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【1101号】大手食品ブランドの販売苦戦もネットのせい?

Campbells

 

 

◎本日のニュース

1)見出し

So Long, Hamburger Helper: America’s Venerable Food Brands Are Struggling

 

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

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2)要約

アメリカで長年親しまれてきた大手食品ブランドが、売上不振に直面している。その要因は、有機・ナチュラルが特徴の中小ブランドと割安なプライベートブランド(PB)商品に顧客を奪われているからである。

 

また、元々大手食品ブランドは、安定した収益を稼いでくれる商材ゆえに、外部環境の変化への対応が遅れた点も、現在苦戦する要因である。大企業ゆえに、意思決定も決して早くはない。

 

このような苦境への対策として、低収益部門の売却・急成長ブランドの買収などM&Aが活発化している。さらに、食関連のスタートアップに直接投資する動きもある。

 

3)キーとなる英文

Today, these giants are struggling with competition that is corroding business from both ends. High-end consumers are shifting toward fresher items with fewer processed ingredients while cost-conscious shoppers are buying inexpensive store brands.

 

4)キーとなる英文の和訳

現在では、これら巨大ブランドが直面する競合は、高低両極の商品であり、シェアが侵食されている。

ハイエンドの消費者は、加工度の低い原材料を使った新鮮な食材にシフトし、一方節約志向の高い消費者は、低価格のストアブランドを購入している。

 

5)気になる単語・表現

mess 他動詞 ~を散らかす
corrode 他動詞 ~を腐食させる
spot 他動詞 ~を見つける
a bout of 名詞 一時期
soul searching 名詞 徹底的自己分析
venerable 形容詞 尊敬すべき
confectionery 名詞 菓子類
plight 名詞 (悪い)状態
antithesis 名詞 正反対
agility 名詞 軽快さ
perception 名詞 知覚
prominently 副詞 目立って
standby 名詞 代替物
fare 自動詞 成り行く
robust 形容詞 しっかりした;活発な
inertia 名詞 不活発;惰性
infant 名詞 幼児

 

(特に覚えておきたい単語)

【venerable】

(英英) venerable people or things deserve respect because they are old, important, wise, etc.

(和英)

(人が)(高齢・人徳・高位・威厳などで)尊敬すべき、尊い、立派な;(事物・場所・建物などが)(宗教的・歴史的連想を伴い)尊敬すべき、由緒ある

 

(コメント)

司祭や遺跡など、宗教・歴史的な人・事を修飾することが多い。

 

6)ビジネスのヒント

要約だけみると、大手食品ブランドの苦戦とネットは全く関係ないようですが、実は大きく関係しているのです。直接的というよりも、間接的ですが。

 

大手食品ブランドの苦戦は、何度かメルマガで取り上げましたが、高級部門と低価格部門の両極に市場を侵食されています。さらに、このような外部環境のみならず、内部環境にも要因があるようです。

 

【大手食品ブランドが苦戦する要因】

  • 消費者のナチュラル・ヘルシー志向の高まりに、中小ブランドに市場を奪われているから。
  • 節約志向の高い消費者は、より低価格のPB商品にシフトしているから。
  • 巨大企業ゆえに、全般に意思決定が遅く、外部環境の変化に迅速に対応できないから。
  • ネット・SNSの拡大により、巨大資本を背景に維持してきた参入障壁が機能しなくなったから

 

1について、何度もメルマガでも取り上げていますが、大手食品ブランドは、消費者のナチュラル・ヘルシー志向の高まりにより、敬遠される対象になってしまいました。一方で、この嗜好の変化を読み取った中小ブランドは、大手ブランドのシェアを侵食するわけです。

 

2について、一方で節約志向の高い消費者は、小売ブランドのPB商品にシフトします。その理由は、低価格な割に、美味しいから。もう、安かろう・悪かろうの時代ではありません。

 

3について、1・2の外部環境の変化に対し、組織の大きな大手食品ブランドは、迅速に対応できません。それは、意思決定に時間が掛かるから。日本で言えば、何人もの判子をもらわないと、何も決められないのでしょう。効率重視のアメリカ企業でも、組織が大きくなると、保守的になり意思決定に時間が掛かるのです。

 

4について、やっとネットが出てきました。ネット通販・SNSの普及は、大手企業にとっては逆風のようです。というのも、これまでコストの高いテレビCMに資金を投じることで、ブランドの認知度を高めてきました。そして、多額の販促費を掛けて、小売の売場(棚)を獲得するのです。このような多額のコストが掛かることは、中小企業にはできず、巨大資本の大手食品ブランドだからできること。これが参入障壁となり、食品市場を牛耳ってきたのです。

しかし、ネット通販・SNSの普及は、この参入障壁を崩します。通販サイトには、売場に制限はありません。増やそうと思えば無限に掲載商品を増やせるのです。だから、小売側は売れそうだと思えば、企業規模に関わらずどんどん売場に並べます。大手食品ブランドが巨額の販促費で守ってきた売場という概念自体がないのです。さらに、SNSの普及は、マーケティングコストを極限にまで下げています。つまり、ツイッターやフェイスブックなど無料のSNSを使えば、無料で商品紹介ができるわけです。一方で、コストの高いテレビCMの効果は薄れています。ここでも、大手食品ブランドの参入障壁が壊れているのです。

 

