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【690号】アメリカのユースホステル市場は、ホテル業界のブルーオーシャン?

ユースホステル

by courtesy of Dauvit Alexander

◎本日のニュース

1)見出し
New Breed of Hostels Heads to U.S.

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2)要約

ヨーロッパ主要都市にあるモダンホテルのような新型ユースホステルが、アメリカに進出している。このユースホステルは、見た目もスタイリッシュな上、カフェやバーでは食事もでき、ヨガやダンスレッスンを受けることもできる。貧乏学生にお馴染みの従来型ユースホステルとは、全く異なる。

 

アメリカに進出したのは、アメリカのユースホステルの多くが零細事業者によるもので、安全性やサービスが欠如していると判断したからである。また、大手ホテルチェーンがユースホステル市場を無視していることも、ビジネスチャンスと判断された。

 

しかし、市場としての魅力・将来性に疑問を投げかける声もある。気まぐれな若者の支持を長期に渡って獲得するのは容易ではない。またそもそもアメリカに、ヨーロッパほどユースホステルへのニーズがあるかどうかは不明である。一つの部屋を多人数でシェアすることを禁ずる条例の存在も、大きなハードルとして指摘されている。

 

◎キーセンテンスとその翻訳

3)キーとなる英文

It may sound like a fashionable boutique hotel, but visitors here are actually shacking up at a youth hostel.

 

4)キーとなる英文の和訳

まるでファッショナブルなブテッィク型ホテルのように聞こえるが、旅行者が実際に泊まっているのは、ユースホステルである。

 

5)気になる単語・表現

boutique 形容詞 ブティックような、小規模だが上質の商品を特定の顧客に提供する
shack up 自動詞句 同棲する、住む

Boutique (of a business) small and offering products or service of a high quality to a small number of customers

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

ヨーロッパで起こった新型ユースホステルが、アメリカにも上陸しているようです。新型ユースホステルの特徴をまとめると、次のようになります。

 

【新型ユースホステル】

[外見]デザイン性が高くファショナブル

[部屋]部屋を多人数でシェア(共同利用)

[サービス]宿泊以外の飲食・体験型サービスなど充実

[価格]低価格

 

貧乏旅行をする大学生御用達の従来型ユースホステルとは、全く異なることがわかるかと思います。さらに、ヨーロッパ企業の進出が、アメリカ企業の参入を促しているようです。記事では次のような事例が紹介されています。

 

【新型ユースホステルの事例】

[1]    ジェネレイター(Generator、イギリス企業)→ラウンジではカクテル、カフェでタパス、バルコニーでは日光を楽しめる。

[2]    ベッズ&バーズ(Beds & Bars、イギリス企業)→ヨーロッパ8都市で20軒を運営。過去1年間に100万人が利用。全米主要都市で立地検討中。

[3]    フリーハンド(Freehand、アメリカ企業)→ニューヨーク本社のホテル運営企業・シデルグループ(Sydell Group)と億万長者で未公開株投資家のロン・バークル(Ronald Burkle)氏のジョイントベンチャー。上質のユースホステル(収容人数236人)を11月にマイアミにオープン。今後25億ドルを投資して、10軒まで開設。料金は一泊22ドルからで、プライベート室は125ドル。

※料金は一泊。

 

新型ユースホステルのビジネスモデルは、ビジネスモデルは以下のようになります。

 

【新型ユースホステルのビジネスモデル】

[1]    低コスト運営←倒産したホテルや廃れたオフィスビル、利用されていない工業施設を活用

[2]    高い客室稼働率←低価格

[3]    高い客単価←宿泊料+飲食収入+その他物販収入

 

1の低コスト運営は、従来型ユースホステルにも当てはまることです。ただし、従来型と異なるのは、倒産したホテルなど既存施設をできるだけ活用している点。飲食店で言うところの「居抜き」になります。

 

2は、低価格ゆえに高い客室稼働率が期待できます。また、後で述べるように、アメリカのユースホステル市場は、独立零細業者による運営がほとんどで、安全性やサービスに問題があります。よって、これらの課題を解決することで、競争優位を獲得でき、稼働率を高めることができます。

 

3が、従来型ユースホステルとの一番の違いかもしれません。新型ユースホステルは、宿泊料だけに依存しているのではありません。バーやカフェを充実させることで飲食売上の拡大を目指しています。さらに、Tシャツや南京錠や水着など、旅行者が必要とするモノの販売も、貴重な収入源なのです。その結果フリーハンドでは、宿泊料が25ドルであるものの、客単価は1日40~45ドルにまで拡大しています。

 

このようなビジネスモデルを引っさげて、アメリカで新型ユースホステルが展開されているわけですが、その背景にはもちろんビジネスチャンスが存在しています。

 

【アメリカユースホステル市場のビジネスチャンス】

[1]    家族経営など独立零細業者による運営がほとんどのため、投資が不足している。その結果、安全性やサービスが欠如している。

[2]    大手ホテル企業が無視してきた市場だが、外国・国内の若者海外旅行市場は年間1360億ドルとかなり大きい。

つまり、大手企業が本気を出して参入するには市場規模は小さいものの、それなりに市場規模は大きいが、そのニーズは満たされていないことによって、ビジネスチャンスが生まれたことになったのです。実際、アメリカにあるユースホステルは主要都市が中心で、実際に使える施設で275軒しかありません。一方、ヨーロッパには3570軒もあります。この数字を目の当たりにすれば、起業家はビジネスチャンスを感じるでしょう。

