【1121号】打倒エアビー、ホテル・パブリックが採った戦略とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Is This Hotel an Airbnb Killer?
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2)要約
今年夏にマンハッタンのローヤーイーストサイドに出来たホテル・パブリックは、通常のホテルとは少し違う。バーやレストランなどが充実する一方で、フロントデスク・コンシェルジュ・電話サービスなどを廃止。その目的は、ホテル業界を侵食するエアビーアンドビーに対抗するためである。
メイン顧客である若者が重視するバーなど社交場は、徹底的に充実させる。一方で、若者が不要とするフロントサービスなどを廃止し、低料金を実現。ITを活用することで、顧客満足を維持する。
3)キーとなる英文
Stroll into Public, a full-service, 367-room hotel that opened this summer on Manhattan’s Lower East Side, and it quickly becomes apparent that certain features are nowhere to be found.
4)キーとなる英文の和訳
フルサービス、367の客室を持つ今年夏にマンハッタンのローヤーイーストサイドにオープンしたホテル・パブリックにふらりと入れば、他では見られない特徴にすぐ気づくことになる。
5)気になる単語・表現
stroll | 自動詞 | ぶらつく |
apparent | 形容詞 | 明白な |
roving | 形容詞 | 移動する |
jack-of-all-trades | 名詞句 | 何でも屋 |
impresario | 名詞 | 興行主 |
assess | 他動詞 | ~を評価する |
sprawling | 形容詞 | 無秩序な |
reap | 他動詞 | ~を(結果として)受ける |
in the way of | 副詞句 | ~の点で |
replicate | 他動詞 | ~をやり直す |
dedicate | 他動詞 | ~を割く |
kink | 名詞 | 欠陥 |
(特に覚えておきたい単語)
【apparent】
(英英)easy to see or understand
(同義語)
「明らかな」 clear, obvious, evident, apparent, plain, manifest, visible
「明白な」 clear, obvious, evident, apparent, explicit, plain, positive, tangible, undisputed, unmistakable
6)ビジネスのヒント
ホテル・パブリックとは、ナイトライフ・ホテル業界に精通した実業家イアン・シュレンジャーがオープンしたブティックホテル。記事には、「ブティック」という文字はないものの、記事掲載の画像から推測すると、小型ではないものの(367室)、派手でおしゃれな若者風のホテルなので、「ブティック」と表現しても問題ないでしょう。このパブリックが採った戦略は、ずばりブルーオーシャン戦略です。
ブルーオーシャン戦略とは、
1)顧客が好む要素を増やす
2)顧客が不要と考える要素を減らす
3)それにより低コスト・低価格を実現
という3つの要素から成り立ちます。パブリックの場合をまとめると、次のようになります。
【ホテル・パブリックのブルーオーシャン戦略】
(増やす要素)
1)バー
2)レストラン
3)その他社交サービス
4)オシャレな雰囲気
(減らす要素)
5)フロントサービス・コンシェルジュサービス・荷物運搬補助サービス
6)フロント電話サービス
7)ルームサービス
減らす要素はすべて「減らす」のではなく、廃止しています。人手の掛かるサービスを廃止することで人件費を削減し、低料金を実現しているのです。言ってみれば、ブルーオーシャン戦略のお手本のような商品(宿泊サービス)と言えるでしょう。
さらに、パブリックのビジネスモデルは、従来型ホテルとは全く異なります。
【パブリックと従来型ホテルのビジネスモデル比較】
(パブリック)
飲食サービスが中心
(従来型ホテル)
宿泊サービスが中心
パブリックの場合、飲食サービスが全売上の35~45%占めます。ちなみに、従来型ホテルの場合は約25%。さらに、パブリックの飲食サービスは利益率も高く、バーは45%、レストランは25%も叩き出します。同価格帯の従来型ホテルと比較すると、約20%高いようです。
このようにパブリックの場合、飲食サービスで儲かることも、宿泊料金を引き下げられる要因になっています。ちなみに、パブリックの料金は一泊150ドルから。ホテル利用者以外も飲食サービスを利用するため、飲食サービスの利用者を次回以降の宿泊に導くことも可能です。このプラスの循環により、客数を構造的に増加させることができます。
