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【796号】アマゾンの有料定期購読サービス・アンリミテッドよりも図書館の方が優れている理由とは?

 

 Stockholm Public Library

 

◎本日のニュース

1)見出し
Why the Public Library Beats Amazon—for Now

 

 

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

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2)要約

多くのネット企業が電子書籍の有料定期購読サービスに参入しているが、代わりに図書館を利用する方が良い。図書館で電子書籍を借りれば、無料で済むだけではなく、読みたい書籍を借りられるからである。一方のアマゾンなどの有料定期購読サービスでは、ベストセラー書籍をほとんど読むことができない。

 

図書館でベストセラーの電子書籍が読めるのは、大手出版社は図書館をマーケティングのためのショールームと位置付け、良好な関係を築いているからである。書籍のネット通販の普及により姿を消した町の書店の代わりとして、図書館で本を探す人が増えているので、図書館での消費者の行動を、マーケティングに活用できる。

 

ただし、図書館にも課題はある。便利なサービスゆえに待ち時間が長くなり、読みたい本がなかなか読めないという苦情がある。さらに、大手出版社とネット企業との関係が改善し、大手出版社が有料定期購読サービスを儲かる新事業と考えるようになれば、図書館への電子書籍の提供を見直す恐れがある。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

More than 90% of American public libraries have amassed e-book collections you can read on your iPad, and often even on a Kindle.

 

4)キーとなる英文の和訳

90%以上のアメリカの公営図書館は、電子書籍の蔵書を持つ。

利用者はアイパッドや、多くの場合キンドルでも読むことができる。

 

5)気になる単語・表現

amass 他動詞 ~を貯める、~を蓄積する

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

記事で紹介されている電子書籍の有料定期購読サービスは、アマゾンのキンドル・アンリミテッド(Kindle Unlimited)、新興企業のオイスター(Oyster)とスクライブド(Scribd)。例えばキンドル・アンリミテッドでは、月10ドル支払うことで60万冊もの電子書籍を借りることができます。「借りる」としたのは、ダウンロードできないため。ネットフリックスの書籍版とも言えるサービスで、大変お得そうに見えますが、実際にはそうとも言えません。記事の著者は、代わりに図書館の利用を勧めています。図書館にも電子書籍があり、それを借りる方がお得だと主張しています。

 

有料定期購読サービスよりも図書館を勧める理由は、以下の通りです。

 

【有料定期購読サービスよりも図書館の方が優れている理由】

[1]   読みたい本があるから

[2]   無料だから

 

1が一番大きな理由。確かに、キンドル・アンリミテッドを利用すれば、60万冊もの電子書籍がいつでも読めるのですが、読みたい本があるとは限りません。実際に著者がベストセラーや人気作者・批評家のおすすめ本を調査したところ、以下のような結果が出ました。

 

【最新フィクション・ノンフィクショントップ20が何冊扱っているか】

[キンドル・アンリミテッド]ゼロ

[オイスター]3

[スクライブド]3

[サンフランシスコ市の公営図書館(大型図書館)]15

[サウスカロライナ州・リッチランド群の公営図書館(小型図書館)]11

 

【2013年・2012年・2011年のキンドル年間トップ20】

[キンドル・アンリミテッド]5冊以下

[サンフランシスコ公営図書館]16冊以上

 

いくら読書可能書籍数が多くても、読みたい本がなければ意味がありません。その点、図書館では、たとえ地方の小型図書館でさえ、アマゾンよりもベストセラー書籍の取扱は多いので、利用する価値はより高いと言えます。2については、説明するまでもありません。

 

使い勝手を取っても、図書館の電子書籍は有料定期購読サービスに負けません。

 

【図書館の電子書籍貸出サービスの特徴】

[1]   図書館に通う必要なし(オンライン対応)

[2]   延長の罰金なし(期限になれば即返却)

[3]   タブレット・スマホなど複数の端末で読書可能

 

このように、図書館の電子書籍貸出サービスが、民間の有料定期購読サービスよりも優れているのは、以下のような原因があるからです。

 

【図書館の電子書籍貸出サービスが民間の有料定期購読サービスよりも優れている要因】

[1]   大手出版社が図書館をマーケティングの手段と捉え、良好な関係を築いているから

[2]   売上向上にもつながるから

 

1について、アマゾンの肥大化により町の書店が姿を消すようになった結果、消費者が本に出会う場所が図書館に移りました。日本に住んでいれば理解に苦しみますが、アメリカでは、それだけ書店が減り、一方で図書館の利用者が増えているようです。金融危機による景気後退の影響もある。そこで、大手出版社は、消費動向を知る場所を、書店から図書館にシフトしました。つまり、大手出版社は、図書館を消費者の読書活動を知る場所として考えるようになったのです。ならば、図書館に電子書籍を提供することで、どの書籍が人気で、どの書籍が不人気かを知ることができます。プライバシーの問題がありますが、読んだ人の属性も把握できるかもしれません。これらのデータを、商品開発に活かしているのです。

