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【775号】立ち食いそばからヒントを得た、ローランドDGの高生産性製造システム

Photo:Lo stand di Roland al PTE 6 By:Roland DG Mid Europe Italia
Photo:Lo stand di Roland al PTE 6 By Roland DG Mid Europe Italia

 

 

◎本日のニュース

1)見出し
Japanese Firm Uses a Single-Worker System to Make Its Products

 

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2)要約

広告板用プリンターから歯冠まで製造するローランドDG社では、一人の作業員が数千もの部品が必要な製品の製造を、完成まで一人でたやすく行う。これを可能にするのが、D-shopという生産システムである。

 

D-shopでは、一人用のブースの中で、一人の作業員が、モニターが示す3Dグラフィックスを見ながら、製品を組み立てる。モニターの通り、部品を回転ラックから取り出し、デジタルスクリュードライバーで組み立てる。このドライバーは、何回どれだけの固さでネジを締めたかを記録するため、正しい作業が終わらないと、モニターは次のステップの作業を指示しない。

 

このような仕組みを導入したのは、受注ロットが小さくなり、一人で多種多様な製品を作る必要があったからである。導入した結果、生産性は2010年比で60%向上。また、少しの研修で誰でも組み立てが行えるので、急な大量注文の際は、パートタイマーの臨時雇用で柔軟に対応しているという。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

That’s because Roland DG, a small company with about $300 million in annual sales and 966 employees, makes everything from billboard printers to machines that shape dental crowns using an advanced production system known as “D-shop.”

 

4)キーとなる英文の和訳

その理由は、年商3億ドルで966人の従業員を抱える中堅企業のローランドDGは、広告板用プリンターから歯冠まで多種多様な製品を製造するのに、「D-shop」と呼ばれる優れた生産システムを用いているからである。

 

5)気になる単語・表現

billboard 名詞 広告板
crown 名詞 王冠

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

ローランドDGとは、浜松のメーカー。そう、この記事は、日本の企業に関する記事になります。人手不足が深刻化し、今後生産性向上が大きな経営課題(競争力にも)なると考え、日本の記事を取り上げました。

 

通常、製造業は規模の経済の恩恵を受けるため、できるだけ効率的に大量生産を行います。そのために生まれたのが、流れ作業。ラインに作業員が並んで、流れてくる半製品に作業を施しながら、最終的に製品が出来上がるという仕組みです。しかし、ローランドDGが採っているのは、その逆。一人用のブースで、一人で製品の完成まで完結する仕組みです。その仕組を「D-shop(ディーショップ)」と呼ぶそうですが、その特徴をまとめると、次のようになります。

 

【ローランドDGのD-shop】

[1]   一人用のブースの中で一人で完成まで行う

[2]   コンピューターモニターが示す3Dグラフィックスの指示に従って、部品を組み立て。

[3]   部品は回転ラックから取り出す

[4]   ネジを何回どのぐらいの固さで締めたかを記録するデジタルスクリュードライバーがモニターと連動

[5]   指示された工程が終わらないと、次の工程が指示されない

[6]   作業に迷えば、フロアマネージャーを呼び出すボタンを押す

 

端的に言えば、デジタル機器で制御することにより、誰でも組み立てができるようになる仕組みです。D-shopのお陰で、すべての作業員が、約50種類もの製品のあらゆる型を組み立てられるようになったようです。

 

このメリットも含めて、D-shopがもたらした恩恵をまとめると、次のようになります。

 

【D-shopのメリット・恩恵】

[1]   スキルの低い作業員を早く戦力化できる

[2]   販管費の低下

[3]   多品種少量生産に対応

[4]   生産性の向上

[5]   デジタル機器の活用による、不良品の減少、モチベーションアップ、海岸生産の進展

 

1について、スキルの低い作業員でも即戦力になれるということは、急な受注にも対応できるということでもあります。どうしても人が足りなければ、パートタイマーを募集すればいいのです。2日の研修を経れば、組み立て作業に入ることができます。

 

