【1103号】クレジットカード大手のビザが敵視する本当のライバルとは意外な存在?
◎本日のニュース
1)見出し
Visa Takes War on Cash to Restaurants
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2)要約
クレジットカード大手のビザ社は、中小商店を対象に、目新しいキャンペーンを実施する。それは、現金支払いを停止してくれたら、1万ドルを提供するというものである。
この資金は、カード払い専用機器のアップグレードと販促費として使われるものとしている。目的は、全米での決済シェアトップの現金の牙城を崩すことである。
現金支払いがなくなれば、現金の集計・両替などの業務が無くなり、さらに盗難の恐れも低くなるというメリットがある。一方で、カード会社・銀行への手数料支払いが発生するデメリットもある。
3)キーとなる英文
Visa Inc. has a new offer for small merchants: take thousands of dollars from the card giant to upgrade their payment technology. In return, the businesses must stop accepting cash.
4)キーとなる英文の和訳
ビザ社が中小商店に行う新しい提案は、支払い機能向上のために、数千ドルを提供するというものである。
その代わり、現金受取をやめなければならない。
5)気になる単語・表現
steer A away | 他動詞句 | Aをそらす |
apiece | 副詞 | 各自に |
conactless | 形容詞 | 非接触の |
get rid of | 他動詞句 | ~を取り除く |
chip | 他動詞 | ~を削る;~を削り取る |
check | 名詞 | 小切手 |
lever | 名詞 | てこ;強硬な手段 |
behalf | 名詞 | 利益 |
dent | 名詞 | へこみ |
(特に覚えておきたい単語)
【steer】
(原義) かじをとる
(和英)「(船・車など)を操縦する」「~を案内する、~導く」「(進路)を取る」
(コメント)
記事では、
steer Americans away from using old-fashioned paper money
という抽象的な使われ方をしている。
6)ビジネスのヒント
タイトルの答えは、記事のタイトルを見ればわかります。ビザ社の一番のライバルは現金。というの、現金支払いは依然アメリカでの決済シェアナンバーワンであり、世界的には増加しているからです。
【根強い現金支払い】
- 世界の現金・小切手の支払い金額=17兆ドル、前年比2%増
- アメリカでの現金決済シェア=32%
※1は2016年、2は2015年データ
1について、世界的には新興国の経済発展により、現金決済額は増加しています。中国などでは、スマホアプリでの決済などキャッシュレス化が進んでいると報じられていますが、まだまだ主流は現金なのです。
アメリカでも同じ。2について、ちなみに、
デビットカードの決済シェア 27%
クレジットカードの決済シェア 21%
なので、現金が依然強いことがわかります。ビザの全米でのクレジットカード・デビットカードシェアは59%であり、2番手のマスターカードはたったの25%。ダブルスコアなので、ビザにとってマスターカードは大したライバルではないです。本当のライバルは、決済シェア1位の現金なのです。
その現金からシェア奪還策として、ビザは奇策を講じています。
【ビザが講じる対現金シェア奪還策】
- 現金受取を中止する中小商店に対して、カード決済機器のアップグレード費用・販促費用として1万ドルを提供。
- キャンペーン適用店では、デビットカード・クレジットカード・スマホアプリのみ支払い可能。
- 50企業限定で、中小のレストラン・食品小売店が対象。ネット通販専業は対象外。
現金での支払いができないお店など、これまで見たこともありません。紙幣の使用できない自販機は、アメリカで多々ありますが、それでも現金は使用できます。カードが使えないお店は、日本ざらですが、現金が使えない商店は見たことも聞いたこともありません。それをやろうとしているのだから、ビザのライバル・現金への執念はすさまじい。
決済シェアトップの現金受取を停止してもらうかわりに、ビザは、支払い手段拡大のための機器アップグレード費用・告知費用として、1万ドルをキャンペーン応募店舗に支払います。1万ドルは、日本円で約110万円。1店舗110万円ですよ。ここまでするかという金額です。
ちなみに、機器アップグレードにより、クレジットカード・デビットカードのみならず、アップルペイなどスマホでの支払いも可能にします。現金をやめるかわりに、支払い手段を拡大して、売上マイナスリスクを最小化しようとしているのです。
もちろん、現金支払いがカード支払い・スマホ決済にシフトすれば、ビザは手数料収入の増加が見込まれます。さらに、カード・スマホ決済に消費者が慣れれば、このシフトがさらに進み、手数料収入の拡大が続きます。
現金受取をやめる商店にもメリットがあります。
【現金受取停止のメリット】
- 現金計算・両替準備などの作業が無くなる。
- キャッシュレジスター・金庫が不要になる。
- 現金以外の支払手段が増えることにより、売上増が期待できる。
1について、記事によると、1週間に23時間分の作業が削減できるようです。2は、固定資産取得が不要になるので、キャッシュフロー上プラスになります。3は、特にミレニアル世代に利くようです。現金支払いが出来なると、客離れが懸念されますが、ミレニアル世代がメイン顧客ならば、ノープロブレム。逆に、スマホ決済など先進的・利便性の高い支払い方法が増えることで、ミレニアル世代の集客に寄与します。
一方で、デメリットもあります。それは、手数料収入が増えるビザとは逆に、手数料支払いが増えるという点です。支払額の約2%を手数料として徴収されるため、多くの商店では現金払いを歓迎する傾向にあります。
【注目点】
- 現金払いが伸びている理由は、どこでも誰でも使えるというシンプルさにある。
- カード・スマホ決済により、カード会社は手数料以外に購入に関するデータを取得できる。
1について、シンプルさは、大きな競争力。現金が好まれるのも、このシンプルさゆえでしょう。一方、カード払いはポイント付与されますが、いちいちレシートをチェックして、入金する必要があり、現金払いよりも複雑です。
2について、記事には言及されていませんが、ビザには手数料収入以外に、ユーザーデータの取得という目的があるのではないでしょうか。誰がいつ何を買ったかという貴重なデータを入手できれば、自社のビジネスへの活用のみならず他社へのデータ販売も可能です。手数料よりも、ずっと大きな収益源になる可能性があります。
それにしても、現金支払いの停止までするビザの執念は凄まじい。
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《今回のヒントのまとめ》
- ビザ社の最大のライバルは、現金。世界的に現金支払いは増加し、アメリカでも決済シェア1位のため。
- 現金決済をカード・スマホ決済にシフトするため、ビザは現金支払いを停止してくれる中小商店に対し、1万ドルを提供するキャンペーンを実施する。1万ドルは、カード決済機器のアップグレード費用と告知費用に当てられる。
- 現金受取をやめるメリットは、現金計算や両替準備など作業を大幅に削減できることである。また、キャッシュレジスターや金庫が不要になり、キャッシュフローにプラスに働く。さらに、アップルペイなど支払い手段が増えることにより、売上増が期待できる。
- 一方で、カード会社・銀行などに支払う手数料負担が増えるというデメリットがある。
- ビザは、カード・スマホ決済が増えることにより、手数料収入以外に、ユーザーの購入データを取得できる。将来的に、後者は大きな収益源になりえる。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
酒類規制の強化により、ビールの店頭価格が上昇しています。
値上げ後から買ったことがありませんが、第三でもケースで2500円前後はなかなか見当たらないみたい。
これでは、ますます焼酎シフトが自分の中で進みそうです。
そんな中で見つけたのが、ビールのふるさと納税。
こちらも規制が強化されましたが、まだまだ1万円で1ケースの記念品(?)は残っているようです。
編集後記
ついに自動車を買い換えました。
ただし、日々多忙なため、いろいろな手続が遅れています。
また、ナビも悩み中。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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