【713号】欧米小売企業が相次いで中国ネット通販市場に進出する理由
by courtesy of Michael Vito
◎本日のニュース
1)見出し
Western Retailers See Online as Ticket to China
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2)要約
欧米の小売企業が、中国で相次ぎ通販サイトをオープンしている。中国のネット通販市場の成長率が高く、市場規模が今年中にアメリカを抜き世界一になり、無視できないからである。
しかし、それだけではない。広大な中国で知名度を向上させるために、通販サイトを活用する。最終的には、実店舗への誘客を目指す。
ただし、デメリットも顕在化している。大きなビジネスチャンスだけに、競争も激しい。欧米小売企業だけでなく、中国国内小売り大手との競争が激化している。また、物流網が複雑で物流費が高くつくことも、通販事業の足かせとなっている。さらに、価格競争が激しく、収益率の悪化に直面する企業が増えている。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
A growing number of Western brands in China are creating online stores to reach more consumers, adopting a formula that Chinese e-commerce company Alibaba Group Holding Ltd. has exploited with much success.
4)キーとなる英文の和訳
中国で通販サイトを開設する欧米ブランドが、増加している。
その目的は、より多くの消費者にリーチするためであり、中国のEC企業であるアリババ・グループホールディングス社に大きな成功をもたらしたやり方を、取り入れたものである。
5)気になる単語・表現
adopt |
他動詞 |
(新しい理論・技術など)を採用する;~を採択する、許可する |
formula |
名詞 |
方策、減速;解決策;秘訣;(儀式などの)式文 |
exploit |
他動詞 |
(資源など)を利用する |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
中国で通販サイトを開設する欧米小売企業が増加しています。
【欧米小売業の中国ネット通販進出事例】
[ファストファッション]インディテックス社(Inditex SA)のザラ(Zara)→昨年終わり頃に開設、ギャップ社(Gap Inc.)のオールド・ネイビー(Old Navy)→来年前半に実店舗とともに開設
[高級ハンドバッグ]コーチ(Coach )→昨年終わり頃に開設
[高級百貨店]ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)→昨年終わり頃に開設
[スポーツ衣料]ケリング社(Kering SA)のプーマ(Puma)→今年8月に開設、NFL→今年10月に開設
[ファッションブランド]ヒューゴボス(Hugo Boss)→今年2月に開設
[アパレルブランド]チェロキー社(Cherokee Inc.)→今年2月に開設
[ホームセンター]ホーム・デポ(Home Depot)→実店舗閉鎖後にアリババTモールに出店
[家電量販店]ベストバイ(Best Buy)→実店舗閉鎖後にTモールに出店
[組み立て玩具]ケネックスブランズ社→8月にTモール出店
昨年からラッシュが続いていることがわかります。このように欧米小売企業が中国ネット通販に注目するのは、その成長率・規模がすさまじく、無視できない市場だからに他なりません。
【急成長する中国ネット通販市場】
[規模]今年にはアメリカを抜く、2015年には5億4000万ドルにまで拡大(アメリカは同年3億4500万ドル)
[成長率]2009年以来平均で年率70%以上の伸び(アメリカは13%)
しかし、市場の成長スピード・規模の大きさだけが、進出理由ではありません。実店舗での販売につなげようという意図もあるのです。
【欧米小売業が中国ネット通販市場に注目する理由】
[1] 市場規模・成長率が凄まじく、無視できない市場だから。
[2] 広大な国土を持つ中国で、認知度を高めやすいから。
[3] 実店舗への集客が期待できるから。
2について、実店舗よりもネット通販の方が、低コストで知名度を高められます。この知名度の高めやすさに注目して、ネット通販を活用する小売企業が多いのです。しかも、ネット通販だけでなく、知名度を高めることで、実店舗への集客につなげようという目的があります。これが3になります。ネット通販でブランドに親しみを持ってもらい、実店舗にも足を運んでもらおうという戦略です。
