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【750号】アメックスが赤字でも独自空港ラウンジを作る理由

アメックス専用書院

by courtesy of Alfred Lui

◎本日のニュース

1)見出し 
The Airport Lounge Arms Race

【出典】
goo.gl/1UiVLW

2)要約
複数の航空会社のラウンジを活用してきたアメリカンエキスプレス社が、
独自ラウンジ開設を進めている。ラスベガス・ダラスに続き、
シンガポールやドバイ・ロンドンという海外にも広げ、
今年後半にはニューヨーク・サンフランシスコでオープンさせる。

独自ラウンジを作る背景には、航空会社がラウンジ利用に制限を設けたからだ。
航空会社はラウンジ利用を制限することで、
ラウンジ利用をマイルに替わる特典に育てようとしている。

空港側も、アメックスの独自ラウンジを歓迎している。
アメックスのラウンジにより、サービスレベルが引き上がれば、
空港の競争力も高まるからだ。

◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
American Express Co. is opening its own lounges
at airports for its cardholders, one-upping airline clubs
with cool furniture, rich wood paneling,
a free celebrity-chef food buffet,
showers stocked with L’Occitane products and manicures,
facials and massages

4)キーとなる英文の和訳
アメリカンエキスプレス社は、
カード保持者のための独自ラウンジの開設を空港で進めている。
そのラウンジは、航空会社のラウンジよりも優り、クールな家具、
上質な木材で縁取られた鏡板、セレブシェフが作る無料のグルメビュッフェ、
ロクシタン製品やマニキュアが備えられたシャワー、
顔エステやマッサージを利用できる。

5)気になる単語・表現
oneup    他動詞    ~を出し抜く
paneling    名詞    鏡板用の木材
facial    名詞    美顔術、顔の手入れ

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
前回に引き続き、航空業界について。今回は、
カード会社大手のアメリカンエキスプレス社(アメックス)が、
自社独自のラウンジ開設に動いたことを取り上げます。従来は、
複数の航空会社のラウンジを活用し、
カード保持者へラウンジサービスを提供してきました。
というのも、元々クレジットカードと飛行機利用は親和性が高いからです。
旅行や出張で飛行機を使えば、旅先ではクレジットカードを利用する方が便利です。
現金を利用するとなると、利用予定金額を用意するだけでなく、
海外なら両替が必要だからです。そこで、
航空会社のマイルをクレジットカード利用に応じて提供することで、
両業界は提携してきました。

しかし、この提携に異変が起こります。それは、
マイルの特典旅行券の制限が大きくなり、
マイルの利用価値が低下したからです。そこで、
航空会社は、自社のロイヤリティを維持・向上させるために、
マイル以外の特典提供に動きます。例えば、
預け荷物の追加や優先搭乗、そしてラウンジ利用。
マイルに代わる特典としてラウンジを活用するために、
自社のロイヤリティ強化に貢献しないカード保持者の利用を取りやめたのです。
ラウンジ利用制限の事例は、以下の通り。

【大手航空会社によるラウンジ利用の制限】
[UAコンチネンタル]主要カードパートナーである
チェースカード利用者の限定
[アメリカンUAエア]自社ラウンジ・アドミルズクラブの
アメックスカード利用者のり用を3月22日で終了

UAコンチネンタルの制限は、UA(ユナイテッド)と
コンチネンタルの合併がきっかけとなったようです。
一種のコスト削減策も兼ねているのでしょうか。

このように、これまで提携してきた航空会社のラウンジが
利用できなくなったアメックスは自社ラウンジ開設に
かじを切ったわけですが、自社で開設・運営すればそれだけコストが
掛かることになります。実際、今のところ収益はマイナス(赤字)。
ただし、アメックスはラウンジに掛かるコストをカード販促費・
維持コストとして捉えているようです。アメックスがコストを掛けてまで
自社ラウンジにこだわるのは、次のような理由があるからです。

【アメックスが赤字でも自社ラウンジにこだわる理由】
[1]    アメックス利用者・潜在顧客の空港利用率が高いから
[2]    既存のラウンジに対する不満があるから

