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【526号】コダック化しなかった元織物業ミリケンとストーリーとしての競争戦略

コダックBy 427

 

◎本日のニュース

1)見出し
The Anti-Kodak: How a U.S. Firm Innovates and Thrives

【出典】
goo.gl/zEcMA

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2)要約
破産法申請準備に入ったコダックのように、
グローバル化によるアメリカ製造業の競争力低下が嘆かれる。
しかし、ミリケンアンドカンパニー(以下ミリケン)のように、
従来の製品に見切りを付け、独自製品に特化することで、
成長を続ける企業もある。

織物業のミリケンは、

他社同様海外の低価格輸入品に悩まされていた。
輸入品流入への対抗に失敗すると、織物や特定の化学品の知識を
活用したニッチ製品の製造に特化した。その研究を通して、
数千もの特許取得に成功している。ミリケンの成功の要因は、変化を受け入れる姿勢と
その変化スピードである。また、外部企業に対して製品や
生産革新を教える事業を行うなど、外部との提携を進めている。

その結果、ミリケンの業績は、着実に増収増益を継続。
無借金経営や二桁のROEに成功し、2007年以来企業価値が
30%以上上昇している。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
And it bore down on scientific research and manufacturing innovation.

4)キーとなる英文の和訳
そして、ミリケンは、科学研究と生産革新に舵を切った。

5)気になる単語・表現
bear down on    自動詞句    ~にのしかかる、~に圧迫する、
~に接近する、~に近寄る

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
グローバル化という外部環境の変化に対し、
労働集約型産業に属する企業が、どのような手を打って、
成功したかという話。この記事では、労働集約型産業として織物業が、
労働集約型産業に属する企業としてミリケンアンドカンパニー
(Milliken & Co.)が取り上げられている。

新興国からの低価格アパレル品の流入で、
アメリカ南東部の織物業は壊滅的打撃を受けた。
ミリケンも、もちろんその影響からは免れない。
ニッチ製品に特化した今のミリケンからは考えられないが、
当初はミリケンも他社同様に格安輸入品への反対を表明し、
対抗しようとした。記事では、政治献金を使ってロビー活動をしていたと、
報じている。

しかし、その反対運動が実らず、輸入格安品のアメリカ市場流入が
避けられないことがわかると、ミリケンは他社とは違う行動に出た。
ここで、ミリケンとミリケン以外の織物企業を対比してみると、
◯ミリケン→織物業から撤退し、研究開発型のニッチ製品に特化。
◯ミリケン以外の織物企業→織物業を継続し、廃業・倒産を余儀なくされる。
となる。この対応が、企業存続に大きな影響を与えたことになる。

さらに、ミリケンは存続するだけでなく、増収増益を長期間継続している。
その要因は、
1.変化を受け入れる姿勢
2.スピード経営
3.強みに強化できる仕組み
の3つ。

1については、市場から退場を余儀なくされた他社との違いである。
成功体験に満足せず、自社の強みが活かせる研究開発型の
ニッチ製品に特化した。記事で紹介されているニッチ製品は、
◯送水管テープを強化する生地
◯冷蔵庫の清潔に保つ添加剤
◯子供のお絵かきペンを水洗い可にする添加剤
◯火に強い絨毯
◯抗菌性の調理台
◯軽い風車
など。

2については、組織をできるだけオープンにすることにより、
アイデアを製品に昇華させるスピードを早めている。
例えば、研究者の上司がそのアイデアを気に入らなかったとしても、
他の部署にプレゼンすることができる。また、
外部組織との連携によって、素早くアイデアを事業に進化させることが
可能となる。

3について、ミリケンの成長を支える一番大きな要因は、
この強みを強化できる仕組みにある。企業が新規事業に参入する際、
自社が持つ経営資源を活用するのは当然だろう。
しかし、ただ活用するだけでは、いずれ他社に追いつかれる。
真似されるのがオチである。しかし、他社の追随を許さない仕組みがあれば、
差別化は継続でき、成長を加速することができる。ミリケンの仕組みとは、
次の3点。
1.特許→守り
2.研究推進→攻め
3.外部とのオープンな提携→キラーパス
特許は、文字通り自社の技術を守ってくれる。
しかし、いずれ時間が過ぎれば、特許が無効になり、
その競争優位はなくなってしまう。そこで、2が働く。

ミリケンの研究者は、勤務時間の15%を自分が興味のある研究に
費やすことができる。研究内容については、
事業化を目的にすること以外問われない。さらに、
事業化に成功した研究者は、50%までが可能になるという。
自由なサービス開発を奨励するグーグル社以上かもしれない。
また、この研究開発に力を入れる企業風土が、
上位大学院の卒業生の入社を促進させている。その結果、
他社以上に研究開発が進み、新たな事業アイデアを生み出すことになる。
まさに、攻めの仕組みと言えるだろう。

最後に、ミリケンは、社外に製品や製造イノベーションを
教える事業を推進している。一見すると、
自社のビジネスモデルなど強みが流出することになりかねない。
だから、競合他社は、なかなか同じ事ができないだろう。一方、
この事業を通じて、社外とのネットワークを築くことができ、
その結果、自社の事業アイデアを進化させ、
より早く事業化することができる。一見自社に不利に見えることが、
実は大きな差別化につながる。書籍「ストーリーとしての競争戦略」
で言うキラーパスである。このキラーパスのおかげで、
攻めをより強化することができる。

記事ではそれほど大きく割かれていなかったが、
この3つのうちで一番重要なのは、3番目の外部とのオープンな
提携のように思える。なかなか競合が踏み切れない施策だからこそ、
競合の追随から免れ、長期的な差別化を実現する。その結果が、
着実な増収増益、筋肉質の財務諸表、高い投資効率を生み出している。

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《今回のヒントのまとめ》
1)格安輸入品の嵐に見舞われたアメリカ織物産業。殆どの企業は、
その嵐によって廃業・倒産を余儀なくされた。一方、
ミリケンは生き残っただけでなく、成長を継続している。

2)ミリケン成功の要因は、「変化を受け入れる姿勢」
「スピード経営」「強みに強化できる仕組み」である。

3)特に重要なのは、強みを強化できる仕組み。具体的には、
「特許による守り」「研究推進による攻め」
「外部とのオープンな提携によるキラーパス」である。

4)最後のキラーパスとは、書籍「ストーリーとしての競争戦略」
登場した用語であり、企業の長期的な差別化を可能にさせてくれる。
ミリケンは、このキラーパスにより、着実な増収増益・
筋肉質の財務諸表・高い投資効率を実現している。

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7)おすすめ商品・サービス

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最近、ワインを勉強しています。
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編集後記
「ストーリーとしての競争戦略」は、年末年始に読んだのですが、
とても面白かったです。
強い企業のその秘密が、明快に解説されてあります。
何度も読み返したいほどですが、今私に必要なのは考えること。
好きな事を考えるのは、楽しいこと。
しかし、なかなかいい考えが浮かばないと、苦しくなります。
この苦しみの先に、キラーパスが浮かび上がってくるのでしょうね。
※個人的事情により、2012年の年賀状送付は
控えさせていただきました。ご了承願います。

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