【1147号】中国ファストフード大手のヤム・チャイナが復活した理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Fast Food Gets a Reboot in China: Tuna-Pesto Panini, Paid for by Facial Recognition
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2)要約
中国でKFCやピザハットなどファストフードレストランを展開するヤム・チャイナが、V字回復を遂げている。以前は、食の安全問題や競争激化により苦戦していた。
その原動力は、ヘルシーメニューとIT活用である。パニーニやサラダなどヘルシーなメニューを提供するとともに、ビデオスクリーンによる注文やスマホ顔認証決済など、先進的なITを導入している。
この復活劇の背景には、アメリカの親会社ヤム・ブランズ社が中国現地法人を、中国企業に売却したことがある。
3)キーとなる英文
The KFC concept store, known as KPRO, is a testing ground for owner Yum China Holdings as it tries to capture a new audience and drive growth in the wake of its spinoff from U.S. parent Yum Brands Inc. a year ago last week.
4)キーとなる英文の和訳
KPROというKFCのコンセプト店は、親会社であるヤム・チャイナ・ホールディングスのテスト店舗である。
その目的は、1年前の先週にアメリカの親会社ヤム・ブランズ社による売却で始まった、新たな顧客獲得と成長加速の試みである。
5)気になる単語・表現
meteoric | 形容詞 | 急速な、めざましい |
scare | 名詞 | 恐怖;不安 |
vie for | 自動詞句 | ~を得ようとする |
coveted | 形容詞 | 入手困難な |
cede | 他動詞 | ~を割譲する |
ditch | 他動詞 | ~を見捨てる |
authenticity | 名詞 | 確実性 |
initiative | 名詞 | 新たな試み;(新規の)構想 |
(特に覚えておきたい単語)
【authentic】
- known to be real and genuine and not a copy
- true and accurate
- made to be exactly the same as the original
※コメント
「本物」「正確」という意味。
6)ビジネスのヒント
中国のKFCと言えば、不衛生な鶏肉を使用したことが明るみになり、客離れが起きたという印象が強い。さらに、欧米のチェーンのみならず、現地のファストフードチェーンも増えることにより、競争激化により苦戦していました。そう、今では、このような状況は過去形なのです。
では、なぜ中国KFCの親会社ヤム・チャイナ・ホールディングスは、復活したのか?
【ヤム・チャイナが復活した理由】
親会社がアメリカのヤム・ブランズ社から現地法人・エクイティファンドに変わったから。
親会社が変わったことが一番大きな理由です。?と思う人も多いでしょう。親会社が変わっただけで、食の安全問題・競争環境が変わるのか?それはノー。外部環境である競争環境は、自社だけでは変えられません。さらに、食の安全安心への信頼も、そう簡単に回復できるものではありません。親会社がアメリカ企業から現地企業に変わることにより、より現地ニーズに対応できるようになったことが、親会社変更の一番大きなメリットなのです。
具体的には、次のような事柄に力を入れています。
【ヤム・チャイナが力を入れていること】
- 店舗雰囲気:モダン・先進的・自然
- メニュー:ヘルシーメニュー
- IT化:顧客のデータ取得
1について、店舗雰囲気が、ファストフードチェーンのようではありません。注文用の大きなビデオスクリーンや木目調の机、そして緑の飾り付け。WSJに画像が掲載されていますが、どこかのイケてるカフェのようです。
2について、具体的には、ツナペスト・パニーニやサラダを提供しています。ファストフードの「体に悪そう」というイメージは払拭されています。
3について、スマホ注文や顔認証決済など、ITの導入を積極的に進めています。この結果、ネット通販のように顧客のデータを隈なく集めることができ、物流コストの削減や販促効果の向上が期待できるようになります。
1・2・3とも、現地ニーズに沿ったもの。ファストフードの特徴である速さよりも、居心地の良さ・ヘルシーさ・ITの利便性を重視することは、アメリカ企業が親会社では到底できるものではないようです。
IT化について、さらに詳しく見ていくと、その先進的な店舗が容易に想像できます。
【IT化の進むヤム・チャイナの店舗】
- 顔認証による支払い
- ビデオスクリーンやスマホを活用したセルフサービス窓口・店舗
- ロボットによる受注
- AIによるメニュー提案
- 世界最大規模のロイヤルティプログラム
1について、これは中国の電子決済サービス・アリペイと提携したもの。財布はもちろん、スマホすら不要になります。顧客はその利便性・先進性を享受できる一方で、ヤム・チャイナは顧客のデータを蓄積できるのです。
2について、大きなビデオスクリーンやスマホを活用したセルフサービスは、人件費削減にも寄与します。