2について、モニターの指示に従い作業を行い、デジタルスクリュードライバーにより作業が正しく行われたどうかが制御されるので、人の介する機会がめっきり減ります。つまり、管理業務自体が減ることになり、販売管理費を削減することができます。

 

3について、一人で一つの製品の完成まで行えるということは、10人いれば10種類の製品を一度に生産できることになります。つまり、少量多品種生産に対応できるということです。そもそも、D-shopが考案されたのは、注文ロットがどんどん小さくなったから。この環境変化に対応するために生まれた仕組みが、その後ローランドDGの強みに発展したのです。

 

4について、2010年と比較すれば、生産性は60%向上したようです。ただし、ローランドDGが目標とするのは、生産性を2倍に引き上げること。実際、熟練作業員は、同時に2つの製品を組み立てたり、組み立てとテストを同時に行ったりしており、熟練作業員が増えることで、生産性の2倍も可能となります。

 

5について、デジタル機器を使って一人で最後までつくり上げることにより、自分が作った完成品が目に見え、作業員のモチベーションが向上します。また、デジタル機器は言語や文化に影響を受けないので、海外生産も容易になります。

 

D-shopの優れた点は、単に一人で最後まで組み立てるのではなく、シンプルさとスキル不要な点にあります。モニターに示された通りに組み立てるシンプルな方法のため、誰でも適応しやすくなります。また、デジタル機器を使うことで、正しい作業工程が担保されるので、特殊なスキルを必要としません。(研修は必要ですが)シンプルさとスキル不要という要素は、人手不足に悩む企業のヒントになるのではないでしょうか。

 

最後に、このD-shopは、立ち食いそばをヒントに考えだされたようです。キッチンのおばちゃんが、カウンター越しに多品種の注文をさばく光景とほとんど同じことがわかります。キッチンを覗くと、手の届く範囲に麺・スープ・具材など必要な食材がすべて揃っています。おばちゃんは、移動することなく来店客の注文に対応できるのです。同様に、D-shopの作業員も、ブース内でモニターを見ながら、必要な部品を回転棚から取り出し、デジタルスクリュードライバーで組み立てます。ブースの外に出ることは、ありません。

 

業界が違っても、効率の良い作業工程には、生産性向上のヒントを見い出せることがわかります。

 

Roland DG

D-shop

 

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《今回のヒントのまとめ》

(1)ローランドDGは、一人で完成まで組み立てるD-shopという仕組みをどうにゅうすることにより、2010年比で生産性が60%も向上した。

(2)この仕組では、モニターのわかりやすい指示に従って、回転ラックから部品を取り出し、デジタルスクリュードライバーを使って組み立てる。モニターとデジタルスクリュードライバーが連動しているので、正しい工程が終わらなければ、次の工程の指示が出ない。

(3)シンプルさとスキル不要な点により、多品種少量生産に柔軟に対応できる。

(4)さらに、販管費の低下や、不良品の減少、作業員のモチベーション向上、海外生産への進出などのメリットもある。

(5)この仕組は、立ち食いそばのオペレーションをヒントに考案された。他業界でも、効率的な工程からは学ぶべき点は多いにある。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

またまた第三のビールの新製品を見つけました。

それは、サッポロビールのホワイトベルグ。

試しに一缶飲んでみましたが、これもよかった。

それどころか、この美味しさでこの価格はあかんやろ、と思ったほど。

まるでヴァイツェンです。

ホワイトベルグのせいで、地ビールや外国産高級ビールの売上落ちるかもしれませんよ。

サッポロ ホワイトベルグ

www.sapporobeer.jp/whitebelg/

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

生産性の向上は、どちらかというとサービス業で必要とされていると思います。

特に店舗販売は、人手不足が深刻であり、少人数で運営できる仕組みが求められています。

サービスは損なわず、生産性を上げるというのは、大変難しいことですが、だからこそ競争力になり得るのではないでしょうか。

 

それにしても、暑いですね。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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今回は私が恩返しします!

 

 

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2014/06/09 | 製造業 ,

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