【1117号】ベストバイ・アマゾンがお宅訪問サービスに力を入れる理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Ding-Dong! Best Buy and Amazon Bring Back the Traveling Salesman
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2)要約
ベストバイ社とアマゾン・ドット・コム社は、お宅訪問という古くて新しい販売手法の実験を行っている。この背景には、実店舗の集客難とスマート家電の競争激化がある。
ベストバイは、お宅訪問を通じて、顧客との接触機会を増やし、ロイヤルティ向上に成功している。この結果、顧客の潜在需要を発見し、客単価は店舗販売よりも高くなっている。一方のアマゾンは、スマートスピーカーなどの提案を通じて、商品販売のみならず有料の設置サービスの販売を行う。
3)キーとなる英文
Best Buy is hiring hundreds of salespeople to sit down with consumers inside their homes and recommend electronics to buy, part of a free service it has been testing in several cities and plans to roll out across the U.S. this fall.
4)キーとなる英文の和訳
ベストバイは数百もの販売員を雇用している。
その目的は、消費者宅の中で消費者と座りながら、購入すべき家電を薦めるためである。
これは、一部の都市で実験を行い、今秋全米に広げる予定の無料サービスの1つである。
5)気になる単語・表現
dong | 名詞 | (戸口のベル)のキンコン、ピンポン |
latent | 形容詞 | 隠れた;潜在の |
address | 他動詞 | ~に焦点をあてる;~に話しかける |
free up | 他動詞句 | ~を使えるようにする |
agnostic | 形容詞 | 独断的でない |
leg up | 名詞句 | 状況改善の手伝い;(馬・壁などを登るのに)相手の足を手に持って手伝うこと |
(特に覚えておきたい単語)
【latent】
(英英)existing, but not yet very noticeable, active or well developed
(コメント)医薬用語の「潜伏性の、潜伏した」という意味もある。
6)ビジネスのヒント
ベストバイと言えば、日本でいうヤマダ電機のような家電量販店。家電市場でのシェアはトップで、アメリカ版ヤマダ電機(ヤマダ電機のシェアは知りませんが)と言っても過言ではありません。ちなみに、二位はウォルマートストアーズ社。
実店舗型小売企業とあって、集客に悩んでいると思いきや、いやいや業績は堅調です。売上金額は、穏やかながら成長しているようです。では、実店舗型小売企業のベストバイが、小売業界全体が苦戦している中、なぜ成長しているのか?それは、お宅訪問スタイルの販売手法を採用しているからです。
【実店舗主体のベストバイがお宅訪問販売スタイルで成長している理由】
- 訪問した顧客の方が、来店客よりも客単価が高いから。
- 訪問セールスが固定給・時給のため、消費者の嫌う売込みをあまりしないから。
- 無料の訪問サービスのコスト捻出のために、既存の有料ITサポート事業を外注したから。
- 対面サービスにより、利益率の高い延長保証の売上が伸びているから。
- 複数ブランドを取り扱っており、顧客ニーズに応じやすいから。
1は、顧客のリラックスできる自宅という空間で提案することにより、潜在需要を見出しやすいからに他なりません。さらに、訪問セールスと仲良くなれば、友達感覚で相談できる間柄になれることもあるでしょう。その結果、店舗で選ぶよりもより多くの商品を購入することになります。店舗価格と訪問価格はほとんど変わらないので、客単価が向上します。
2について、お宅訪問セールスと言えば、報酬が歩合というイメージが強いですが、ベストバイでは異なります。固定給または時給で支払われます。その結果、無理な売込みがほとんど無くなり、消費者との良好な関係が築きやすくなります。
3について、訪問サービスは原則無料。このコストをどこかで補わなくてはなりません。ベストバイは、有料のITサポート事業を外注することで、このコストを捻出。
4について、お宅訪問サービスは、より密度の高い対面サービス。このため、利益率の高い延長保証の購入率も高いようです。これは、ベストバイの収益にプラスに働きます。
5について、ベストバイがお宅訪問で提案するのは、ベストバイが扱う様々なブランド。一方、後述のアマゾンはアマゾンブランドしか提案しません。前者の方が、より顧客ニーズに沿った商品提案ができるのは間違いありません。
