【961号】ファストフードが苦戦するアメリカでバーガーキングが復活した理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Burger King Returns to Its Roots
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2)要約
ファストフード大手のバーガーキングは、低価格のハンバーガーやフライドポテト・ホットドッグなどを提供するファストフードチェーンへの回帰を目指している。従来は、客層を広げるために、サラダやスナックラップなどヘルシーな商品の販売に力を注いできた。
方針を転換したのは、直火焼きハンバーガーをクイックサービスで提供することに、顧客の本当のニーズがあることが判明したからである。そのため、店内で改めて「直火焼き」をアピールし、提供時間を縮小するために調理オペレーションの改良を進めている。
この方針転換により、業績は向上している。北米の既存店売上高は、昨年5.7%増。2015年までの5年間で調整後純利益68%も上昇した。今後、北米市場で出店を加速する予定である。
3)キーとなる英文
Following unsuccessful efforts to appeal to a broader, more health-conscious customer base with salads, snack wraps, smoothies and low-calorie french fries, the unit of Restaurant Brands International Inc. has returned to its roots as a purveyor of inexpensive burgers, fries and, now, hot dogs.
4)キーとなる英文の和訳
サラダやスナックラップ・スムージー・低カロリーフライドポテトの販売により、健康志向の高い顧客にまで客層を広げる努力に失敗した後、レストラン・ブランズ・インターナショナル社傘下のバーガーキングは、低価格ハンバーガーとフライドポテト、今ではホットドッグの販売者として元々の姿に回帰してきた。
5)気になる単語・表現
purveyor | 名詞 | (食料品などの)調達人、御用達業者 |
vex | 他動詞 | ~を苛立たせる |
resonate with | 自動詞句 | ~と共鳴する |
tout | 他動詞 | ~をうるさく勧誘する |
hew to | 自動詞句 | ~に従う |
flame | 名詞 | 炎 |
(今回ピックアップ英単語)
vex
(英英)
annoy or worry somebody
(派生語)
名詞 vexation 「苛立たせること、悩ますこと」「苛立ちの種、腹の立つこと」
形容詞 vexatious 「苛立たしい;面倒な、厄介な」「(訴訟が)乱用の」
(類義語vexatious)
「腹立たしい」 exasperating, irritating, sore, annoying, offensive
(コメント)
最近よく目にする単語。
企業や業界が苦戦する時に使われることが多い。
6)ビジネスのヒント
ヘルシーなファストカジュアルがトレンドのアメリカで、ファストフード大手のバーガーキングが復活しているようです。まずは、業績から。
【回復したバーガーキングの業績】
- 調整後純利益(金利・税・減価償却前):68%増(2010年→2015年)
- 売上は半減←直営店をほぼすべてFC化のため
- 北米(アメリカ・カナダ)の既存店売上:7%増(2015年)
バーガーキングの業績が悪化したのは、2008年の金融危機以降。最悪期は2010年で、既存店売上がマイナス3%以下に転落しました。しかし、2012年以降既存店売上は回復。3のように、昨年は5.7%という増というここ5年間で最高の数字に達しています。その結果が、1の利益の大幅増です。
2は、一見業績悪化の数字のようですが、直営店主体からFC主体にビジネスモデルを切り替えたことが要因。FC化を進めることにより、メニュー開発や広告宣伝などブランドの確立に注力しました。その結果が、1と3なのです。
では、なぜ業績が回復したのでしょうか。その一番の要因は、戦略の転換であり、「直火焼きハンバーガーのファストフードチェーン」への回帰なのです。従来の戦略と現在の戦略を対比すると、以下のようになります。
【バーガーキングの戦略対比】
- 商品戦略:ヘルシー志向の高いメニューを拡充→直火焼きハンバーガーへの回帰
- 客層戦略:ヘルシー志向の高い消費者など幅広い客層→ジャンクフード好きな若者・男性への回帰
- 販売戦略;幅広いメニューの提供→厳選メニューをスピード提供
このような戦略転換を行ったのは、顧客調査の結果、顧客が本当に求めているのが、「直火焼きハンバーガー」と「スピード提供」だったことが判明したからです。
ランチェスター戦略に沿って説明します。1の商品戦略では、従来はヘルシー志向の高め利に対応して、サラダやラップ・低カロリーポテトなどヘルシーなメニューの拡充を行いました。これを、直火焼きハンバーガー主体に戻します。
2の客層戦略では、従来は客層を広げるために、ヘルシー志向の高い消費者の獲得を目指していました。これも、元の若者・男性に転換。3の販売戦略では、客層を広げるためにメニューの品揃えを広げてきましたが、スピード提供を優先するためにメニューを削減しました。
では、そもそもなぜ客層を広げる必要があったのか。それは、金融危機によって、メインターゲットであった若者・男性が大きな打撃を被ったからです。だから、2010年に既存店売上が大きく落ち込んだのです。そのテコ入れのために行った戦略転換が結局うまく行かず、元に戻したら復活したというのが大まかなストーリーとなります。
