About

*

【975号】アマゾンプライムは年会費以上の利益をもたらすモンスターサービス?

Shipments from Amazon

 

◎本日のニュース

1)見出し

‘Free’ Shipping Crowds Out Small Retailers

 

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

2)要約

送料無料でしかネット通販で買物をしない人が増加している。しかし、実際には無料ではなく、商品価格に組み込まれているか、送料無料のために定額の支払をしている。アマゾンプライムは、後者の最大のサービスである。

 

送料無料かどうかでサイトが選別されると、通販サイトは送料無料で競うようになる。送料は規模の経済が働くので、スタートアップや中小企業にとっては不利となる。その結果、アマゾンのインフラを活用して輸送コストを下げるために、マーケットプレイスに出店する企業が増える。

 

3)キーとなる英文

More than half the past year’s orders from 30 of the biggest e-commerce merchants were shipped free of charge, compared with 33% two years ago, according to mystery shopper StellaService.

 

4)キーとなる英文の和訳

ミステリーショッパーサービスのステラサービスによると、ネット通販小売業大手30社の昨年の受注件数の半数以上が、送料無料で出荷された。

比べると、2年前は33%であった。

 

5)気になる単語・表現

attorney 名詞 弁護士
e-tailing 名詞 電子商取引
crowd out 他動詞句 (増加して)~を追い出す

 

(今回ピックアップ英単語)

【attorney】

(同義語)

  1. attorney

「(米)(法廷で弁護する)弁護士」a lawyer, especially one who can act for somebody in court

「(法定)代理人」a person who is given the power to act on behalf of another in business or legal matters

  1. counsel

「(一人または数人の)(法廷)弁護人;弁護団」 a lawyer or group of lawyers representing somebody in court

  1. barrister

「(英)法廷弁護士」 a lawyer in Britain who has the right to argue cases in the higher courts of law

  1. solicitor

「事務弁護士(法律書類の作成・法律相談、バリスターと共同して訴訟準備をする弁護士)」 a lawyer who prepares legal documents, for example for the sale of land or buildings, advises people on legal matters, and can speak for them in some courts of law

 

(メモ)

WSJでは、弁護士の単語としてattorneyがほとんど。

英文作成では、より一般的なlawyerとattorenyを覚えておけばいいでしょう。

 

6)ビジネスのヒント

今回は、アメリカのネット通販市場の競争環境について。送料無料が当たり前の世界になっているようです。記事の始めで紹介されている弁護士は、買物のほとんどをネット通販で買うのですが、送料を支払うことを嫌っています。そして、いつも買うのは、プライムに加入しているアマゾン。実は、アマゾンプライムの会費として年間99ドル支払っているのですが、アマゾン利用の際は、無意識のうちに「アマゾン=送料無料」と認識されているようです。

 

送料無料を謳う通販サイトが増えているアメリカネット通販市場ですが、実際には送料は知らないうちに負担しています。

 

【ネット通販で送料無料になるカラクリ】

  1. 商品価格に含まれているから
  2. 送料無料サービスとして別途定額を支払っているから

 

2はアマゾンプライムのような会費を支払うサービスです。1は、「1万円以上の支払で送料無料」のように、支払金額が一定以上になれば送料無料になるというパターンです。この場合は、輸送コストの一部が商品代金に付加されていることになります。

 

送料無料のネット購入が増えていることは、次のデータが示しています。

 

【データが示す送料無料取引の増加】

ネット通販大手の送料無料受注件数:33%(2014年)→50%以上(2015年)

 

昨年一気に増加してことがわかります。記事にて明確には書かれてありませんが、この増加の背景には、アマゾンプライム会員の増加があるのでしょう。送料無料で利用できるアマゾンユーザーが増えたことにより、競合他社も送料無料の取引を増やしているものと思われます。

 

ただし、送料無料を提供できるのは大手サイトであり、スタートアップ企業や中小企業は不利な競争を強いられます。

 

【送料無料競争で大手が有利な理由】

  1. 物量・輸送費用が大きいほど、有利な運賃レートを引き出せるから
  2. 有利なレートを引き出せない大手以外は収益性が下がるから
  3. 大手企業は物量をさらに拡大することで、輸送コストを引き下げ、さらなる価格競争を仕掛けられるから

 

1について、物量が多いと、最低限の物量保証が可能となり、物流予測の精度を高められることになります。これは、経営上物流企業にとってプラスに働くので、運賃の引き下げが可能になります。

 

2について、物量・金額とも相対的に少ないスタートアップ・中小企業は、大手企業よりも悪いレートを余儀なくされる一方で、競争上送料無料も提供しなければなりません。その結果、収益性は悪化します。大手以外は不利になります。

 

3について、送料無料が集客を増やせば、さらに物量が増加し、運賃レートの引き下げが可能になります。これを単品価格に反映させれば、価格競争を有利に戦うことができます。

 

ネット通販の世界では、送料無料はロスリーダーと言えるでしょう。ロスリーダーとは、仕入値よりも低い価格で売る牛乳のようなもので、集客のための商品です。

 

ネット通販で送料無料競争を仕掛けたのは、アマゾンと言っても過言ではありません。その武器は、アマゾンプライム。よく考えてみると、アマゾンプライムはよく出来たサービスであり、アマゾンの収益拡大に大きく寄与します。そこで、アマゾンプライムがもたらす収益拡大についてまとめると、次のようになります。

 

