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【714号】産業構造から考えた、GMの値引き抑制策の成否

GM傘下のブランド

by courtesy of  Dave S

 

◎本日のニュース

1)見出し 
GM Tries to Curb Discounting

 

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2)要約

ゼネラル・モーターズ社(GM)は、ピックアップトラックの新型モデルの販売で、大幅な値引きをやめると表明した。従来の値引き販売からの方針転換であり、営業利益率向上を目指した施策である。

 

しかし、この方針転換に対し、一部のディーラーは、来場者が減少すると反発。また競合するフォードは、2013年型モデルを大幅な値引きで処分販売しており、GM系ディーラーに悪影響が及んでいる。

 

 

これに対しGMは、価格よりも性能やサービス面の訴求で対応。しかし、いずれ値引き依存に戻るというアナリストの声もある。

 

◎キーセンテンスとその翻訳

3)キーとなる英文

After years of grooming customers to expect a few thousand dollars off sticker prices on even its latest models, General Motors Co. said it is shifting course and promising to shun lavish discounts when it comes to peddling its newest pickup trucks.

 

4)キーとなる英文の和訳

長年、最新モデルでさえ、表示価格より数千ドルの値引きを顧客に期待させてきた。

しかしゼネラル・モーターズ社は、その方針を転換し、新型ピックアップトラックの販売では、大きな値引きを避けられると期待を寄せている。

 

5)気になる単語・表現

groom

他動詞

~を準備させる、仕込む

sticker price

名詞

表示価格

promise to V

他動詞

~を期待してする

shun

他動詞

~を避ける

lavish

形容詞

豊富な

peddle

他動詞

~を売り歩く

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

ゼネラル・モーターズ社(GM)が、新型ピックアップトラックの販売で、価格戦略を大きく転換するようです。従来は最新モデルでさえ大幅値引きを行っていましたが、新型車から大きな値引きを止めるといいます。「止める」というのは少し言い過ぎで、「大幅値引きをしなくても、売れる」という認識という方が正しいかもしれません。これだけGMが強気になれるのは、アメリカ自動車市場が拡大しているからです。

 

【アメリカ自動車市場とGMの平均単価】

[市場全体]10月販売台数(乗用車と小型トラック)は、前年同期比14%増の121万台。前月比で9.5%増。

[GMの平均単価]10月は1台あたり34,672ドルで、歴史的な高値。一方フォードは、33,986ドル。

 

単に市場が拡大しているならば、値引き販売による台数増の可能性もあります。しかし、GM車の平均単価も歴史的な高値であり、高くても売れている状況がわかるかと思います。高くても売れるから、値引きを抑制できるとGMは考えたのでしょう。

 

また、GMには、利益率の改善という目標があり、値引き抑制はこの目標達成のための施策でもあります。今後5年ほどまでに、営業利益率を競合するフォード並の10%まで引き上げるという目標が、GMにはあります。直近第三四半期の営業利益率は9.3%であり、前年同期の7.7%よりも改善しています。この要因は、北米市場のトラック・新型車の単価向上。つまり、値引きをさほどしなかったからこそ、営業利益率が改善しており、この路線を貫くというのが、今回の方針転換であります。

 

さらに値引きをしないことで、下取り価格の下落を回避でき、顧客にとっても結果的にメリットがあると、GMは考えます。

 

GMが値引き抑制に動く理由をまとめると、次のようになります。

 

【GMが値引き抑制に動く理由】

[1]    営業利益率10%を達成するため

[2]    高くても売れる市場環境にあるため

[3]    下取り価格の維持で顧客にもメリットがあるため

 

値下げを抑制すれば、当然販売台数が減少する恐れがあります。GM側は少々のシェア縮小をやむを得ないと考えますが、販売するディーラーはそのまま受け入れられるわけではありません。GM車がさほど値引きされないことが消費者にも行き渡り、来店者が減少するからです。さらに競合の動きも、ディーラーの反発に油を注ぐことになります。

 

競合のフォードは、2014年モデル発売を控え、2013年モデルの在庫処分に力を入れています。つまり、大幅値引きをしているのです。この対照的な価格戦略により、GM系ディーラーは販売に苦しむことになり、GMへの値引き要請が強まることになります。

 

これに対しGMが行ったのは、値引きとは一線を画すもの。つまり、静寂性や燃費などの性能や、2年間無料点検などのサービス面を訴求することで、フォードとの価格競争を回避しているのです。

 

このGMの価格戦略に対し、証券アナリストの意見は否定的。つまり、長続きせず、いずれ値引き販売に戻ると考えます。その理由をまとめると、次のようになります。

 

【GMの値引き抑制策に対するアナリストの反論】

[1]    フォードの値引き販売で、GMのシェアが大きく低下する恐れがあるため。

[2]    市場拡大という好機に目が眩み、シェア拡大を優先する可能性があるため。

 

両者とも、GMはシェア縮小に耐えられないという考えが元にあります。自動車産業は装置産業であるゆえに、シェア縮小により製造コストが大幅に上昇し、収益が大きく悪化する恐れがあるからです。さらに、レクサスなどの高級車ほど、GM車にブランド力がないのも事実。そのため、価格設定により販売数量が大きく変化する確率が高いのです。実際、2006年に販促金の縮小に動いたフォードは、一年で断念しています。

 

全米自動車市場は、2009年の底から回復に向かっています。しかしこのV字回復がいつまでも続く保証はどこにもありません。装置産業という宿命を背負い、大衆車をメインに扱うGMは、値引き抑制策によりいずれシェア低下に直面し、値引きを活用した販売に戻っていくのではないでしょうか。逆に、装置産業のような規模の経済が働きにくい産業ならば、値引きに依存しない強気の価格設定でも、売上を拡大できると考えることもできます。

 

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《今回のヒントのまとめ》

1)  GMが新型ピックアップトラックの販売で値引き抑制に動くには、営業利益率の改善という目標があるだけでなく、値下げしなくても売れる環境にあると判断したからである。また、値下げ抑制により下取り価格も維持でき、顧客にもメリットがあると考える。

2)  しかし、アナリストはこの価格戦略は長続きしないと考える。その理由は、フォードの値引き攻勢で、GMのシェアがいずれ大きく低下する恐れがあるからである。また、市場拡大の好機に、シェア拡大を優先する可能性があるからである。

3)  アナリストの意見の根本には、装置産業という自動車産業の宿命がある。シェアの大幅低下で販売数量が減少すれば、製造コストが上昇し、収益が大幅に悪化してしまう。

4)  また、高級車のようにブランド力がさほど高くないGM車は、価格設定により販売数量が大きく変化する危険性が高い。

5)  装置産業であり大衆車をメインに扱うGMは、シェア縮小による収益悪化にいずれ直面する可能性が高い。

 

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7)おすすめ商品・サービス 

◎最近見つけたいいもの

先日、こちらの格安ワインを飲みました。

実は、カルディの特売にて500円で購入。

格安ピノ・ノワールは失敗することが多いのですが、これが意外に美味しかったんです。

カリフォルニアだったからかな。

今でも一部店舗で販売されているので、熟したピノを飲みたい人は是非。

ちなみに神戸の店舗では598円で販売されていました。

フォレストヴィル ピノ・ノワール

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

アメリカの自動車市場は好調のようで、日本メーカーの車も売れているようです。

その中で、販売伸びの小さいのが日産。

業績も下方修正しましたね。

株式を持っているだけに気になるところです。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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