 

しかし、課題がないわけではありません。

 

【新型ユースホステルが直面する課題】

[1]    若者は気まぐれなため、ロイヤリティを確立しにくいこと

[2]    アメリカには、ヨーロッパほどユースホステルを受け入れる素地がないこと

[3]    低価格ホテルなどユースホステル以外との競合

[4]    法律による規制

 

1は特に説明はいらないでしょう。流行に敏感な若者は、今気に入った商品だからと言って、将来にわたって使ってくれるとは限りません。この不安定さが、大企業が若者向けホテル市場を避ける理由なのかもしれません。

 

2について、先述したユースホステルの数の差には、それなりの理由があるということです。その理由は、ヨーロッパのように部屋をシェアする文化がアメリカにはないから。安全面を気にする人が多いのでしょうか。

 

3は、2の文化面以外でユースホステルがアメリカで増えない要因になります。それは、ホリデーインエクスプレス(Holiday Inn Express)などの低価格ホテルや、ヨーテル(Yotel)やポッドホテル(Pod Hotel)などのスタイリッシュな安宿、さらには個人宅に泊まるエアビーアンドビー(Airbnb)などのような新型宿泊サービスとの競合です。ヨーロッパよりも他の宿泊業態との競合が激しいからこそ、アメリカではユースホステルが増えないというわけです。実際、ホリデーインエクスプレスでは、170平方フィートの部屋に、薄型テレビと無料無線LANサービスが付き、さらに大きな共同施設を利用できて、一泊169ドル。プライベート空間を確保したい人にとっては、魅力的な価格です。

 

4も、ユースホステルが増えない要因の一つです。各地域における法律との兼ね合いです。例えば、ニューヨークでは、一緒に旅行しない4人以上が同じ部屋に宿泊することや、1つの部屋に3個以上のベッドを置くことが禁止されています。法律により、部屋をシェアするユースホステル業態が成り立たたなければ、ユースホステルを建てることさえできません。

 

このように課題はあるものの、そのニーズの高さを考えれば、今後増えるのではないかと、私は推測します。そのニーズとは、

 

人と触れ合う旅行をしたい

 

というニーズです。ソーシャルメディアの普及を見れば、人との触れ合いに価値を見出す人は相当数います。それは若者だけではありません。年齢を重ねても、昔の貧乏旅行を懐かしむ人は多いのではないでしょうか。部屋をシェアした経験のある人ならば、好高齢になっても、抵抗はないように思えます。

 

上述の課題についても、次のように乗り越えることも可能です。

 

【新型ユースホステルの課題への対応案】

[1]    高齢のユースホステル経験者をターゲットにする

[2]    エアビーアンドビーの人気を考えると、部屋のシェアへの抵抗はさほど大きくない可能性がある

[3]    「部屋をシェアして人と触れ合える」ことで差別化する

[4]    ツインベッドを利用するなど部屋の改造や法律改正への働きかけ(WSJ記事にあり)

 

大企業が無視をしていながら、それなりの市場規模があることは、大きなビジネスチャンス。さらに、今の施設に不満があれば、受け入れられる可能性は高いのではないでしょうか。日本にしても、ユースホステルの数は不足気味で、海外旅行者向けに上質の施設を低価格で提供できれば、面白いビジネスになるように感じます。

 

Generator generatorhostels.com/en/

Beds & Bars www.bedsandbars.com/

Freehand thefreehand.com/

Holiday Inn Express www.ihg.com/holidayinnexpress/hotels/us/en/reservation

Airbnb(日本版) www.airbnb.jp/

 

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《今回のヒントのまとめ》

1)  アメリカでヨーロッパ発の新型ユースホステルが増えているのは、大手ホテルチェーンが無視をしながらも、それなりに大きな市場があるからである。また、既存サービスには、安全面・サービス面で問題がある。

2)  そのビジネスモデルは、低コスト運営・高い稼働率・高い客単価。宿泊料金は低いものの、飲食・その他サービスを提供することで、宿泊客一人あたりの売上を伸ばすことができる。

3)  ただ、問題がないわけではない。若者の気まぐれさや、アメリカでの部屋をシェアすることへの抵抗、他ホテル業態との競合、法律による規制である。

4)  しかし、ソーシャルメディア人気をみると、人との触れ合いに価値を感じる人は多いと推測される。よって、部屋をシェアすることで人と触れ合えるユースホステルは、そのニーズを満たすことができる。

5)  課題についても、若者以外にターゲットを広げたり、人との触れ合いで差別化したり、法律との適合・改正への働きかけで、ある程度解決できるだろう。

 

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編集後記

ヨーロッパのユースホステルは、20歳の頃とてもお世話になりました。

安い割に綺麗なのが特徴ですね。

安全面も問題なかったです。

ユースホステルを経験すると、一人旅の時はユースホステルがいいですね。

友達がいっぱいできる、これが一番の旅の楽しみだからです。

 

 

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