しかし、大きなビジネスチャンスがある中国ネット通販市場だけに、そう簡単に事は進みません。また、中国のインフラ未整備も、欧米小売企業にとっては大きなハードルとなります。
【中国ネット通販市場のデメリット】
[1] 国内小売企業との競争激化
[2] 物流網の不備による高いコスト
[3] ネット通販ユーザーの強い低価格志向
1について、規模・成長率共に魅力的な中国ネット通販市場に注目するのは、欧米小売企業だけではありません。中国国内の小売業の進出も進んでいるのです。消費者ニーズをより深く知る国内企業との競争は、欧米小売企業にとって大きなハードルとなります。その結果、通販サイトにおける戦略を随時更新せざるを得なくなり、運営コストの高さとなって収益に響きます。例えば、米百貨店のメーシーズ(Macy’s)は、当初通販サイトにてPB商品の販売を計画していました。しかし、消費者の嗜好と合わず、計画の変更を余儀なくされています。
2について、物流インフラの不備により、欧米小売企業は高い物流費に悩むことになります。例えば、ニーマン・マーカスは、通販サイト開設当初は、中国本土の物流倉庫からの出荷を計画していました。しかし、物流コストが高く付くという理由で、今年に倉庫を閉鎖。アメリカからの輸出に切り替えて、効率化を進めています。
3について、中国のネットユーザー1300人調査によると、約半数が、ネット通販の利用理由として値段の安さを一番に挙げています。これほど、ネット通販利用者の低価格志向が強いと、通販サイト間の価格競争が激しくなります。その結果起こるのが、利益率の低下。さらに、中国の経済成長の鈍化は、低価格志向をさらに強めることになり、さらなる価格競争の激化・利益率の低下に悩むことになります。
ネット通販で知名度を上げようにも、価格競争により値崩れを起こしては、ブランド価値の低下になり兼ねません。そこで、通販サイトと実店舗で販売する商品を別にするなど工夫をしています。また、実店舗では別の商品を取り扱うことによって、ネット通販利用者に実店舗への来店を促すことができます。
このように、欧米小売企業は、ネット通販を単なる販売チャネルのみならず広告宣伝手段としても活用しているのですが、次のようにまとめることも出来ます。
【欧米小売企業にとってのネット通販と実店舗】
[ネット通販]利便性の高い店舗・手頃な価格帯→利益率の低い集客商品
[実店舗]接客サービスのある店舗・正規料金→利益率の高い収益商品
ネット通販は商品の販売をするも、その目的は実店舗での集客であるため、大きな利益を求めない。利益は、実店舗での販売を通じて獲得する。欧米小売企業は、中国にてこのような戦略を描いていることがわかります。
日本のネット通販は、中国ほど価格競争が激しくないものの、実店舗よりも価格で選ぶ人が多いのは事実。ならば中国のように、ネット通販を集客商品、実店舗を収益商品とする小売企業が表れても不思議ではありません。
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《今回のヒントのまとめ》
1) 欧米小売企業の中国ネット通販市場への進出が増加するのは、その魅力的な成長率・規模だけが理由ではない。
2) ネット通販を利用することで、広い国土の中国で知名度を高めやすくなり、実店舗の集客につなげることができるからである。
3) 一方、国内企業との競争激化や、物流インフラの不備による高い物流コスト、激しい価格競争により、低い収益率を余儀なくされている。これでは、知名度が高まっても、値崩れが起こることになり、本末転倒である。
4) そこで、通販商品と実店舗販売商品を別にし、値崩れを防ぐとともに、実店舗への来店動機を作ろうと努力している。
5) これは、ネット通販を集客商品、実店舗を収益商品と位置づけたこととなり、価格競争の激しい日本のネット通販でも、同様のことが起こっても不思議ではない。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
先日、こちらの格安ワインを飲みました。
実は、カルディの特売にて500円で購入。
格安ピノ・ノワールは失敗することが多いのですが、これが意外に美味しかったんです。
カリフォルニアだったからかな。
今でも一部店舗で販売されているので、熟したピノを飲みたい人は是非。
ちなみに神戸の店舗では598円で販売されていました。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
楽天と巨人の日本シリーズ、本当に面白いですね。
ほぼ互角の戦い。
それに比べて、広島にボロ負けした阪神は、何だったのでしょうか。
2位になったことはもう忘れて、猛省が必要です。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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