【1107号】増収減益でも投資をやめない、アマゾンの投資哲学とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Amazon’s Expansion Costs Take a Toll as Profit Falls 77%
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2)要約
小売業で独占的地位確立のため、投資を惜しまないアマゾン・ドット・コム社。ただし、77%減益でも投資を続けるのは、尋常ではない。
投資対象は、小売事業の物流機能・クラウド事業のデータセンター・全般のエンジニアである。一方で、従来型小売企業は、多額の負債を抱えるため、リストラを優先せざるを得ない。この結果、従来型小売企業から市場を奪えることで、アマゾンは成長している。
また、ナイキなど有力ブランドは、顧客維持のため、アマゾンとの公式取引を余儀なくされる。これも、アマゾンにとっては大きなプラスとなり、従来型小売企業との差はさらに広がる。
3)キーとなる英文
Amazon.com Inc. said quarterly profit fell 77% even as sales jumped, a sign of the high cost of its increasing dominance of retail.
4)キーとなる英文の和訳
アマゾン・ドット・コム社曰く、増収でも四半期利益が77%も減少したのは、小売市場での独占的地位を強固にするためにコストが高くついたからである。
5)気になる単語・表現
take a toll | 熟語 | 大きな損失をもたらす |
eke out | 他動詞句 | ~を補う |
durable | 形容詞 | 長持ちする |
pivot | 自動詞 | 回転する |
deal with | 自動詞句 | ~を取引する |
consumable | 形容詞 | 消耗できる |
outsize | 形容詞 | 特大の |
flat out | 副詞 | はっきりと |
align | 他動詞 | ~と適合する |
behalf | 名詞 | 利益;味方 |
bulk up | 自動詞句 | 太る、図体が大きくなる |
(特に覚えておきたい単語)
おやすみ
6)ビジネスのヒント
WSJ記事タイトルに、”Profit Falls 77%”とあるので、てっきり「利益が昨対比77%まで落ちた」と思ったのですが、実際は「利益が77%減少した」ということが判明しました。増収なのに、利益が77%も減益した。アマゾンに何が起こった?と思ったのですが、それはアマゾンのお家芸。そう、将来の収益拡大のために大規模投資を行っただけのことです。
一方で、アマゾンの属する小売企業では、アマゾンのように大規模投資のできる企業はさほど多くありません。逆に、従来型小売企業は、消費(≒買物)のネットシフトが読みきれず、損切りできないまま大きな負債に頭を悩ましています。そう、投資できる状況ではないのです。この差は大きい。ここから、アマゾンの強みが見えてきます。
【小売業界におけるアマゾンの強み】
- 財務状況が良好なために、1年で最大の商戦である年末商戦に向けて、物流機能の増強ができる点。
- 安定収益のクラウド事業の利益を、より競争の激しい小売事業に投じられる点。
- 小売事業の粗利益が、ウォルマートの10%以上で、儲かる点。
1について、多額の負債に悩む従来型小売企業に対し、アマゾンの財務は良好。この結果、前者はリストラに時間が費やされるのに対し、アマゾンは顧客ニーズに合うように投資が出来ます。これは大きな強みです。
さらに、2について、より安定した収益を稼げるクラウド事業が、小売事業を支えることになります。
3について、さらに言えることは、アマゾンはより効率的な運営をするからこそ、粗利益率を高く保てるということです。逆に言えば、顧客満足に関係しない部分を削る一方で、顧客ニーズへの対応にコストを掛けているということでもあります。
一方でアマゾンにも弱点があります。それは、アマゾンが進出した小売市場・クラウド市場は、競争が激しいため、なかなか利益が伸びない点です。実際直近四半期決算では、売上を25%も増加させているものの、最終利益は77%も減少。利益が77%になったのではなくて、77%減って23%になったのです!!もちろん、アマゾンは常に大型投資をしているからですが、競争の激しい業界に属しているのも事実。アマゾン・ドット・コムでの小売事業での成長は、百貨店やディスカウント店など従来型小売企業からシェアを奪うことで成立しています。値下げをして集客しなくてはいけないし、顧客サービスを充実させてリピーターになってもらわなくてはいけません。キツい競争だけに、利益率は低いのです。
