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【697号】中国の外国ブランド製品価格が高い本当の理由

中国のスタバ

by courtesy of Nomad Cavalier, Hark

 

◎本日のニュース

1)見出し
In China, Veil Begins to Lift on High Consumer Prices


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2)要約

中国の外国製品は、他国と比べると概して高い。所得水準を換算すると、その高さに驚くばかりである。その要因として、中国国内での税や輸入に掛かる関税が考えられるが、それだけではない。

 

一番大きな理由は、増加する中間層が、輸入品などの有名ブランド品に喜んでお金を支払うからである。だから、企業は許容されるだけ高く値付けをする。また、心理的な要因として、高価格=高品質というハロー効果も期待できる。

 

しかし、高くても売れるのはステータスシンボルになりうるブランドであり、飲料など競争の激しい外国ブランドの日常品は、中国の方が価格は低い。また、ネットや海外旅行で得た情報で価格比較する消費者は、高い価格に辟易している。さらに、政府による価格に対する取り締まりも強化されている。

 

 

◎キーセンテンスとその翻訳

3)キーとなる英文

But today more Chinese consumers are pushing back, weary of sticker shock—and enlightened by the ability to compare prices elsewhere, thanks to the Internet and increased travel abroad.

 

4)キーとなる英文の和訳

しかし最近において、値段の高さに抵抗し、辟易する中国人消費者が増加している。

というのは、他国との価格比較が可能になったことで、賢くなったからである。

それは、インターネットや容易になった海外旅行の恩恵である。

 

5)気になる単語・表現

push back at 自動詞句 ~に反発する
sticker shock 名詞 値札ショック(高い値段にショックを受けること)
enlighten 他動詞 ~を啓発する、~に教える
weary of 形容詞句 ~にうんざりする

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

私も中国に行った時に、外国ブランド製品の値段を見てびっくりしました。それは、日本よりもずっと高いからです。ユニクロはまだマシな方ですが、それでも日本と同じ価格。所得水準を考慮に入れれば、中国でのユニクロの価格は、かなり高いことがわかります。記事で紹介されている中国の価格をまとめると、次のようになります。

【外国ブランド製品の中国・欧米諸国との価格比較】

[iPad2]中国488ドル⇔アメリカ399ドル

※一人あたりのGDP 中国7500ドル⇔アメリカ42693ドル

[衣類やその他アパレル製品]中国の方がアメリカよりも平均70%高い

[ハーゲンダッツのラムレーズン1スクープ]北京(中国)5.4ドル⇔ワシントンDCのチャイナタウン(アメリカ)4.68ドル

中国で販売される外国ブランド製品の価格が高い理由は、以下の通りです。

【外国ブランド製品の価格が中国で高い理由】

[1]    関税などの租税負担・流通コストが高いから

[2]    有名ブランドは高くても売れるから(高級品・有名ブランドのみ)

[3]    ハロー効果が期待できるから(高級品・有名ブランドのみ)

[4]    単にコストが高くつくから

1は特に説明は不要でしょう。輸出元でいくら安くても、海外からモノを入れるコスト(関税など)や中国国内で流通させる際のコスト(消費税など)がオンされることで、中国の店頭では高くなります。

2は、高く売れるから高い値付けをするという理屈です。中国人は、それだけブランド志向・見栄っ張りということでもあります。

3は、ハロー効果を簡単に説明すれば、高価格=高品質と判断するということです。逆に言えば、値段が安いと、逆に品質が低いのでないかと疑われることになります。だから、ずっと安い中国ブランドの製品が一緒に販売されていても、単価の高い外国ブランド品が売れるのです。それだけ、単価の低い中国ブランドへの不信感が強いということでもあります。

4について、記事ではスターバックスの事例が紹介されています。スターバックスのコーヒー価格が中国で高いのは、座席の多い大きな店舗を好む消費者が多く、家賃が高くなるから、とスターバックス関係者は答えています。外国ブランドには、それだけ高い品質を要求しているということになるかもしれません。

しかし、すべての外国ブランド製品の価格が高いというわけではありません。記事で紹介されているのは、コカコーラ缶。

【コカコーラ缶の中国・アメリカ価格比較】

中国0.46ドル⇔アメリカ1ドル

※コンビニでの価格

飲料など競争の激しい日常品は、売上数量とシェア獲得が第一優先にされるため、価格が低く設定されています。中国のサントリー製ビールが安いのは、このためです。

このように、外国ブランド製品でも、価格設定が異なることがわかります。まとめると、次のようになります。

【価格設定の異なる外国ブランド製品の特徴】

[高い設定]嗜好品、ステータスシンボルとしての役割を果たす高級ブランド

[低い設定]競合ブランドとの競争が激しい日常品、親しみが持たれるブランド

しかし、このような高い価格設定も過去のものになる可能性があります。それは、次のような外部環境の変化が起こっているからです。

【高い値付けが今後難しくする外部環境の変化】

[1]    ネットや海外旅行を通じて、外国との価格比較・海外での購入が可能になること

[2]    価格カルテルや高い価格設定などを取り締まる政府の規制強化

1は消費者の反発であり、2は政府の反発です。スマホの普及などによりネットが日常のものになれば、価格に関する情報が増加します。その情報には海外での価格も含まれるので、中国国内との比較をするわけです。海外の方が安ければ、海外で買えばいいと判断されるかもしれません。しかも、以前に比べれば海外旅行は簡単にできるのです。だからこそ、多くの中国人観光客が、医薬品やヘアケア商品が安く手に入るドラッグストアに来店するのです。

2は、消費主導の経済に転換するための政府の施策。価格が下がることによる個人消費の盛り上がりが期待されています。

このように、中国では高くても売れた外国ブランド製品ですが、この状況も変わりつつあることがわかります。さらに、

外国ブランドのボリュームの大きな低所得者向け市場への参入

景気悪化による低価格志向の高まり

品質が向上した中国製品との競争激化

を考えれば、外国ブランド製品の価格が下がる可能性も極めて高いのではないでしょうか。

思えば日本でも、ハーゲンダッツのアイスクリームはほぼ定価で販売されている時代がありました。しかし、今では国産アイスクリームとの競争激化のためか、特売されていることが多く見受けられます。中国の経済が発展し成熟すれば、同じ現象が起きても不思議ではないのです。したがって、高くても買ってもらえる今こそ、ブランド認知度・ステータスを高める必要があるのです。海外ブランドが、今でもこぞって中国に出店を急ぐ理由が理解できます。

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《今回のヒントのまとめ》

1)  中国で販売される外国製品のうち、ステータスシンボルとして期待される嗜好品は、海外よりも価格が高い。

2)  一方、シェア争いが激しい日常品は、ブランド認知度を高めるために、中国ではより安く販売されている。

3)  海外よりも高い価格に設定される理由として、租税コストや流通コスト高いことや、高くても売れること、ハロー効果への期待、その他コストが高いことが挙げられる。

4)  しかし、ネットや海外旅行で得た情報により、内外価格差を認識する消費者が増加している。また政府も、消費主導の経済への転換を目指して、価格カルテルなど価格設定への規制を強化している。

5)  経済の発展・成熟を通して、価格が下がる確率の方が高いので、高く売れる今こそ、ブランド認知度やステータスを高める努力が必要とされている。

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この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

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ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

編集後記

ドラッグストアに来る中国人観光客を見ると、特売の日を知って来店しているのではないか、と感じるほど、中国人でレジが混んでいる時があります。

そのような情報も、中国で知れ渡っているのかもしれないですね。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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2013/09/09 | アジア ,

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