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【1041号】米P&Gが取った、ミレニアル世代に柔軟剤を買ってもらう方法とは?

Downy Fabric Softener, 1980's

 

◎本日のニュース

1)見出し

Millennials Are Fine Without Fabric Softener; P&G Looks to Fix That

 

 

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2)要約

洗濯後の衣類を心地よくしてくれる柔軟剤の売上が、10年以上に渡り減少している。この背景には、洗濯機や洗剤の性能向上や柔軟剤を不要とする衣類の登場などがある。

 

柔軟剤シェアトップのP&G社は、それ以上に大きな要因として、ミレニアル世代が柔軟剤の効果を知らないことを重視した。P&Gは売上が大きく落ち込んだ柔軟剤のテコ入れ策として、ミレニアル世代への販促を始めている。

 

ただし、従来の顧客への売り込みに集中すべきとの声もある。また、洗濯用消耗品が節約対象になりがちなため、売上回復は難しいと考える向きもある。

 

3)キーとなる英文

Sales of the product—an often sweetly scented liquid designed to make clothes feel better after a wash—have been declining for more than a decade, hurt by improvements in modern washing machines and laundry detergents, as well as heartier fabrics able to withstand more washings without additives.

 

4)キーとなる英文の和訳

浅学後に衣類を心地良くしてくれる目的で作られた、多くの場合甘い香りのする製品の売上は、10年以上も減少し続けている。

その要因は、何も追加しなくても多くの洗濯回数に耐えられる強い布地の登場と、現代の洗濯機や洗濯用洗剤の進化によるものである。

 

5)気になる単語・表現

fabric 名詞 布地;織物
hearty 形容詞 頑強な
coveted 形容詞 みんなが欲しがる
rough 形容詞 ざらざらした
scratchy 形容詞 ざらざらした
moisture 名詞 水分;湿気
trap 他動詞 ~を閉じ込める
deal 他動詞 ~を加える
footage 名詞 一連の画面(シーン);(フィートで測った)長さ、距離
spot 名詞 テレビ番組の短い広告
havoc 名詞 大破壊
woo 他動詞 ~にせがむ
weak 他動詞 (復讐・危害など)をする
pararell 名詞 相等物
regimen 名詞 養生規則

 

(特に覚えておきたい単語)

【covet】

(英英)

want something very much, especially something that belongs to somebody else

【コメント】

「~をむやみに欲しいと思う」という意味ですが、対象が「他人のもの」なので英文に使用する時は、要注意。

 

6)ビジネスのヒント

米プロクター・アンド・ギャンブル社(P&G)が、柔軟剤の売上減少に直面しているようです。それも減少が単年ではなく、10年以上にも渡るので大きな問題。さらに、P&Gだけの問題ではなく、柔軟剤市場全体が減少トレンドに陥っているので、相等厄介な問題なようです。

 

柔軟剤市場が10年以上も縮小している要因をまとめると、次のようになります。

 

【柔軟剤市場の縮小要因】

  1. 洗濯機・洗濯用洗剤の性能向上により、柔軟剤が不要になったから
  2. 一部衣類の強度が増し、柔軟剤を使わなくても衣類の劣化がしにくくなったから
  3. スポーツ衣類の多くが、柔軟剤の不使用を勧めているから
  4. ミレニアル世代を中心に柔軟剤の機能・目的を知らないから
  5. 柔軟剤にも含まれる化学品の使用を減らそうとする消費者が増えているから

 

1・2は、洗濯に関係する商品の機能向上が、柔軟剤使用の必要性を低下させているということです。さらに、3は柔軟剤の不使用を勧めているから、柔軟剤市場にとっては逆風になります。スポーツ衣類を衣類の機能向上と考えれば、1・2・3は、柔軟剤に関係する商品の機能向上が、柔軟剤の需要にマイナスの影響を与えたということになります。外部環境の変化ですね。

 

一方で4・5は消費者の変化。4は、ミレニアル世代には、柔軟剤を使うとどういうベネフィット(≒メリット)があるのかがわかっていないということです。つまり、従来の宣伝広告手法では、メッセージがミレニアル世代に届いていないということになります。5は、消費者ニーズの変化になります。家庭で使う化学品の使用量を減らそうという動きが、ミレニアル世代や環境重視の消費者に広がっているようです。これらも、化学品を使っている(または使っているイメージの強い)柔軟剤の売上には、マイナスに働きます。

 

記事で紹介されている柔軟剤市場とP&Gの柔軟剤売上のデータは、以下の通り。

 

【縮小を続ける柔軟剤市場】

*市場全体:10年以上減少が継続、15%減(2015年の2007年比較)

*P&Gのダウニー:10年以上減少が継続、26%減(同期間)

 

ダウニーは、P&Gの柔軟剤ブランドで市場のトップシェアブランド。ダウニーの売上減少率は、市場全体よりも大きく、市場縮小の影響をモロに受けていることになります。通常、シェアトップのブランドは市場が低迷・縮小しても、2位以下のブランドよりも影響が少ないはず。しかし、ダウニーが市場全体よりも大きく落ち込んでいるということは、ダウニーからの顧客離れが進んでいるということに他なりません。

 