【アマゾンプライムの収益拡大寄与】

  1. 年会費収入による収益の安定化
  2. 集客力・購入率の向上
  3. 規模の経済によるさらなる運賃コスト低下
  4. マーケットプレイスへの出店・手数料収入の拡大

 

1について、送料無料サービスを提供する対価として、アマゾンは年会費を受け取ります。アマゾンで何も購入しなくても、年会費は発生するので、明らかに収益拡大に寄与します。さらに、自動引き落としによる課金のため、積極的な退会がなければ、毎年発生する売上となり、収益の安定化につながります。

 

2について、年会費を支払えば、できるだけその小売企業から購入しようと考えるもの。この結果、ネット購入を考えた場合に、最初に検索サイトではなくアマゾンで調べるようになるでしょう。

 

実際、2015年の調査によると、最初に訪問するサイトとして、アマゾンと答えた人は44%であり、2012年の30%から増加しています。ちなみに、検索サイトは34%でした。

 

まずアマゾンで調べるということは、集客力の向上につながるだけではなく、年会費の存在がアマゾンでの購入を促進し、購入率も高めることになります。

 

3について、アマゾンプライムでアマゾンの利用が高まれば、アマゾンの物量・輸送費用がさらに拡大します。この結果、物流企業からさらなる有利なレートを引き出すことが可能になり、コスト削減がさらに進みます。価格競争を仕掛ける原資にもなりえます。

 

4について、アマゾンが仕掛けた送料無料競争で一番割を食うのは、スタートアップや中小企業など規模の小さなネット通販企業。これらのネット通販市場の弱者に対して、アマゾンはインフラを共用できるマーケットプレイスへの出店を提案します。出店することにより、小規模のネット通販企業は、アマゾンの強い集客力だけではなく、コスト競争力の高い物流インフラも活用できるようになります。一方のアマゾンは、サービスを提供する見返りとして、出店・販売手数料を獲得できます。これは、売上増に寄与します。

 

このように、アマゾンプライムは、年会費収入・販売増により直接収益拡大に寄与するだけではなく、マーケットプレイス出店企業の増加を通じて、間接的にも収益にプラスに働くことができます。このサイクルがぐるぐる回れば、アマゾンの収益性はさらに向上します。モンスターサービスと言っても過言ではありません。

 

今回の記事から学べることは、ネット通販市場は、参入障壁が低いから競争の激しいレッドオーシャンという次元はすでに終わり、大手企業が規模の経済を活用して有利に戦う次元に変わっているということです。また、複合的に収益向上に寄与するアマゾンプライムの成功を受けて、会費制のサービスが増えるかもしれません。

 

有料の会員サービスは、会費収入・囲い込みという効用を提供企業に提供します。ただし、最初に会費を支払ってもらう必要があります。この高いハードルを超えることが、最大の課題と言えるでしょう。

 

Amazon Prime

 

(記事で取り上げられた通販サイト)

Saratoga Olive Oil

Comfort House

 

 

***************************

《今回のヒントのまとめ》

  1. アメリカネット通販市場では、送料無料取引が増加している。このトップランナーがアマゾンであり、アマゾンプライムが送料無料競争を引き起こしている。
  2. 送料無料競争が大手企業にとって有利なのは、より有利な運賃レートを引き出せるからである。それによって、大手以外は収益性の低下を余儀なくされる。さらに、大手は送料無料による集客増により、物量をさらに拡大できるので、輸送コストをより低下させることができる。これは値下げの原資にもなる。
  3. 送料無料競争を有利にするアマゾンプライムには、直接・間接的に収益向上に寄与する。年会費収入と集客力・購入率の向上は、直接的に収益を拡大する。規模の経済による輸送コストのさらなる低下と小規模小売企業のマーケットプレイス出店増は、間接的に収益増に寄与する。
  4. アメリカネット通販企業は、送料無料競争により、大手が有利な競争環境に変化している。
  5. 複合的に収益拡大をもたらすアマゾンプライムの成功をうけて、今後有料の会費ビジネスが増えるが、最初に会費を支払ってもらうという高いハードルを超えなければならない。

*************************

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

満月ポンを知っていますか。

小学生の頃に好きだった、あのぽんせんです。

たまたまスーパーで見つけた買ってみたら、美味しさにハマってしまいました。

美味しさもいいですが、シンプルな原材料も魅力的。

だからか、カロリーも他のスナックに比べて、少なめです。

メーカーの松岡製菓さんは、楽天市場にも出店されており、訳あり商品も販売されていました。

そして、これを注文して食べたところ、さらに美味しい。

味が薄いのやら濃いのやら、薄っぺらいのやら、いろいろ味が楽しめるのがいいです。

送料無料なのも、有り難いですね。

満月ポン

【ぷっしゅん満月ポン】色んな食感が楽しめる!送料無料!130g(8袋)(規格外商品)

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

日経MJの博多マルイの記事を読んで、久しぶりに神戸マルイを訪問しました。

いつも行くスーツコーナーでは、シャツと靴ばかりでスーツがない。

そこで店員さんに聞いてみると、ビサルノ(マルイPB)のスーツの販売を止めたようです。

神戸マルイでの販売を中止しただけのようですが、好きなブランドだっただけに、残念ですね。

神戸・三宮はスーツ販売のレッドオーシャンなのでしょうか。

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com

高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com

高尾亮太朗のGoogle+⇒ gplus.to/ryotarotakao

高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/

今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。

 

私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

ad

関連記事

新着記事

コメント/トラックバック

トラックバック用URL:

この投稿のコメント・トラックバックRSS




管理人にのみ公開されます

*

ad

PAGE TOP ↑