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【948号】ホテル業界で世界的にM&Aが増加している理由とは?

Marriot Sand Sculpture

◎本日のニュース

1)見出し

Hotels Ramp Up Deal Making as an Antidote to Airbnb

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2)要約

2015年は、ホテル業界でM&Aの嵐が吹き荒れた。その背景には、民泊仲介会社やネット旅行代理店の台頭がある。

ホ テル運営者が規模の拡大を目指すのは、販売者である代理店との交渉力を高めるためである。ネット旅行代理店を通じて客席を販売することにより、手数料が発 生するだけではなく、旅行代理店はM&Aを通じてその影響力を高めてきた。一方で、ホテルは利益を吐き出してきたことになる。

民泊仲介のエアビーアンドビーの拡大も無視できない。アメリカでは、そのシェアが5%を超え、ホテル上位5社に次ぐまでの規模の到達している。

3)キーとなる英文

Hotel companies are ramping up their merger activity, hoping a broader reach will help them regain ground lost to upstart home-rental companies and online travel agents.

4)キーとなる英文の和訳

ホテル企業は、M&Aを活発化している。

それには、規模を拡大することで、創業間もない民泊企業やネット旅行代理店に奪われた影響力を回復する狙いがある。

5)気になる単語・表現

antidote 名詞 解毒剤;解決方法、対策
lose ground to 他動詞句 ~に屈する;~に譲歩する
boast 他動詞 ~を自慢する
extract 他動詞 ~を(無理に)引き出す;~を抽出する

(今回ピックアップ英単語)

おやすみ

6)ビジネスのヒント

2015年は、世界的にホテル業界のM&Aが多い年でした。一番は、やはりマリオットによるスターウッドの買収でしょう。

【ホテル業界のM&A事例】

  1. コミューン・ホテルズ&リゾーツとデスティネーション・ホテルズ→最新のM&A事例。最大の独立系ブティックホテルの誕生。
  2. アコー社(フランス)とFRHI・ホールディングス社(カナダ)→国境をまたいだ事例。
  3. カールソンの身売り・M&A模索→今後の見込み
  4. マリオット・インターナショナル社とスターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイド社→122億ドルの最大の案件。世界に100万室・30ブランド以上を持つ世界最大のホテルチェーンの誕生。

特 に業界でサプライズだったのは、4のマリオットによるスターウッドの買収。というのも、マリオットは、大規模なM&Aには消極的だったからです。 そのマリオットによるこの大型M&Aが、業界に数多くのM&Aを引き起こしたというのが、実情のようです。

そこで、ホテル業界でM&Aがブームになった理由をまとめると、次のようになります。

【ホテル業界でM&Aが増加した要因】

  1. 勢力を拡大するネット旅行代理店との交渉力を強化し、利益率を向上させるため
  2. 民泊仲介のエアビーアンドビーの拡大が無視できなくなったため
  3. ビジネスサイクルが下降中のため、自社だけの成長が難しくなったため

1 について、エクスペディアやブッキングドットコムなどのネット旅行代理店を介して客室を販売すれば、約12~15%の手数料を支払わなければなりません。 ネット旅行代理店の拡大により、この手数料による利益の流出が無視できなくなりました。さらに、ネット旅行代理店は、M&Aを通じて規模を拡大 し、より有利(手数料率の高い)な条件を獲得します。つまり、客室販売による利益が、ホテル運営者からネット旅行代理店に移行しているのです。もともと、 客室数という制限のあるビジネスだけに、収益拡大のためには、一客室あたりの利益率を拡大しなければなりません。そのためには交渉力を高める必要があるの で、規模拡大を目指したM&Aが増えているのです。

2について、民泊を仲介するエアビーアンドビーの存在 が、無視できないぐらいに拡大しました。2016年の全米の総客室供給数におけるシェアは、約5.4%の見込み。このシェアは、ホテル業界ではかなり大き く、5%を超えるシェアを持つホテル運営者は5社しかないようです。2015年のシェアが3.6%であることを考えると、今後さらにシェアを拡大すること が見込まれます。これに対抗するには、規模の拡大が必要であり、M&Aが増えるのです。

3について、記事に よると、世界的にホテル業界は今ダウントレンドとのこと。長年客室単価を高めて収益を拡大してきたものの、今は世界の経済成長力が弱く、さらにアメリカで は新規の客室供給量が増えているため、競争は激化しています。自社だけのオーガニックな成長が難しい環境なのです。