そこで、P&Gはミレニアル世代へのマーケティングに注力することにしました。その理由は、ミレニアル世代の多くは、一人暮らしまたは家族を持ち始めており、初めて洗濯習慣を形成するからです。つまり、まだどのブランドに対してもロイヤルティを持ってない、未開拓市場だったのです。実際、先述した柔軟剤市場の縮小要因3にあるように、ミレニアル世代の多くは、柔軟剤の機能・目的さえ知りません。どのブランドにも染まっていない、まさに未開拓市場なのです。

 

P&Gはミレニアル世代対策として、次のようなマーケティング方法を採用しています。

 

【P&Gが採用したミレニアル世代向けマーケティング戦術】

  1. 柔軟剤を「衣料用コンディショナー」と呼ぶことで、ヘアコンディショナーに慣れたミレニアル世代にわかりやすく伝える。
  2. 衣類をより長く着用できるという機能性を訴求
  3. CMにて、柔軟剤無しの洗濯がいかに衣類を傷めているかを説明

 

1は、イメージ戦略です。中身は同じでも、柔軟剤を「衣料用コンディショナー」と呼ぶことで、ヘアコンディショナーをほぼ毎日使うミレニアル世代にとって、より身近な存在になります。

 

2は、ベネフィットの伝達になります。節約志向の強いミニレアル世代に、節約につながる機能性を強調することで、興味を掻き立て、購買意欲を作ることが出来ます。

 

3もベネフィットの伝達。ゴープロカメラを使って、洗濯時の洗濯機の中を撮影。その動画で、柔軟剤を使用しない洗濯がいかに衣類を傷めているかを説明しています。柔軟剤の良さ(ベネフィット)を、わかりやすく説明しているのです。

 

ただし、P&Gの「ミレニアル世代ファースト」の方法に対して、次のような疑問・反論もあるようです。

 

【P&Gのミレニアル世代集中戦略に対する反論】

  1. より製品を熟知した従来顧客の奪還に集中した方がいいのではないか?
  2. 節約対象になっている洗濯関連品の支出を増やすことはそもそも難しいのではないか?

 

1は、柔軟剤市場縮小要因4への対策になるのでしょう。化学品に対してノーという消費者が増えているならば、化学品の不使用または使用量を減らした商品を開発すれば、その消費者ニーズの変化に対応できるからです。

 

ただし、2にあるように、元顧客・ミレニアル世代も含めて、柔軟剤や洗濯用洗剤など洗濯関連品は節約対象に入っています。たとえ所得が向上しても、支出増は見込めないと考えられます。

 

【注目点】

  1. 自分で判断する消費を増やしているミレニアル世代は新市場である
  2. 成熟市場でも、顧客セグメント分析を緻密にすれば、成長可能である
  3. イメージの良さ・わかりやすさを訴求することで、売上不振商品でも売上拡大は可能である

 

1について、ミレニアル世代は、自分で判断する消費を増やしています。今回取り上げたのは、洗濯用商品。柔軟剤もこれに含まれ、うまくブランドロイヤルティを形成できれば、将来顧客になる可能性を秘めているのです。だからこそ、消費財メーカーや小売企業は、ミレニアル世代への販促・販売に力を入れているのです。

 

2について、人口減少の続く日本でも、セグメントを緻密に分析すれば、成長市場を見出すことは可能です。例えば、人口の増えるシニア市場や、財布の数が増える子供市場です。

 

3について、売れないのは、単にイメージが良くないだけかもしれません。ダウニーは、その対策として、「柔軟剤=衣類用コンディショナー」と名付けました。どう定義し直すかによって、製品(ブランド)イメージは大きく変わるのです。(まだこのイメージ戦略の成否はわかりませんが)機能訴求も同じ。特に、コスパを強く意識する世代にとっては、機能性を訴求することは高い効果が期待できます。

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. P&Gが売上減少の続く柔軟剤の打開策として取ったのは、イメージ戦略と機能性訴求である。特に、機能性では、洗濯機内を動画撮影することで、わかりやすく説明している。
  2. このターゲットは、ミレニアル世代。ミレニアル世代をターゲットにしたのは、洗濯習慣を形成し始めたばかりであり、どのブランドに対してもロイヤルティを持たない、開拓余地のあるセグメントだからである。
  3. 柔軟剤市場が縮小したのは、洗濯機・洗濯用洗剤・衣類の機能が向上したからである。このような外部環境の変化への対策は、少ない。
  4. 一方で、消費者ニーズの変化などは、対策を取りやすい。
  5. 成熟した柔軟剤市場でミレニアル世代が新規開拓の余地があるように、成熟市場でも緻密にセグメント分析をすれば、成長可能である。また、イメージ戦略・機能性訴求により、売上不振商品の売上拡大は見込める。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

まだ飲んでいないですが、金麦にも琥珀色の商品が登場したようです。

サークルKサンクスの楽天ポイントクーポンで入手しました。(確か80ポイントほど)

麦とホップの琥珀商品は、以前飲んだことがありますが、結構イケました。

金麦はどうなのでしょうか。

 

やっと飲みました。

香ばしい味で、美味しかったです。

ただ、毎日飲みたいというよりも、週末向けですね。

そう多量に飲めるものでもなく、そもそもそういう商品ではないでしょう。

 

金麦 琥珀のくつろぎ

 

楽天市場でも販売しています。

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

クリスマスイブですね。

1年で一番好きな日でありますが、今年はいろんなことを先送りしていますので、なかなか心が落ち着きません。

大掃除も越年の懸念が出てきました。

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

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