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【463号】米小売ターゲットが犯した商品戦略・価格設定の安易な変更。

※東日本大震災で被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。
また、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

スーパーターゲット

◎本日のニュース

1)見出し
More Target Than Tar-zhay?

【出典】
goo.gl/SjDsS

2)要約
米小売ターゲットの第一四半期の業績は、
既存店売上高がアナリスト予想の3~4%上昇に届かず、
2%上昇に終わった。景気後退前の売上金額に戻らず、
株価は低迷している。

この原因は、アメリカの不動産市況・
雇用状態の停滞にあるとする考えもあるが、
ターゲット固有の原因も存在する。

ターゲットは、もともとおしゃれな衣類や
日用雑貨を低価格で提供することで、
ディスカウントショップの中でも異色の存在であった。
しかし、景気後退期に導入した食料品の拡充と割引制度により、
「おしゃれで安い」という特徴が霞んでしまった。
その結果、これまで顧客としていた高所得者層が離れ、
中・低所得者層が増えることになった。
食料品は衣類や雑貨よりも利益率が低いために、
利益率が低下した。

さらに、ターゲットの戦略を真似た
アパレル企業との競争激化や、
ガソリン・食料品価格高騰により、
必需品でないおしゃれな衣類や雑貨の売上が
伸びなかったことも、影響している。

3)キーとなる英文
A series of recent stumbles at Target Corp.
has some retail experts questioning whether
the cheap-chic discounter is losing its cachet.

4)キーとなる英文の和訳
ターゲット社はここ最近業績が低迷しているので、
一部の小売業専門家は、

安くておしゃれなディスカウントショップが
その名声を失っているのかという質問を投げかけている。 

5)気になる単語・表現
chic    形容詞    粋な、あかぬけした(シックな)
cachet  名詞 封印;特徴;威信、名声、高い社会的地位

6)今日のヒント
ターゲット低迷の原因を一言で言えば、
◯商品・価格設定の変更で、特徴がぼやけたため。
となるであろう。

この原因とは、これまで
商品=おしゃれな衣類や日用雑貨
価格=低価格
であったものを、
商品=食料品+おしゃれな衣類や日用雑貨
価格=さらに低価格
に変えたことである。記事によると、
生鮮食料品をあらたに取り扱いはじめ、
冷凍食品の種類を増やしたという。
この食料品の販売を強調したために、
これまでの特徴であったおしゃれな衣類や
日用雑貨が霞んでしまった。
消費者にとってのターゲットが、
おしゃれな衣類や日用雑貨が安く変えるお店
→おしゃれな衣類や日用雑貨も扱っている食料品のお店
になったのであろう。特に、生鮮食料品は消費期限が短いので、
売れ残ると廃棄しなければならないので、
力を入れざるを得なくなる。

価格については、
ターゲットのクレジットカードや
デビットカードで支払をすれば、
5%割り引く。
という割引制度を導入した。
これにより、食料品を買いに来た消費者が、
ついでに利益率の高い衣類や日用雑貨を買ってくれるだろう、
とターゲット側は読んだようだ。
(割引制度導入で、50%も客単価が増加すると予測。)
しかし、ある消費者が、
「5%割引なんて小さいよ。他のお店なんて20%割引クーポンを発行しているよ。」
と言っているように、効果は乏しかった。
「おしゃれな衣類や日用雑貨を低価格で販売する」
ターゲットが5%割引することは魅力的に映るとお店側は思ったが、消費者側は
「食料品と一緒におしゃれな衣類や日用雑貨も販売する」
ターゲットが5%割引すると考えたようだ。
この認識の違いは、顧客層の変化によって、
理解することができる。

もともと、ターゲットの顧客層(ターゲット顧客)は、
年収6万ドル以上の高所得者層
であった。しかし、景気後退期に食料品と
割引制度を導入したことにより、
低・中所得者層
に変化した。この層にとっては、
おしゃれな衣類や日用雑貨よりも
低価格であることが魅力的であり、
その結果、5%割引が売上拡大に結びつかなかった。

この商品・価格設定の迷走により、
競合他社による模倣や外部環境の変化に手を打てず、
さらに業績が低迷することになる。
ここでいう模倣とは、比較的高価格帯のアパレル企業や百貨店が、
低価格のデザイナーズブランドを導入したということ。
(JCペニー社やコールズ社)ガゾリンや食料品価格の高騰による、
生活必需品ではない衣類や日用雑貨の売上不振に対して、
手を打つことが出来なかった。

一方、これまでターゲットのライバルであった
百貨店や独立店舗型小売店は、
景気後退により売上は失ったものの、
皮肉にも、景気回復後その大半を取り戻している。
迷走するターゲットとは対照的である。

このターゲットの失敗事例をみると、
商品戦略と価格設定(販売戦略)が、
いかに重要かがわかる。取扱商品や価格設定を変えることにより、
そのターゲット層が変わり、
その結果競合企業が変わるからである。
ビジネスモデルが変わると言っても、
過言ではないだろう。

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《今回のヒントのまとめ》

1)ターゲットが景気後退前の売上に戻らず低迷するのは、
景気後退期に商品戦略と価格設定を変えたからである。

2)これまで、おしゃれな衣類や日用雑貨を低価格で
販売することをその特徴としていた。
しかし、景気後退期により、食料品の販売に力を入れ、
新たに割引制度を導入した。

3)この変化により、消費者にとっての認識が
「おしゃれな衣類や日用雑貨も売る食品中心のお店」
という認識になり、顧客層が高所得者層から低・中所得者層に変わった。
その結果、5%割引が魅力的な条件でなくなってしまった。

4)ターゲットの失敗事例のように、
企業の商品戦略・価格設定(販売戦略)はとても重要である。
これを変えることにより、ターゲット顧客が変わり、
競合企業も変わる。ビジネスモデルが変わると言ってもいいだろう。

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編集後記
こんばんは、高尾です。
今日の日経新聞の一面を見ると、
関西地方も節電が余儀なくされるようです。
関東ほどの強制力はないですが、
15%の節電は何かしらの影響は出てくるでしょう。
自宅ではすでに半袖・半パンの私。
猛暑にならないことを願うばかりです。
低コストの原子力から火力に変えるとなると、
発電コストも上がります。
秋以降は、すべての商品で値上げが起こるような気がします。
(数字上は、デフレ脱却につながりますが…)

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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