About

*

【916号】物流大手のUPSが直販サイト代行ベンチャーに投資する理由とは?

UPSのトラック

 

◎本日のニュース

1)見出し

UPS Invests to Learn About Direct Online Sales

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

2)要約

物流大手のユニバーサル・パーセル・サービス(UPS)社は、メーカーの直販サイト構築・運営を代行するアライ・コマース社に投資している。製造企業によるネット通販は、ネット通販業界最後の未開拓市場と捉えられ、ネット通販全体よりも成長率は高く、有望視されている。

 

UPSがネット通販関連企業に投資するのは、ネット通販の拡大が自社に悪影響を及ぼし兼ねないと考えるからである。過去2年間の年末商戦では、ネット通販の物量が予想外に増幅したため、収益が悪化し、投資家を失望させた。しかも、そもそもネット通販商品の配送事業は、利益率が低い。

 

ただし、アライ・コマース社への関与は投資に留まり、成長が期待できる消費者直販ビジネスが、UPSにとってどれほど収益に寄与するかには疑問が残る。

 

3)キーとなる英文

United Parcel Service Inc. is investing in a tech startup that allows brand manufacturers to set up websites and sell directly to consumers, bypassing the middlemen.

 

4)キーとなる英文の和訳

ユニバーサル・パーセル・サービス社が投資をしているITスタートアップ企業は、ブランドを持つメーカーがサイトを構築し、中間業者を廃して消費者に直接売ることを支援する。

 

5)気になる単語・表現

bypass 他動詞 ~を飛び越す;~を出し抜く;(町など)を迂回する
tipping point 名詞 大きな転換点
come up with 自動詞句 (考えなど)を思いつく;~を発見する
expertise 名詞 専門知識
fulfillment 名詞 実行;履行
research 名詞 研究;情報収集
back-to-back 形容詞 続けざまの
ramp up 自動詞句 (商品などが)増える
outlet 名詞 (感情などの)はけ口;小売販売店;(液体などの)出口
juggle 他動詞 ~を上手にやりくりする

 

(今回ピックアップ英単語)

【ramp】

単独の意味は、

  1. (段違いの道路・建物のフロアーなどを結ぶ)傾斜路、スロープ;(高速道路の)ランプ
  2. (飛行機用の)タラップ;(空港の)エプロン(ターミナルビル・格納庫に隣接した地域)
  3. 暴れまわる(自動詞)

である。

さらに、もう一つ全く別の意味で、

詐欺・かたり(英古略式)

があるが、これは参考程度に。

 

”ramp up”となると、「増える;急成長する(自動詞);(商品など)を増やす、増産する(他動詞)」という意味になる。

これを取り上げたのは、”ramp up”がWSJでは頻出の単語だから。

 

6)ビジネスのヒント

最近よくUPSに関する記事を取り上げていますが、特別扱いしているわけではなく、WSJの記事自体が多く、しかも興味深いので、ピックアップしています。アメリカ産業界でも、物流の重要性が再認識されているのでしょうか。

 

今回のUPSの記事は、メーカーの消費者向け直販サイトの構築・運営を代行するアライ・コマース社への投資に関して。そもそも、直販サイトの代行というネットサービスがある事自体驚きです。日本なら、楽天市場への出店か汎用の通販サービスを使えば済みそうなものだから。アメリカにも似たようなものがあるでしょうが、なぜか直販サイト専用の代行業というのが成り立っています。今後調査する価値がありそうですね。

 

アライ・コマース社の概要をまとめると、次のようになります。

【アライ・コマース社について】

(創業者)元イーベイ社幹部

(創業年)2013年

(創業のきっかけ)イーベイ時代に、主要メーカー12社が直販サイト参入に興味を持っていることに気づいたから。さらに、創業者の友人に楽器のネット通販サイト創業者おり、その経験と技術によって、メーカーにネット直販専門の物流サービスを提供できたから。

(サービス)ネット直販サイトの構築・運営から、受注・返品の代行まで行う

 

アライ・コマース社は、2回の資金調達で総額840万ドルの投資を受けるなど、投資家からは有望視されています。だから、UPSが投資することに意外性はありません。現在では、ディーリンク(通信機器メーカー)・ボッシュ(電動工具メーカー)・エレクトロラックス(家電メーカー)などの直販サイトを運営しています。

 

アライ・コマース社が有望視されているのは、メーカーのネット直販市場に急成長が見込めるからに他なりません。

 

【急成長が見込めるメーカーのネット直販市場】

  1. ネット通販業界最後の未開拓市場とみなされている
  2. 来年までに、全体の34%のメーカーで、最大の販売ルートとなると予測されている
  3. 2013年には、約30%の売上増(ネット通販全体では約14%)

 

金額ベースではまだ小さいながらも、3のように成長率は市場全体を凌ぐ強さを誇っています。しかも、2のように、メーカーもネット直販ルートでの販売増に大きな期待を掛けています。

 

急成長にはもちろん要因があります。

 

