【1096号】小売不況の中でザラが好調をキープできる理由とは?
※火曜日は簡易版に変更しました。
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How Zara Is Defying a Broad Retail Slump
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消費者の買物先が実店舗からネット通販にシフトする中で、多くの企業が業績低迷に悩む小売業界。そのため、店舗閉鎖など暗いニュースばかりが目につきます。そんな中、好業績が一際目立つ企業があります。それは、ファストファッションブランド・ザラを傘下荷物インディテックス社。
【インディテックス社の直近四半期決算】
- 総売上:55億7000万ユーロ(前年同期比14%増)
- 純利益:6億4500万ユーロ(前年同期比18%増)
上場企業の決算を見る時の一つの目安として、純利益率がありますが、好業績企業は10%近くあります。ただし、その多くは製造業やIT企業。規模の経済が働きやすい業界ですね。小売企業は比較的薄利のため、最終利益段階で10%もの利益率を持つ企業はごくわずか。例えば、ユニクロを傘下に持つファーストリテイリング社の場合は、直近四半期こそ約10.2%あるものの、その一年前は大幅減益のため5.1%に沈みました。その中で、インディテックス社は、11.6%もの利益率を叩き出しています。ビジネスモデルのすごさがわかります。
では、小売企業全体が沈む中、ザラ率いるインディテックス社が好業績を維持できる理由をまとめてみました。
【インディテックス社が低迷する業界全体の中好業績を維持できる理由】
- 需要の変化に迅速に対応できる仕組みを持つから
- 実店舗をネット通販の拠点として活用しているから
- 送料無料・返品無料が可能な価格設定のため
- 実店舗と通販サイトの役割分担をしているから
1について、SAP(製造小売)の場合、生産は通常製造コストの低い新興国で行います。しかし、インディテックス社は、開発・デザイン部隊のいる本社に近いスペイン国内・近隣国で行います。物流センターもスペイン国内。そして、店舗も多くは欧州にあります。その結果、店頭での売れ行きの変化が、開発・製造・物流に即座に届くのです。この結果、売れ残り・販売ロスを最小化できます。そもそもアパレルの原価は低いもの。だから、製造コストの低さを優先するよりも、過剰在庫・品不足の回避こそ最重視すべきなのです。そうすれば、販売ロスや過剰値引きが不要になり、利益率を高められます。
2について、小売業界低迷の最大の要因は、ネット通販との競争激化。つまり、ネットに市場を奪われているのです。実店舗主体の小売企業がネット通販に力を入れようとしても、固定費の高い実店舗がお荷物になります。その結果、ネット専業に価格競争で負けるのです。一方インディテックス社は、実店舗をネット通販の拠点として活かし、ネット専業よりも利便性を高めています。具体的には、実店舗でネット購入品の引き渡しや返品受付を可能にしているのです。実店舗を持たないネット専業にはできないサービスです。ネット通販ユーザーが送料無料と返品無料を優先するだけに、この実店舗の活用はインディテックス社にとって大きなアドバンテージになっています。
3について、送料無料や返品無料は、言うのは簡単ですが、利益率の維持・向上と両立するのは大変難しいもの。インディテックス社がそれを可能にするのは、ファストファッション業界の中でも、比較的単価が高いため。単価が高い分、送料・返品のコストを吸収しやすくなります。では、なぜ単価が高くても売れるのか。それは、デザイン・品質を消費者ニーズに合致させられる開発力と、需要の変化に敏感に対応できる瞬発力でしょう。どこかのブランドのように、「いずれ安くなる」というイメージが少ないだけに、高くても売れるのです。
4について、実店舗とネット通販の役割を明確にし、分担していることも、実店舗・ネット双方の好調を維持できる秘訣でしょう。つまり、実店舗では大型店に特化し、小型店を減らしています。それは、品揃えを豊かにすることで、ネット通販のショールームとしての役割も期待できるからです。また、大型店ゆえにディスプレーなどでブランドの考え・思想を伝えらえるので、ブランドロイヤルティを高める効果も期待できます。楽しめる店内・売場を提供することで、実店舗での買物自体をコト消費として提供することも可能になります。これもすべて、店舗面積が大きい大型店だからできること。
一方で通販サイトでは利便性を追求します。これは、従来の小型店の役割。小型店は品揃えこそ大型店に負けるものの、近くに店舗があり、目当ての商品が見つけやすいこともあり、買物時間を短縮できる強みがありました。しかし、利便性ではネット通販に劣ります。そこで、ネットに負ける小型店をばっさり切り捨て、利便性重視の売場はネットで、品揃え・楽しさ重視の売場は大型の実店舗に、役割分担しているのです。
【注目点】
情報入手の迅速さは利益率の大きな影響を及ぼす。
インディテックス社の高利益率を生み出しているのは、需要の変化を迅速に全社で供給できる情報入手・処理能力の高さ。売れるデザインを開発できるのも、需要の変化を迅速に読み取り、今後のトレンドを早く予測できるから。無駄な値下げ販売をしなくていいのも、売れ行きの変化を即生産に反映できるから。だから、単価を比較的高く設定でき、それがネット通販でユーザーが望む送料無料・返品無料を可能にしています。すべての起点は、情報入手・伝達の能力の高さです。
ネット・リアル双方のビジネスのおいて、売れて儲かる秘訣は情報への感度の高さにあるのかもしれません。
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《今回のヒントのまとめ》
ザラ率いるインディテックス社の利益率の高さは、需要の変化に即座に対応できる情報感度の高さに起因する。
今後あらゆるビジネスで収益率を左右するのは、情報入手・処理の能力かもしれない。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
とある理由からWOWOWを契約したのですが、これが非常に便利。
普段テレビをほとんど見ない(見れない?)ので、どうかと思ったのですが、WOWOWならオンデマンドでパソコン・スマホからも視聴できます。
特にオリジナルドラマが面白い。
最近見たのは、三上博史主演の「社長室の冬」で、旧態依然の新聞社を買収する外資ネット企業のドラマです。
オンデマンドだけに一気に最終話まで見れるので、寝不足なったほど。
今見ているのは、「犯罪症候群」。
少年犯罪をテーマにした重いドラマですが、なかなか見応えあります。
編集後記
今年の梅雨は本当に雨が少ないですね。
自転車に乗ることが多いので、それは便利なのですが、なかなか暑くならないので心配です。
夏は暑い方がいい。
今年のアパレル品セール割引率は、少し高めが期待できそうです。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2017/07/05 | 小売業界 ファストファッション, 商品戦略, 販売戦略
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