ただし、バーガーキングが復活したのは、戦略転換だけが要因ではありません。
【バーガーキングが復活した本当の理由】
- PDCAサイクルを素早く回して、スピードを重視したから
- 競合との差別化に成功したから
- 戦略に一貫性を持たせたから
1について、2010年後半に投資会社3Gキャピタル・パートナーズ社が、バーガーキングを買収しました。新しい経営幹部に、レストラン業界経験者がいなかったため、数多くの実験を行うことになります。ヘルシー商品を拡充させて客層を広げる戦略もその1つ。しかし、実際にうまく行かなかったので、すぐさま戦略を転換。このスピードの速さが、バーガーキングの復活に大きく寄与しているのです。例えば、低カロリーフライドポテト・サティスフライズは、売上不振により発売後1年以内に販売終了。恐らく、開発に相当時間が掛かっているはずです。にも関わらず、売れなければ1年も待たずに止めたのです。この変わり身の速さが、3Gキャピタルの長所とも言えるでしょう。
2について、ファストカジュアル人気が続くアメリカ外食市場で、ファストフードチェーンのファストカジュアル化が進んでいます。例えば、マクドナルド社は、カスタマイズバーガーやケールサラダの提供など、現在模索している最中です。ウェンディーズ社は、鮮度の高いメニュー(恐らくサラダやラップ)を追加しています。バーガーキングも同様の戦略を採っていました。しかし、これでは、競合するファストフードチェーンやファストカジュアルレストランと差別化できず、ブランドロイヤルティを高められません。ファストカジュアル化が進む外食市場で、逆にファストフードへの回帰をしたからこそ、バーガーキングは差別化に成功し、復活したのです。これまでとは異なり、マクドナルドの戦略を模倣しなかったことは、大きな成功要因と言えるでしょう。
3について、直火焼きハンバーガーをアピールすると同時に、スピード提供に力を注いでいます。例えば、ドライブスルーの提供時間を、2分45分に短縮しようと現在模索中です。スパイシーチキンサンドイッチでは、バンズ(パンの部分)の上と下に付けていたマヨネーズを下だけに変更して、提供時間を数秒短縮しました。メニュー開発でも、2015年は20の期間限定メニューを追加しただけで、新たな定番メニューの導入はありません。(2010年は30の期間限定メニューと20の定番メニューを追加)客層を広げずに客数を増やすには、来店頻度を高めなければなりません。そのためには、メニュー数が多い方がいいにきまっています。しかし、それを採用せずに、キッチンオペレーションを単純化してスピード提供にこだわったことは、スピード提供を訴求するという戦略の一貫性を示しています。
バーガーキングの強みである「直火焼き」を訴えたポスターは、以前までは店内には無かったようです。その理由は、当たり前だと思ったから。しかし、顧客は、「直火焼き」こそバーガーキングの良さと考えていたのです。従来のアイデンティティへの回帰は、意外に顧客が求めているニーズなのかもしれません。
また、PDCAサイクルを素早く回し、戦略に一貫性を持たせたことも、見逃せません。これは、経営幹部にレストラン業界経験者がいないという弱みが、強みに転換したといことでもあります。
Burger King(2016年3月現在では、トップページでチリドッグが掲載されています。)
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《今回のヒントのまとめ》
- バーガーキングが復活したのは、顧客が求める「直火焼きバーガー」を「スピード提供する」ファストフードチェーンに回帰したからである。従来は、客層を広げるために、ヘルシー商品の拡充に力を注いでいた。
- さらに、PDCAサイクルを素早くまわすスピード重視や、競合との差別化、戦略の一貫性も、成功した大きな要因だろう。
- 特に、スピード提供を徹底するために、品質を変えない条件でレシピまで変えている。さらに、来店頻度を下げかねない新規メニュー数の削減まで行い、キッチンオペレーションを簡素化し、提供時間の短縮に努めている。
- 企業が当然と考える価値でも、顧客の来店動機の大きな要素となることがある。バーガーキングの場合は、「直火焼き」がそれで、これまでは店内にポスター掲示すらしていなかった。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
クリアアサヒから新商品が発売されました。
その名もクリアアサヒ・プライムリッチ。
以前から販売されていたので、リニューアルになります。
リニューアル前の商品も飲んだことがあるのですが、今回の新商品の方が、泡立ちがきめ細やか。
この点はサッポロの麦とホップも同じなのですが、コクはプライムリッチの方が上ですね。
麦とホップは少し物足りない。
次からはブランドスイッチするかもしれません。
それだけ美味しかったということ。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
アメリカのバーガーキングでは、フライドポテトと同じ形状をしたチキン・フライという商品があるようです。
これは食べやすさが人気で、期間限定メニューが定番化したようです。
日本でもあるのかなぁ。
最近、バーガーキングはご無沙汰なので、食べてみたくなりました。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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