3・4は、ロボット・AIを活用した自動化サービス。こちらも、人件費削減につながります。
5について、KFCやピザハットなど複数のファストフードチェーンを傘下に持つヤム・チャイナは、データ入手のためにロイヤルティプログラムに力を入れています。その会員数は、1億2700万人。世界最大級のプログラムであり、レストランチェーンのロイヤルティプログラム先駆者であるパネラ・ブレッド社(会員2500万人)を凌駕しています。プログラムから得られるデータは、販促に活用されます。
ここでヤム・チャイナについて、まとめてみます。
【ヤム・チャイナとは】
- KFCとピザハットなど7700店舗以上を展開する、中国最大のファストフードチェーン
- ヘルシーメニューとITが特徴のKPROというコンセプト店に力を注ぐ
- アメリカ親会社による売却で、より中国国内のニーズに合った展開が可能に
2について、ヘルシーメニューとITに力を注ぐのは、ヤム・チャイナ傘下のコンセプト店KPRO。(KFCのニューコンセプト)まだ本格展開を進めていませんが、現地ニーズに沿っていることから、今後KPRO主体の出店になる可能性は高いでしょう。記事には書かれてませんが、ヘルシーメニュー投入やIT化などの試みは、このコンセプト店が主体。ということは、従来型KFCとピザハットは従来型のファストフード店であり、少し苦戦しているかもしれません。実際、ピザハットは既存店の伸びがほとんどないのが実状のようです。
3について、アメリカの親会社ヤム・ブランド主導から、中国資本主体の現地法人ヤム・チャイナの運営に代わることにより、顧客ニーズにより応えられるようになりました。当たり前ですが、現場に近い方がより真実が見えやすくなるものです。ファストフードに求めるものが、アメリカと中国では大きく異なるのも、現地化による大きな成功要因と言えるでしょう。
【アメリカ・中国でのファストフードに期待するもの】
1)アメリカ:サービスのスピードと正確性
2)中国:食の安全・安心とメニューのヘルシーさ
一言で言えば、アメリカではファストフードの仕組み(オペレーション)が問われるのに対し、中国ではメニューの中身が問われます。アメリカでは、有名チェーンのメニューに対し、ある程度信頼があるからこそ、仕組み(オペレーション)が問われるのかもしれません。逆に、中国では、まだ提供する商品が有名チェーンだからといって信頼できないからこそ、メニューの中身が問われるのではないでしょうか。今後、中国の品質全般が向上すれば、アメリカのように仕組みが問われるのかもしれません。
このように国によってニーズが大きく異なる場合は、現地法人にある程度任せた方がうまくいくかもしれません。アメリカのヤム・ブランズでは、KPROのようなヘルシーメニュー・ITが特徴のカフェは中国で生まれなかったでしょう。
【注目点】
- デジタル化は、インフラが整っていない新興国の方が進みやすい。
- IT化の狙いは、データ取得。データ取得により、売上増・コスト減が期待できる。
1は、通信でよく起こっています。固定電話回線がまだ普及していない国では、固定電話を通り超して、一気に携帯電話が普及するようです。中国のKPROでスマホ注文・顔認証決済が行われているのも、中国のインフラが整っていないからかもしれません。
2について、外食産業のIT化は、業務の効率化とともに、顧客のデータ集めがその目的とされています。店舗のネット通販化とも言えるでしょうか。データ取得の結果、より成功確率の高い販促が打てるようになり、売上向上が期待できます。一方で、将来予測の精度が高まることで、人手・ロスが減り、コスト削減が期待できます。収益向上のつながります。
IT化とは違いますが、日本でも現金が利用できないレストランチェーン(ロイヤルホスト)が生まれるなど、驚きの店舗が生まれています。ビデオスクリーンやスマホで注文して、まるで”顔パス”のような顔認証により決済する。このようにデジタルによるセルフサービス化した仕組みは、人手不足に悩む日本に導入されても不思議ではありません。ハードルになるのは、スマホ利用率でしょうか。
KPROのその他記事
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《今回のヒントのまとめ》
- 中国のKFCが復活したのは、現地法人主導により現地ニーズに合う店作り・メニュー作りがなされたからである。
- 具体的には、顧客の望む雰囲気・メニュー・ITを提供している。
- 現地主導により成功するのは、国により消費者ニーズが異なるからである。アメリカでは、サービスのスピードや確実性が重視されるの対し、中国では食の安全・ヘルシーメニューが重視される。
- 外食でIT化を進めると、収益増が期待できる。
- デジタル化はインフラ不足の新興国の方が進みやすい。また、IT化の狙いは、収益向上に寄与するデータの取得である。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
アマゾンのサイバーマンデーセールで、3000円強の値下げなので、思わずポチリ。
最近、読書が少なくなり、危機感を抱いていただけに、これからは思う存分読書できそうです。
ただ、図書館で借りることはできず、お金はかかりますが。
実際に使ってから、レビューしたいと思います。
編集後記
クリスマスカードまだ書いていません。(12月20日現在)
アメリカですので、クリスマス当日にはもう間に合わない。
ごめんなさい、ジョン。
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