【メーカーのネット直販が急成長すると予測されている要因】

(購入者・消費者側)直販を望んでいるため

(販売者・メーカー側)小売店など中間業者経由よりも利益率が約2倍高いから

 

要は、売れて儲かる可能性が高いのです。これなら急成長も納得です。

 

では、本題に移りたいと思います。なぜ、UPSはネット直販代行ベンチャーに投資するのかという問題ですね。

 

【UPSがネット直販代行ベンチャーに投資する理由】

  1. 成長が見込める市場だから
  2. ネット通販市場の拡大による収益悪化を補完する必要があるから

 

1は、説明したとおり。2について、ネット通販市場の拡大は運送業のUPSにとってプラスに働きそうですが、実際そうではないようです。

 

【ネット通販市場の拡大がUPSにとってマイナスに働く要因】

  1. 予測不能な年末商戦でのネット通販利用の拡大により、配送コストが膨大に掛かるから
  2. ネット通販商品の配送ビジネスは、利益率が低いから

 

1について、UPSは、2年連続年末商戦の結果で投資家を失望させました。クリスマスプレゼントが間に合わなかったばかりか、それに対応するためのコストが膨大にかかったため、収益が悪化したからです。今年も、予測不能として、大きな準備コストが掛かるため、収益悪化懸念があると公表しているぐらいです。

 

2について、日本とは違い住宅が散らばっているため、散らばった家庭まで届けるのはコストがかかります。一方で、送料無料の定着により運賃は安い。ネット通販の配送ビジネスは、そもそも儲からないのです。

 

何の手も打たないと、ネット通販市場の拡大が収益悪化につながりかねないから、ネット通販関連企業への投資を進めているのです。アライ・コマース社への出資は、その一環です。同様の理由で、UPSがITベンチャーへの投資を進めているのは、2~5年以内に自社や顧客のビジネスに影響を及ぼしかねないと考えるからです。IT企業の新サービスで収益悪化につながりかねないなら、その企業を取り込んでしまおうという考えです。

 

ただし、課題もあります。アライ・コマース社への出資に留まり、買収に至っていないため、メーカーのネット直販市場から得られる果実はあまり期待できない可能性があります。下手すれば、アライ・コマース社の事業拡大を手助けしただけで、配当収入だけで終わる懸念もあります。アライ・コマース社のノウハウを活用し、メーカーのネット直販市場をさらに拡大させ、そこから新サービスを派生させてやるぐらいの野心が必要でしょうか。

 

それにしても、クラウドソーシングの配送アプリのローディー社や、3DプリントサービスのクラウドDMM社に投資をするUPSを見ると、ネットサービスと物流企業は、意外に相性がいいのかもしれませんね。

 

 

 

 

***************************

《今回のヒントのまとめ》

  1. UPSがネット直販代行ベンチャーのアライ・コマース社の出資するのは、メーカーのネット直販市場に成長が見込め、ネット通販市場の拡大による収益への悪影響を補完できると考えるからである。
  2. メーカーのネット直販に成長が見込めるのは、購入する側の消費者が直販を望む一方で、販売する側のメーカーにとって利益率が高いからである。売れて儲かる市場が急拡大しないわけはない。
  3. ネット通販の拡大がUPSにとってマイナスなのは、年末商戦での膨大なコスト負担を余儀なくさせ、さらに、そもそもコストの掛かる割に運賃の安いネット通販商品の配送は、利益率が低いためである。
  4. ITベンチャーへの投資を進めるUPSを見ると、ネットサービスと物流企業は意外にも相性がいいのかもしれない。

 

*************************

 

毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

ここ何年かノートは無印の100円ノートを使っていたのですが、120円に値上げされたので、違うノートを探すことにしました。

すると、100均でもなかなか書きやすいノートがあることを発見。

キャンドゥ系の100均ストアで販売されているリングノートです。

紙質は、コクヨのキャンパスノートに近いのではないでしょうか。

しかも、行間がA罫で書きやすく、目盛が付いているので線も引きやすい。

当分、このノートを使いたいと思います。

ただ、円安傾向は収まりそうにないので、このノートもいずれ薄くなるんでしょうね。

文運堂 Flower Hill

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

風邪引きました。

引き始めから、ハチミツ大根をすすり、切ったたまねぎを枕元に置いて寝たため、ひどくならずに済みました。

ただし、まだまだ安心できません。

酒を控えていますが、これが意外に快適でいいですね。

時間を有効に使えますし。

一旦お酒を止めて、戻らずにそのままの人って多いのではないでしょうか。

お酒メーカーにとっては悪夢しかないですが…

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com

高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com

高尾亮太朗のGoogle+⇒ gplus.to/ryotarotakao

高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/

今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

ご質問・ご相談・ご感想がございましたら、ご連絡ください。

⇒ tryotaro1975@aol.com

 

メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。

 

私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

ad

関連記事

新着記事

コメント/トラックバック

トラックバック用URL:

この投稿のコメント・トラックバックRSS




管理人にのみ公開されます

*

ad

PAGE TOP ↑