一方の従来型ホテルの場合、あくまで宿泊サービス中心。飲食サービスはあくまで付帯サービスに過ぎず、そもそも飲食サービスを拡充させるという発想がありません。コートヤード・バイ・マリオットなど、業界で利益率の高い部類のブランドは、逆に飲食サービスを削減することで、低コスト・低料金を可能にしています。パブリックとは逆のやり方なのです。
シュレンジャー氏がこのような逆の発想のホテルを作ったのは、エアビーの従来型のホテル市場を侵食しているからです。ある調査によると、今年終わりまでの予想で、レジャー旅行者の約25%・ビジネス旅行者の約23%が、エアビーを利用するとされています。2015年には各12%だっただけに、エアビーは、一般的なホテルの代替サービスとして利用されていることがわかります。しかし、そのエアビーの侵食に対し、ホテル業界は適切な対応をしていません。記事には書かれてありませんが、恐らく「エアビー=これまでホテルに止まらなかった層の利用により、宿泊需要全体を拡大している」としか捉えていないのでしょう。実は、顧客を奪っているのを知らずして。シュレンジャー氏は、ここにビジネスチャンスを嗅ぎ取ったのでしょう。消費者(特に若者)が従来型ホテルではなくエアビーを利用するのは、欲しい要素(社交サービスなど)が足りない一方で、不要なサービス(フロントサービスなど)が満載にもかかわらず、不本意に高い料金が請求されることに我慢ならないからです。ならば、欲しい要素を増やし、不要な要素を排除することで、低料金を実現すれば、エアビーユーザーを獲得できるのです。
ただし、課題もあります。
【ホテル・パブリックの課題】
人間が要求するサービスレベルまでITが対応できず、顧客満足度を下げる恐れがある。
客室内で相談事が発生すれば、外部に直接つながる電話かフェイスブックメッセンジャーを使うことになります。後者の場合、チャットボットが自動回答します。複雑な質問がなされると、「ライブアシスタント」という人による回答に切り替わるのですが、その引き継ぎがまだ充分にされていないようです。そのため、回答を得られぬままに、チェックアウトする恐れがあります。これでは、顧客満足度は下がり、顧客離れさえ行き起こしかねません。
【注目点】
1)シェアリングサービスは、需要拡大だけではなく既存ビジネスの脅威になりえる。
2)顧客が不要と考える要素を持つ商品にこそ、ビジネスチャンスが潜んでいる。
1について、シェアリングサービスは需要拡大に寄与する一方で、既存ビジネスを脅かす存在になりかねません。これを回避するためには、顧客が本当に重視する価値を見極める必要があります。
2について、顧客が不満に思う商品は、改良することで売上を回復・拡大させることができます。この「不満」こそ、ビジネスチャンスを生み出すのです。
社交サービスを重視するニーズがある限り、リアルの店舗・サービスには生きる道が残っているようです。
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《今回のヒントのまとめ》
- ホテル・パブリックのブルーオーシャン戦略とは、顧客が重視するバー・レストランなどの社交サービスを拡充する一方で、不要と考える接客サービスを廃止することで、低コスト・低料金を実現することである。
- パブリックのビジネスモデルは、中心の飲食サービスで収益の大部分を稼ぐことにより、宿泊料金を低価格にすることである。一方、宿泊サービス中心の従来型ホテルは、飲食サービスを削減することで、低コスト・低料金を実現させている。
- パブリックが生まれたのは、ホテル業界がエアビーの脅威を適切に評価しなかったからである。ここにビジネスチャンスを嗅ぎ取り、エアビーに対抗している。
- ただし、低コスト化のために導入したITが、顧客の要望するサービスレベルに達せず、不満足を生み出す恐れがあるという課題がある。
- シェアリングサービスは、需要拡大に寄与するものの、既存ビジネスの脅威になりかねない。
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ミレニアルズ November 2017 (エンターブレインムック) |
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
泉佐野市のふるさと納税は、本当に挑戦的です。
今度は麦とホップ2ケースを、1万円コースに追加。
まだ自宅のビール在庫はあるものの、ついついポチッとしてしまいそうです。
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編集後記
今日は新幹線の中から。
久しぶりの出張で嬉しい半面、想定以上のタイトなスケジュールのため、疲れがさらにどっと来そうです。
週末が不安。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2017/10/02 | エンターテイメント業界 ブルーオーシャン戦略, 価格設定, 商品戦略, 旅行
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