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【696号】大手小売業にとってネット通販は本当に重要なのか?

 

青空とターゲット

by courtesy of Kevin Dooley

 

◎本日のニュース

1)見出し
After Decades of Toil, Web Sales Remain Small for Many Retailers



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2)要約

大手小売業は、四半期決算発表会などでネット通販の高い成長率や投資拡大を誇示する傾向がある。しかし、全売上に対するネット通販の割合は小さく、さほど重要とは言えない。

 

ネット通販の実態は、証券取引委員会によるヒヤリングから判明した。一方、実態と公開情報との差異が判明した企業は、ネット通販の売上だけ分離するのは誤解を招き、また多様な販売経路で顧客を囲い込むオムニチャネル戦略に沿ったものと主張している。

 

全米のネット通販市場は、今年第二四半期において、小売売上高全体のたった5.8%に過ぎない。ただし、前年同期の5.1%からは拡大している。

 

 

◎キーセンテンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Nearly two decades after the Web revolutionized shopping, many big retailers are still struggling to turn the Internet into a big part of their business.

 

4)キーとなる英文の和訳

ウェブが買い物に革命を起こして約20年が経過する。

しかし、多くの大手小売業は、依然苦労しながらネット通販の割合を売上の大部分にしようと努力している。

 

5)気になる単語・表現

decade 名詞 10年間
struggle to V 他動詞句 ~しようともがく;~しようと努力する

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

SEC(証券取引委員会)が大手小売業のネット通販の実態を調査したのは、大手小売業のネット通販に関する公開情報が過大と判断したからでしょう。そのように判断したのは、ネット通販売上と全小売売上を比較すれば理解できます。

【全米のネット通販市場と全小売市場の比較】

ネット通販市場=全鉱入り市場の約5.8%(前年同期5.1%)

※2013年度第二四半期実績より

たった6%弱の売上割合しかなく、前年からの拡大も微々たるものなのに、過大な期待を持たせるような情報を公開すれば、将来投資家の損失に繋がる恐れがあります。

SECがヒヤリングした企業の投資家への公開情報と実態をまとめると、次のようになります。

【SECのヒヤリングにわかった大手小売業の公開情報と実態の乖離】

[ターゲット社(ディスカウンター)]

1) ネット通販売上は二桁増、モバイルアプリによる売上は3桁増、ネット通販への投資を拡大

2) ネット通販の売上は全売上730億ドルの2%未満

[フィフス&パシフィック社(アパレル雑貨)]

1) ネット通販売上は急速に拡大

2) ケイトスペード(Kate Spade)ではネット通販は全売上の数%のみ、ジューシーカウチャー(Juicy Couture)・ラッキー(Lucky)の割合はさらに小さい

[ウォルマート・ストアーズ社(ディスカウンター)]

1) 今期のネット通販売上は100億ドルを予定、全社のネット通販売上は30%増(第二四半期)、シリコンバレーで200人新規雇用(第二四半期)、ネット通販強化は全社の6大方針の一つ

2) ネット通販売上は、2013年度の全米既存店売上2.4%増と2012年度の1.6%増のうち、0.1~0.2ポイントしか寄与せず

[ペットスマート社(ペット用品)]

1) ネット通販売上は全売上の1%未満

これらをまとめると次のようになります。

【大手小売業のネット通に関する公開情報とその実態】

[公開情報]急成長・投資拡大

[実態]全売上に占める割合はごくわずか

このような差異が生まれるのは、企業にネット通販の強化やその誇示をするインセンティブが働くからです。その要因についてまとめると、次のようになります。

【大手小売業がネット通販強化・誇示をする要因】

[1]    投資家の期待が大きいから

[2]    顧客喪失を回避するため(オムニチャネル戦略)

1について、多くの投資家は、ネット通販の売上成長率を小売業の長期成長に対する指標にしています。実店舗だけでは、成長できないと判断しているのでしょう。

2について、売上割合が小さくても、ネット通販に力を注がなければならない理由があります。それは、ネット通販に力を入れる企業に顧客を奪われるリスクがあるからです。実際、スポーツ用品小売のカベラ社や高級デパートのノードストローム社は、ネット通販の売上拡大に成功しています。

【カベラ・ノードストロームのネット通販実態】

[カベラ]カタログ・ネット通販売上は、小売部門の売上高の約3分の1。

[ノードストローム]ネット通販を含めた通販売上は、全売上の約10.7%

※いずれも昨年度

顧客囲い込みのために採られるのが、オムニチャネル戦略。自社で購入してくれるのであれば、どのような購入ルートを辿(たど)っても気にしないというもの。ネットで注文・決済して、実店舗で受け取るというサービスも、この戦略の一環です。

そして、1・2の背景には、消費者の買物行動の変化があります。消費者が、利便性をより重要視したからに他なりません。利便性で競合に負ければ、昨日までの常連客を失いかねないのです。

このように考えると、大手小売業がネット通販に力を注ぐのは、投資家の興味を引き付けるものであり、また売上を拡大しようというよりも顧客喪失を回避するという、消極的な理由によるものと捉えることができます。

[取り上げた大手小売業のネット通販サイト]

Target Corp. www.target.com/

Wal-Mart Stores Inc. www.walmart.com/

PetSmart Inc. www.petsmart.com/

Jucy Couture www.juicycouture.com/

Kate Spade New York www.katespade.com/

Lucky Brand www.luckybrand.com/

Nordstrom Inc. shop.nordstrom.com/

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《今回のヒントのまとめ》

1)  小売市場の中でネット通販が占める割合は、6%にも満たない。それだけ小さいにも関わらず、大手小売業はネット通販の高い成長率や投資拡大を誇示する。

2)  その理由は、投資家の期待が大きく、またネット通販に力を入れる競合に顧客を奪われないためである。

3)  この背景には、消費者の買物行動の変化がある。利便性をより重視し、利便性の高い購入方法を提示してくれる企業を選好する。

4)  投資家の興味を引き付け、顧客喪失を回避するという消極的な意味合いが強いとも言える。

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編集後記

阪神タイガース、今年こと優勝かもと思っていましたが、それも無さそうです。

2位は間違いないと思われていますが、私はそれも危ういと思っています。

2008年の悪夢がありますからね。

 

 

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