 

一方、アマゾンなどのネット企業との関係は、良好ではないどころか、悪いのが現実。実際、アマゾンのキンドル・アンリミテッドには、5大出版社は電子書籍を一切提供せず、オイスター・スクライブドでは、2社が一部のタイトルのみの提供にとどまっています。これでは、図書館と民間で品揃えに差が出るのは当然です。

 

2について、図書館の電子書籍貸出サービスでは、貸出と同時に購入することもできます。図書館の場合、人気タイトルには貸出予約が殺到し、実際に貸出されるまでに時間が掛かります。また、通常の書籍よりも貸出期間が短いため、読破できない可能性はより高まります。そのため、借りた本を購入するというパターンが生まれるのです。大手出版社は、図書館に貸し出すことにより、売上向上が見込めるのです。

 

一方、ネット企業による有料定期購読サービスでは、貸出可能になるまで待つ必要のなく、またサービス利用をやめない限り、返却する必要もありません。よって、定期購読料以上の売上はほとんど見込めず、大手出版社にとって魅力的な販路とは言えないのです。

 

図書館の電子書籍貸出サービスにも、課題はあります。

 

【図書館の電子書籍貸出サービスの問題点】

[1]   部数が少なく長期間待つ可能性が高い

[2]   出版社との関係・契約がこのまま継続するとは限らない

 

1について、著者が調査した電子書籍の約半分は、買い出し中だったようです。それだけ、電子書籍貸出サービスは人気で、借りられるまでに長期間待たなければなりません。ならば、有料でもすぐに読めるサービスを利用した方がいいという人が出てきても、不思議ではありません。

 

2について、今は大手出版社が良心的に図書館に電子書籍を提供してくれていますが、これが今後も続くとは限りません。というのも、アマゾンの人気を無視するわけには行かず、アマゾンとの関係改善への動きがあるからです。また、有料定期購読サービスが儲かる新事業とみなされれば、図書館への協力を縮小し、民間への提供を広げるようになるかもしれません。ベストセラーが図書館で借りられなくなれば、利用者も少なくなる恐れがあります。

 

他方、図書館には、民間のサービスにはない利点があります。それは、プライバシー保護に関する安心感です。ネットの無料サービスは、自分のプラバシーの一部を差し出す代わりに利用できるものであり、この考えが広まれば、図書館の安心感がさらに見直されるかもしれません。また、有料の定期購読サービスの拡大は、書籍の貸出ニーズの高さを物語っており、図書館の存在理由が強まっている表れでもあります。

 

この記事で注目したいのは、大手出版社が電子書籍を図書館に提供することで、売上向上を目指した点。無料で貸し出すことで商品を知ってもらい、購入ハードルを下げることで、購入につなげようとしています。この場合重要なのは、無料で借りた人が購入に至る仕組みです。図書館の場合は、ウェイティングの長さや貸出時間の短さという不便さが、購入を後押ししています。このように、購入を後押しする不便さ・仕掛けを組み込むことで、無料サービスから収益を生み出すことができるのではないでしょうか。

 

Kindle Unlimited 

Oyster 

Scribd 

 

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《今回のヒントのまとめ》

(1)電子書籍の有料定期購読サービスよりも図書館の電子書籍貸出サービスが優れているのは、読みたい本が無料で読める点である。

(2)この背景には、大手出版社の協力姿勢がある。図書館をマーケティング活動の場とみなす大手出版社は、図書館には協力し、一方アマゾンなどの有料定期購読サービスに対しては、電子書籍の提供を渋っている。

(3)また、貸出と同時に購入できる図書館のサービスでは、ウェイティングの長さや貸出期間の短さにより、購入に至る可能性がより高い。大手出版社は、図書館に電子書籍を提供することで、売上拡大が期待できる。

(4)一方、いつでも読め、返却不要の有料定期購読サービスでは、購入することは考えにくく、売上拡大を見込みにくい。

(5)このように、無料サービスに不便さを組み込むことで、有料サービスへのシフトが期待でき、無料サービスから収益を獲得できる。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

先日食べたのが、こちらのいちご大福。

黒い餡の方を食べたのですが、柔らかい餅に大きないちご、そしてあっさり目の餡で、とても美味しかったです。

確か、価格も割安だったかと。

ちなみに一番有名なのは、金覆輪。

宝塚のお土産にぴったりです。

宝塚・菅屋

 

ちなみに、楽天市場では菅屋さんのはないですが、いちご大福を買えるようですね。

ただし、冷凍です。

 

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

首位まで詰め寄るもてっぺんに立てない虎。

惜しいとの声もありますが、巨人との差は歴然。

今年の優勝は、相手に大きなトラブルが起きない以上、かなり難しいでしょうね。

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。

 

私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

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