信じられませんが、ネット通販最大手のアマゾンも、お宅訪問スタイルの販売手法を採用しています。
【アマゾンのお宅訪問販売手法】
- スマートホーム製品の無料提案のために、販売員が訪問。
- 決して購入に至らなくても、ウィッシュリストに入り将来の購入に繋がる。
- 同様のスマートスピーカーを販売するグーグルとアップルと差別化。
ベストバイとの大きな違いは、1でスマートホーム製品に限定している点。アマゾンも様々な家電を販売していますが、このサービスはスマートホーム製品の普及・販売拡大が目的です。無料のコンサルテーションを行い、最終的には購入・有料設置サービスで売上を稼ぐというビジネスモデルです。
2のように、購入に至らなくても気に入ってもらえれば、アマゾンのウィッシュリストに追加され、将来の購入につながる効果が期待できます。3について、スマートスピーカーで競合するグーグルやアップルは、このようなお宅訪問サービスを行っておらず、アマゾンは差別化のために実施しているようです。
アマゾンの目的は、まだ普及していないスマート製品の販売拡大。一方のベストバイの目的は、実店舗への集客不足・売上不足を補うためです。実店舗に来てくれないならば、こちらから行くというやり方ですね。
この”攻める”販売方法で、小売業界全体が沈む中で、ベストバイは堅調な成長を続けています。この要因は、顧客との距離の近さでしょう。記事には書かれてありませんが、恐らく顧客には担当が付いており、顧客に提案・顧客から相談があれば、その担当が責任を持って対応するのでしょう。その結果、顧客と担当セールスとの関係がより密になり、携帯電話で気軽に相談する仲にまで発展するそうです。そこまで行けば、「家電のことならベストバイの◯◯さんに任せよう」ということになり、長期的に売上は伸びることになります。
【注目点】
- 実店舗主体の小売店こそ、顧客との近さを強みとするべし。
- 顧客がリラックスできる空間こそ、最高の売場。
1はベストバイのやり方そのもの。ネット通販にはない実店舗小売の強みは、接客。その強みを活かせば、顧客との距離は短くなり、ロイヤルティを高めることが可能になります。
2について、消費者にとって一番リラックスできるのは、自宅のはず。リラックスできる空間だからこそ、自宅で商品提案をされれば、本音を話し、購入にまで至るのです。ベストバイのお宅訪問販売の客単価が高いのは、この理屈です。
思えば、百貨店やSCなど実店舗小売では、一休みできるベンチやくつろげるカフェなどが普通になってきました。これは、できるだけリラックスできる空間を作ることで、財布の紐が緩みやすい環境を作ろうとしているからでしょう。
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《今回のヒントのまとめ》
- ベストバイのお宅訪問販売が成功しているのは、潜在ニーズを発掘しやすいので、客単価が高まりやすいからである。
- さらに、給与体系や顧客との密な対面サービス・複数ブランドの提案など、顧客ニーズにより沿った提案・販売ができることも、成功要因と言えるだろう。
- 一方、同様の訪問サービスを行うアマゾンは、スマート製品に限定し、グーグルやアップルなどの競合との差別化のために実施する。
- 実店舗主体であるベストバイは、接客という強みを活かし、顧客との距離を縮めることで、堅実な成長を実現している。
- 自宅など顧客がリラックスできる空間こそ、最高の売場と言えるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
酒類規制の強化により、ビールの店頭価格が上昇しています。
値上げ後から買ったことがありませんが、第三でもケースで2500円前後はなかなか見当たらないみたい。
これでは、ますます焼酎シフトが自分の中で進みそうです。
そんな中で見つけたのが、ビールのふるさと納税。
こちらも規制が強化されましたが、まだまだ1万円で1ケースの記念品(?)は残っているようです。
編集後記
最近3日間連続で、睡眠時間4時間切れ。
これは体に危険信号が出そうです。
少し休んだ方がいいでしょう。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
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高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/
今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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