現状は、このように苦戦していますが、これまではウハウハの状態でした。それは、大手食品ブランドには勝利の方程式があるからです。

 

【大手食品ブランドの勝利の方程式】

  • 2年ほどの長期間を掛けて、売れる商品を開発。
  • 多額の広告費を投じて、認知度を高める。
  • 巨額の販促費を投じて、小売の売場を確保する。
  • リピート率・購入頻度が高いゆえに、安定した収益を享受する。

 

1でも、研究開発費において、巨大資本が味方します。また、現在マイナス要素でしかない保存料・人工色素は、これまでは食中毒を抑え、コストも下げる原材料として、プラスに考えられてきました。これも、大手食品ブランドには追い風となります。

 

消費者の嗜好の変化を時系列で並べると、次のようになります。

 

(1900年代~1980年代) 食中毒・安さに寄与する保存料・人工色素は、好まれていた。→大手食品ブランドのシェア拡大

(1990年代) ヘルシー志向の高まりにより、ナチュラル・有機の食品が売れるようになる。→中小ブランドの台頭

(2005年頃から)大手小売チェーンが、ナチュラル・有機が特徴の中小ブランドを販売し始める。

(2007年の金融危機から)節約志向の高まりにより、低価格のPB商品の人気拡大。

 

PB商品の人気拡大の背景には、低価格だけではなくヘルシーなPBが登場したこともあるようです。単に安いだけではなく、ヘルシー志向にも対応しているからこそ、コスパの高い食品としてシェアを伸ばしたのです。

 

実際、大手食品・飲料ブランドの苦戦ぶりは、次のデータからも読み取れます。

 

【データから見た大手食品・飲料ブランド】

  • 大手25社の全米シェア:66%(2012年)→63%(2016年)
  • 大手25社の売上成長率:年2%(2012年から2016年)

 

1について、ダウンはたったの3ポイントですが、収益へのインパクトは相当大きいようです。2について、一方でヘルシー志向の高まりに乗じた中小ブランドは、同期間の年率成長率は6%に上っています。

 

このような苦境に直面することで、大手食品ブランドも策を講じています。品質向上とM&A・投資の拡大です。

 

【大手食品ブランドのシェア奪還策】

  • PB商品対策として、食味の改良・ヘルシーメリットの訴求で、付加価値を高める。
  • 主流ではないブランド・低収益事業の売却→高成長事業への選択と集中(ネスレ・コナグラフーズ・ユニリーバ)
  • 商品開発期間の短縮化(コナグラフーズ)
  • 急成長ブランドの買収(キャンベル、ゼネラルフーズ、ダノン)
  • 食のスタートアップへの直接投資(ケロッグ、ゼネラルフーズ)

 

特徴的なのは、自社ですべて解決するのではなく、企業買収を含めて外部企業の力を活用しているという点です。ある意味、保守的・意思決定の弱さという弱点を自覚したゆえの対策とも言えます。

 

ネットの普及による影響をまとめると、次のようになります。

 

【ネットも逆風になった大手食品ブランド】

  • SNSの普及により、広告コストが下がり、中小ブランドでも認知度を高めやすくなったから。
  • ネット通販市場の拡大により、食品を通販サイトで購入する人が増え、さらに魅力的さえあれば、中小ブランドでも売場に並びやすくなった。

 

2について、ネット通販市場の拡大は、大手食品ブランド売場を押さえた実店舗小売にとって逆風でしかありません。というのも、これまで実店舗で購入していた消費者の一部が、ネットで購入するようになるからです。そして、売場を確保していた大手食品ブランドにとっても、逆風でしかありません。

 

【注目点】

  • 消費者ニーズの変化が速いので、企業にとってスピードは大きな競争力になる。
  • ネットの力は、規模の優位性を低下させる。
  • 大手企業は、巨大資本を活用することで、ベンチャーの新規性・スピードを手に入れ、自社の弱点を補完することができる。

 

今日はここまで。

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 大手食品ブランドが苦戦するのは、ヘルシーニーズに対応したハイエンドの中小ブランドと、節約志向の高まりに対応した低価格のPB商品に市場を奪われているからである。
  2. また、巨大組織ゆえに、意思決定は概して遅く、外部環境の変化に迅速に対応できないことも影響する。
  3. あらゆることのコスト下げるネットの拡大は、巨大資本を背景に参入障壁を築いてきた大手食品ブランドにとって逆風でしかない。
  4. このような苦境に対し、急成長ブランドの買収や食のスタートアップへの投資など、外部企業の力を活用して収益拡大を目指している。
  5. ネットは、規模の優位性を低下しかねなく、大企業・既得権益にとってはマイナス要素である。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

酒類規制の強化により、ビールの店頭価格が上昇しています。

値上げ後から買ったことがありませんが、第三でもケースで2500円前後はなかなか見当たらないみたい。

これでは、ますます焼酎シフトが自分の中で進みそうです。

 

そんな中で見つけたのが、ビールのふるさと納税。

こちらも規制が強化されましたが、まだまだ1万円で1ケースの記念品(?)は残っているようです。

 

泉佐野市さんは、ビール以外でも充実しているから、注目です。

 

 

 

編集後記

最近PCを使う時間が非常に長く、目を酷使しています。

眼科に行った方がいいかもしれません。

適度な休憩は必要です。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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