さらに、規模拡大により、次のようなメリットがあります。

【M&Aによる規模拡大のメリット(規模拡大を目指す理由)】

  1. ブランド認知度の向上による新規顧客の獲得強化
  2. ロイヤルティプログラム拡大による、既存顧客の囲い込み強化
  3. マーケティング予算拡大による新規顧客の獲得強化
  4. ポートフォリオ拡大による販売チャンスロスの最小化
  5. 客室の自社販売比率向上による利益率の改善

1~4は売上面でのメリット、5は利益面でのメリットになります。

1 は、知名度の高いグループに入ることで、これまでブランドをよく理解していなかった顧客への販売が期待できます。2について、グループのロイヤルティプロ グラムに参加することで、そのグループの顧客に対して、より豊富なブランドを提案できます。これは、囲い込みにつながります。

3について、規模の拡大により、世界的なプロモーションが可能になります。新規顧客の獲得につながります。

4について、高級ホテルブランドや格安ブランドなど豊富な業態を取り込むことにより、より多くの客層・宿泊機会を獲得できます。

5 について、これが一番重要なのですが、巨大ホテル企業のネット販売に参加できることで、ネット旅行代理店へ支払っていた手数料を減らすことができます。巨 大ホテル企業のシステム利用料は掛かりますが、ネット旅行代理店への手数料率(12~15%)よりも低いことでしょう。利益率の向上が期待できます。

興 味深いのは、M&Aを引き起こした要因に、ネット旅行代理店との交渉力回復がある点。要は、ホテルビジネスのバリューチェーンにおいて、エンド ユーザーと直接取引する販売者のパワーが拡大しており、一方でホテル運営者が弱体化してきたので、これを何とかしたいから、M&Aによる規模拡大 に走ったということです。

規模拡大による交渉力の強化により、ネット旅行代理店に支払う手数料率をより低くするだけ ではありません。外部に依存していたエンドユーザーへの販売を、自社で行う(つまり直販する)ことにより、自社で支配できるバリューチェーンを拡大しよう としているのです。ホテル市場そのものの拡大が期待できないなら、その市場で生まれる利益をより多く獲得しようという発想です。逆に、バリューチェーンに 手を付けざるを得ないほど、市場が成熟しているのかもしれません。

新規事業を考える場合、その市場のバリューチェーンでどこまでを自社で取り込むかという考え方は、とても有効です。

(記事で取り上げられたホテル企業)

Commune Hotels & Resorts

Destination Hotels

Accor

FRHI

Marriott International

Starwood Hotels & Resorts Worldwide

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ホテル業界でM&Aが増加している要因として、勢力を拡大するネット旅行代理店への手数料支払いの増大、エアビーアンドビーの勢力拡大、ビジネスサイクルのダウントレンドが挙げられる。
  2. 市場の拡大が見込めない中で、利益率が低下し、競争が激化しているのが、ホテル業界の実情である。
  3. M&A による規模の拡大によるメリットは、ブランド認知度の向上、ロイヤルティプログラム拡大による顧客囲い込みの強化、マーケティングの規模拡大による顧客獲 得、ブランドポートフォリオ拡大による販売チャンスロスの最小化、客室の直販拡大による利益率の向上である。
  4. ホテルビジネスのバリューチェーンにおいて、旅行代理店など販売者の取り分が大きくなり、ホテル運営者の利益が縮小したことが、M&Aを引き起こしたと言えるだろう。
  5. バリューチェーンにおいて、自社でどこまで取り込むかという発想は、新規ビジネス開発において役立つだろう。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

昨年のふるさと納税の御礼品が続々と到着しています。

最近食べたのが、福岡県嘉麻市の赤崎牛。

赤身テーキをいただいたのですが、大好きな赤身が多いわりに、柔らかくてとてもおいしかったです。

冷蔵なので新鮮なのも、嬉しいところ。

また今年もお願いしたいですね。

福岡県嘉麻市 Oセット赤崎牛・赤身ステーキ

楽天市場では販売されていませんが、「赤身ステーキ」ならありますよ。

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

編集後記

甘利大臣、ついにというかやっぱり辞任しましたね。

TPPがやっと調印にまでこぎつけたのに、残念極まりないでしょう。

あれだけの交渉力、国益にとってもマイナスでしょうね。

でも、あれはやってはいけないこと。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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今回は私が恩返しします!

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