1について、クレジットカードと飛行機利用の親和性が高いと先述しましたが、
アメックスはそれが特に高いようです。その結果、アメックス利用者にとって、
空港や航空会社関連の特典の方が利用価値は高まるので、
アメックスは空港で利用できる自社ラウンジサービスを提供するのです。

2について、世界の空港ラウンジはプレミアム化してきたものの、
アメリカのラウンジはまだまだショボく、利用者の不満は高いようです。
座席や無料のソフトドリンク・スナック、
電源はあり混乱した通常のベンチよりはマシなものの、
プレミアムカード利用者に開放されたラウンジは混雑し、
サービスは単調そのもの。この不満を解消するために、
アメックスの自社ラウンジでは、プレミアム感を高める工夫がなされています。

【アメックスのダラス国際空港(DFW)・センチュリオンラウンジ】
[利用料金]ブラック・プラチナカードに当たる
センチュリオンカード利用者は無料。他のアメックスユーザーは一回50ドル。
[提供サービス]スパなどのエステ、ビュッフェスタイルのセレブシェフ監修料理、
受賞歴のあるバーテンダー監修カクテル、シャワーやスカイプなど

アメックスとしては、世界で提供するオフィスサービスの空港版として
捉えているようです。オフィスサービスでは、
アメックスユーザーは食事や旅行などの予約だけでなく、
郵便も受け取れます。この利便性を空港に持ち込んだのが、
アメックスの独自ラウンジなのです。

このように、アメックスは、ターゲット層や現状の不満を考えて
自社ラウンジを開設するわけですが、
空港もアメックスのラウンジ開設に協力的です。
例えば、先述のDFWでは、他のテナントよりも割安なリース料を
アメックスに提示。その理由は、センチュリオンラウンジの開設により、
DFW全体のサービスレベルが引き上がり、空港自体の競争力アップに
つながると考えたからです。ちなみに、DFWは、一日一便しかない
国際線ファーストクラス利用者専用のラウンジの開設も検討しているようです。
激しくなる空港間競争も、アメックスの自社ラウンジにとっては
追い風となっているようです。

アメックスの自社ラウンジ開設は、ターゲット層とその不満を考えた
販促そのものなのです。

DFW www.dfwairport.com/
AmEx Centurion Lounge thecenturionlounge.com/
Admirals Club goo.gl/8XpyAc

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《今回のヒントのまとめ》
(1)アメックスが航空会社のラウンジ利用から
自社ラウンジ開設に転換した背景には、
大手航空会社のラウンジ制限がある。

(2)マイルの魅力低下により、
マイルに代わる特典としてラウンジの価値を高めるために、
大手航空会社はラウンジに利用制限を加えるようになった。

(3)アメックスが赤字でも自社ラウンジを開設するのは、
顧客の維持・獲得とその不満解消のためである。

(4)アメックスユーザーの空港利用率は高く、
空港で利用できる特典を提供すれば、
アメックスを持とうとする動機は高まる。

(5)また、世界のラウンジがプレミアム化する一方で、
アメリカ国内のラウンジは単調で混雑している。
この不満に対応するため、
アメックスはプレミアム度の高いラウンジを開設している。
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7)おすすめ商品・サービス 
◎最近見つけたいいもの
ファミリーカードお誕生日特典を利用して、
イケアでデスクを買いました。
自宅オフィスの机が手狭だったため。
ただし、既存の机も活用するため、買ったのは天板だけです。
机の天板を載せるだけでは滑るかなと懸念したのですが、
結構重い天板だったため、杞憂に終わりました。
3000円ちょっとで広い作業スペースを持てて、快適です。
IKEA GALANT
www.ikea.com/jp/ja/catalog/products/S79895954/#/S69871166

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
english.ryotarotakao.com/

◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
wine.ryotarotakao.com/

編集後記
以前、何かカードの特典で空港ラウンジを利用しましたが、
決して快適とは言えませんでした。
混雑していて、サービスもそっけなく、こんなものという感じ。
ビジネスクラスのラウンジはそうではなかったので、
ラウンジにもピンキリがあるようです。

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