このような厳しい競争に果敢に挑むアマゾンですが、投資家に支持されて株価が上昇するのは、常に未来を見据えて投資を惜しまないからです。
【アマゾンの投資哲学】
- 顧客が求めていることに投資せよ。
- 規模の経済が働く分野に投資せよ。
- 高リターンが期待できる対象に投資せよ。
- 10年以上持続する事業に投資せよ。
注目点は2と4。2について、規模の大きな企業が有利な分野ならば、最初に規模の拡大を目指せば、後は自然に利益が付いてきます。ネット通販事業やクラウド事業が、その最たるものでしょう。アマゾンは規模の経済を目指すからこそ、常に投資をせざるを得ないとも言えます。
4について、持続的な事業を選ぶのは、長期的な成長を目指している証です。流行に乗るのではなく、長期的利益を求めるには、長期的な投資が必要になります。だからこそ、アマゾンは投資を続けるのでしょう。
このような投資哲学は、アマゾンにプラスのスパイラルをもたらします。規模が大きくなるから競合他社よりも有利に事業が進められ、その結果、ナイキなどの有力ブランドがアマゾンを無視できなくなり、アマゾンと直接取引を開始します。(以前メルマガで取り上げましたね)そうなれば、アマゾンは消費者にとってさらに魅力的な小売店になるわけです。また、ホールフーズ買収など実店舗にも進出。アマゾンはネットだけではなく、実店舗でも顧客にリーチできるわけです。
一方で、従来型小売企業は、多額の負債を負担しているので、リストラを余儀なくされています。プラスに進むアマゾンと、マイナス処理に明け暮れる従来型小売。差が広がるのも不思議ではありません。
【注目点】
- 競争が激しい市場では、投資できる余力のある企業が強い。
- 既存企業が弱い分野は、参入が容易。
1について、投資できる余力のあるのは、まさにアマゾン。赤字でも金融市場から資金を調達して、投資を継続する。それは、投資をしないと競合に負けてしまう競争の激しい市場にいるから。従来型小売企業のシェアを奪えたのは、従来型小売企業に投資できる余力がなかったからです。
2について、アマゾンが競争の激しい小売市場でシェアを拡大できるのは、百貨店やでぃスカウトなど既存企業の弱い市場であるからです。弱い企業のシェアを奪うことができたからこそ、企業として若いアマゾンは成長できたのです。逆に言えば、弱い企業の多い市場は、参入しやすいのです。
スーパー買収により、実店舗にまで進出するアマゾン。その最終目的は、大量の顧客データを獲得することで、より有利に小売ビジネスを進めることでしょう。小売のアマゾン化はさらに進むと思われます。
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《今回のヒントのまとめ》
- アマゾンの強みは、多額の資金調達が可能なことにより、継続的な投資ができる点。この結果、競争の激しい市場でも、シェアを拡大できる。
- 一方でアマゾンの弱みは、主戦場の競争が激しいため、利益率が低いだけではなく、継続的な投資を余儀なくされる点である。実際、直近四半期は増収ながら大幅減益に終わっている。
- アマゾンの投資哲学での注目点は、規模の経済が働く分野に投資している点と10年以上持続する分野に投資している点である。プラスのスパイラルが働きやすくなり、長期的成長が可能になる。
- 競争の激しい市場では、投資できる余力のある企業が有利になる。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
酒類規制の強化により、ビールの店頭価格が上昇しています。
値上げ後から買ったことがありませんが、第三でもケースで2500円前後はなかなか見当たらないみたい。
これでは、ますます焼酎シフトが自分の中で進みそうです。
そんな中で見つけたのが、ビールのふるさと納税。
こちらも規制が強化されましたが、まだまだ1万円で1ケースの記念品(?)は残っているようです。
編集後記
最近、焼酎の消費が激しく、またふるさと納税を頼まなくてはならなくなりました。
一方で、ビールを飲む機会が減っています。
その理由は、焼酎の方がゆっくり、気分に合わせて濃さを調整できるから。
もちろん、小正醸造さんの作る焼酎が美味しいというのも、大きな理由。
さてもう一杯飲むとします。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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