルティプログラムの背景には、メイシーズの新たな方針があります。それは、値引き販売による収益拡大という従来の方針を大きく転換し、よりオシャレな独自商品を提供して、独自性の高いデパートを目指すというものです。価格訴求から品質・独自性訴求への転換と表現できるでしょうか。
ちなみに、従来のロイヤルティプログラムでは、他企業も参加するプレンティを採用していました。日本のTポイントのようなポイントプログラムです。参加する企業で付与されたポイントは、他の参加企業で使えるという特徴があり、利便性の高さが魅力。ただし、その使いやすさばかりクローズアップされる一方で、参加企業・ブランドのロイヤルティは高まりません。メイシーズも2015年第二四半期に参加を表明したものの、それ以降の決算発表でプレンティに触れることはありませんでした。思ったほどの効果(客数増への寄与)がなかったのでしょう。
メイシーズが常連客びいきのロイヤルティプログラムを導入するのには、他社動向も関係します。
【メイシーズが参考にした他社ロイヤルティプログラム】
- アマゾンのプライム:対象は有料会員のみ。安さよりも送料無料・短期配送など利便性重視。
- スターバックスのリワードプログラム:ポイント付与するものの、スマホ支払い・事前注文など利便性重視。
- セフォラ(化粧品専門チェーン)のビューティーインサイダープログラム:サンプルに交換できるポイント付与。
1・2・3の共通点は、経済的な特典付与よりも、利便性・リピート期待を重視した特典であること。アマゾン・スタバは使いやすさを追求して、利用頻度を高めようとしています。セフォラはサンプル提供で、次回購入を促しています。単に購入時だけ享受できる特典ではなく、次の買物を促す仕掛けを持つプログラムなのです。
【注目点】
- 顧客・見込み客全員に平等に特典を提供しても、費用対効果は低い。
- 上連客は値下げなど経済的販促があまり必要のない優良顧客である。
1について、ロイヤルティプログラムをよりシンプルにしたければ、顧客・見込み客(プログラムに参加しそうな顧客)全員を平等に扱う特典にすればいいのです。しかし、それでは本来の目的は達成できません。ロイヤルティプログラムの目的は、ブランドロイヤルティを向上させることにより収益を拡大すること。値引きして客数を増やすことではありません。ネット通販も含め、競争激化が続く中では、闇雲の客数を増やそうとしても、コストが掛かるばかり。費用対効果を考えれば、上連客の利用頻度を高めた方がいいのです。
2は当たり前。その理由は、数は少なくても売上構成比が高いからです。逆に、数の多さばかりに目が行って、収益貢献の小さなロイヤルティの低い顧客の売上を増やそうとすれば、値引きなどコストが膨れるだけです。
“SALE”のポスターが年中掲載されていたメイシーズ。そのメイシーズが、品質(オシャレさ)・独自性重視に転換すれば、顧客を混乱させるかもしれません。この混乱が一時的なものになるか、それとも致命傷になるか。実店舗小売、特に百貨店ビジネスの成否を占う賭けでもあります。
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《今回のヒントのまとめ》
- メイシーズが上連客びいきのロイヤルティプログラムを導入するのは、数少ない上連客の売上構成比が高いからである。
- その特徴は、上連客びいきであること、経済的特典よりも利便性・独自性を重視していること、リピートを生み出す効果を期待していることである。
- 同様のプログラムは、アマゾンのプライム、スタバのリワードプログラム、セフォラのビューティーインサイダープログラムなどがある。いずれも、ポイントなどの経済的恩恵よりも、利便性・リピート性の向上を目指している。
- これまでは他企業も参加するポイントプログラムのプレンティに参加していた。しかし、効果が公表されていないことから、想定した効果が生まれなかった可能性が高い。
- 顧客・見込み客全員を平等に扱うプログラムの費用対効果は低い。一方で高いのは、数は少ないが、売上構成比の高い上連客を優遇するプログラムである。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
酒類規制の強化により、ビールの店頭価格が上昇しています。
値上げ後から買ったことがありませんが、第三でもケースで2500円前後はなかなか見当たらないみたい。
これでは、ますます焼酎シフトが自分の中で進みそうです。
そんな中で見つけたのが、ビールのふるさと納税。
こちらも規制が強化されましたが、まだまだ1万円で1ケースの記念品(?)は残っているようです。
編集後記
お昼にトマトジュースを飲みだして、体調が少しよくなったような気がします。
単なるプラシーボ効果かもしれませんが。
それにしても、アマゾンのホールフーズ買収にはびっくりしました。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2017/07/03 | 小売業界 ロイヤルティプログラム, 小売店, 百貨店, 顧客戦略
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