About

*

【835号】アメリカ小売店が顧客ごとの個別販促を行う理由

Goody's from Stage Stores Inc.

 

◎本日のニュース

1)見出し
Retailers Save Discounts for Bargain Hunters

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

2)要約

小売業で割引格差が生じている。割引格差とは、割引を受ける人と受けない人の差である。
従来は、全ての顧客に対し高い割引率を提示していたが、今では割引に反応する人にだけ割引を行うようになっている。定価販売の比率を高めることで、利益率を拡大させるためである。高級百貨店でも、割引を好む人向けに、シーズン落ち品や廉価版を売るアウトレットショップを別に運営している。

 

ただし、顧客の購入履歴だけではなく、買物行動そのものまで把握されていることを、顧客に知らせることになる。また、特定の人だけ割引をすることで、信頼性が損なわれる恐れがある。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

They are trying to maximize full-price sales to fatten profit margins, while using discounts to clear aging inventory and persuade reluctant shoppers to part with their cash.

 

4)キーとなる英文の和訳

彼らは、定価販売を最大化して、利益率を拡大させようとしている。

一方で、不良在庫品の処分や、躊躇する買物客の背中を押すために、割引を活用している。

 

5)気になる単語・表現

fatten 他動詞 ~を太らせる;(利益など)を拡大する
age 自動詞 (物が)古くなる;年をとる
reluctant 形容詞 することに気が進まない、乗り気でない
persuade A to V 他動詞句 (人)を説得して~をさせる

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

記事のタイトルだけ見ると、アメリカ小売業がバーゲンハンター向けの割引を渋ってきたと捉えられますが、実際の内容は、顧客に応じて割引率を変えているということです。割引率というよりも、一部の顧客には割引どころか定価での販促を行っています。

 

記事で紹介されている事例は、880店の百貨店を運営するステージ・ストアーズ社。次のように販促内容を変えています。

 

【ステージ・ストアーズ社の個別販促】

  1. 最新ファッションに興味がある顧客→流行ファッションを定価で販売
  2. 割引に反応する顧客→シーズン落ち品を大幅値引き

 

このように顧客に応じて販促内容を変えるのは、定価販売を最大化させることで、利益率を拡大させたいからです。逆に言えば、セールでしか買わない人がいる一方で、定価でも買う人がいるということになります。

 

次のデータが、消費者における価格への対応の違いを示しています。

 

【ネット通販利用者における価格反応度の違い】

  1. 割引命の人(大幅値引きの時しか買わない人)→ネット通販利用者の約20%
  2. 定価でも買う人→同約15%

 

ネット通販と言えば、安く買えるという印象が強いですが、自分の好きな物、特に最新の流行の物などでは、定価でも買う層が一定の割合で存在することがわかります。そこで、靴メーカーのドナルド・J・プリナーは、購入履歴により顧客を次の3つに分類しています。

 

【ドナルド・J・プリナーの顧客3分類】

  1. ディスカウントショッパー→処分品やシーズン落ち品を25%以上割引した時だけ買う人
  2. フルプライスショッパー→滅多に処分品を購入しない人
  3. 中間の顧客

 

単に販促を変えるだけではなく、割引好きな顧客向けに別の店舗を設ける企業もあります。例えば、ノードストロームやサックス・フィフス・アベニューなどの百貨店は、シーズン落ち品や自社ブランドの廉価版を、通常の百貨店とは別のアウトレット業態で販売しています。

 

ただし、顧客に応じた個別販促は、次のような問題点を生じさせます。

 

【価格反応度に応じて個別販促の問題点】

  1. 買物行動も含めた個人情報の利用を顧客は不安視する恐れ
  2. 特定の人だけ割引することで企業の信頼性が損なわれる恐れ

 

1に関して、購入履歴のみならず、ネット上の買物行動まで販売側が知っていることに、顧客は嫌な気持ちになるかもしれません。販促メールをいつ開け、ぴったりの靴のサイズはいくつで、「セール」「割引」という表現に反応してリンクをクリックしたかどうかまで販売側に知られては、気味が悪いと感じる消費者は多いでしょう。企業による個人情報の活用に関する典型的な課題です。

 

2に関して、特定の人だけにセール情報が告知されることに、不公平感を抱くかもしれません。それが企業に対する不信感につながれば、顧客離れを引き起こしかねません。

 

アメリカ小売企業が、利益率を上げようと定価販売の比率拡大を狙うのは、それだけセールの割引率が大きいということの裏返しでもあります。ならば、セールの割引率を縮小すればいいのですが、それがうまくいかないのはJCペニーが証明済み。ロン・ジョンソン時代のJCペニーは、全般的にセールを止めることで利益率の改善を試みましたが、逆に客離れを引き起こしました。売上を確保する上で、セールは重要なのです。ノードストロームなどの高級百貨店でさえ、アウトレット店舗を別に構えることにより、割引好きの人向けに販売するほどです。

 

個別販促は、顧客の好みに応じるためだけではありません。顧客の価格弾力性に対応した価格設定をすることで、売上を維持しつつ利益率を向上させるためでもあるのです。

 

Stage Stores Inc.

 

Donald J Pliner

 

 

***************************

《今回のヒントのまとめ》

  1. アメリカ小売業で特定の顧客だけにセール情報を流しているのは、定価販売の比率を高めることで利益率を改善するためである。
  2. 消費者の中には、セールでしか購入しない人がいる一方で、定価でも好きなら買う人もいる。
  3. 高級百貨店などは、セールでしか買わない人向けに、シーズン落ち品や廉価版を販売するアウトレット店舗を別に設けている。
  4. ただし、個別販促の前提となる個人情報や細かい購買行動を企業が活用していることを、顧客に知らしめるリスクがある。また、特定の人だけに割引をすることで、信頼性が損なわれる恐れがある。
  5. 割引率そのものに手を付けず、特定の人向けに割引を実施するのは、売上を維持しつつ利益率を改善したいからである。

*************************

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

先日、ノンアルコールのスパークリングワインを飲む機会がありました。

成城石井で販売されている商品ですが、意外に甘くなく、スパークリングワインを飲んでいる気分は味わえます。

もちろん、正確にはジュースだけに、甘さはありますよ。

フランス製で見た目もスパークリングワインに似ているというのも、飲めない時にはいいかもしれません。

価格も600円弱でお手頃です。

シャメイ ノンアルコールスパークリング ホワイトグレープ 750ml

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

2008年にメルマガを始めて、早7年目。

ためになる記事、面白い記事をいつも探しています。

もう少しわかりやすい文章を書きたいものです。

日々精進ですね。

それはそうと、大掃除は30日(みそか)に95%終了しました。

 

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com

高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com

高尾亮太朗のGoogle+⇒ gplus.to/ryotarotakao

高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/

今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。

 

私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

ad

関連記事

新着記事

コメント/トラックバック

トラックバック用URL:

この投稿のコメント・トラックバックRSS




管理人にのみ公開されます

*

ad

PAGE TOP ↑