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【988号】P&Gのボール型洗剤タイドポッド、使用方法変更で本当に売上は伸びるのか?

Tide Laundry Detergent Pods

◎本日のニュース

1)見出し

Three Tide Pods a Wash? Procter & Gamble Pushes More Doses

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2)要約

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社は、ボール型洗剤タイドポッドの使用方法を変更した。従来の洗濯1回に付き1個を、洗濯量により最大3個まで使用するようにした。

変更した理由は、利用者の意見や洗濯量調査により、利用者が考える洗濯量よりも実際の洗濯量の方が多いことが判明したからである。実際、タイドポッド発売前よりも、洗濯機の大型化が進んでいるという。

ただし、この変更の背景には、近年ヒット商品に乏しく、売上成長が予想に届かないというP&Gの事情もある。使用量が増えれば、その分確実に売上が伸びるからである。

3)キーとなる英文

Four years later, the consumer-products giant has a different message: Some loads might require two—even three—of the now-popular packets.

4)キーとなる英文の和訳

4年後、その消費者向け製品大手は、メッセージを変えた。

それは、洗濯量により、現品のパケットで2個もしくは3個を必要とする、というものである。

5)気になる単語・表現

tout 他動詞 ~を褒めちぎる;~をうるさく勧誘する
dissolve 他動詞 ~を溶かす
dose 名詞 1回分;服用量
clarity 名詞 明快さ
scant 形容詞 十分でない;ちょっと足りない
packet 名詞 小包
cram 他動詞 ~をぎっしり詰める
eke out 他動詞句 (不足分)を~で補う(with, by);(生計)を何とかする
lug 他動詞 ~を力任せに引く、~をやっとのことで運ぶ
desperate 形容詞 絶望的な

(今回ピックアップ英単語)

【tout】

(英英)

  1. try to persuade people that somebody/something is important or valuable by praising them/it「~をうるさく勧誘する」
  2. try to persuade people to buy your goods or services, especially by going to them and asking them directly 「~を押し売りする」
  3. sell tickets for a popular event illegally, at a price that is higher than the official price, especially outside a theatre, stadium 「ダフ屋行為で売る」

(コメント)

WSJ頻出単語。

企業が、注力して広告する時によく使われる。

ちなみに、ダフ屋行為で使われた記事はまだ見たことがありません。

6)ビジネスのヒント

P&G社のタイドポッドに関しては、このメルマガでも何度か取り上げました。

【654号】P&Gが分包型洗剤・タイドポッドを発売した本当の理由とは?

タ イドポッドの魅力は、洗濯量にかかわらず、一回につき1個放り込むだけの利便性の高さです。粉末洗剤や液体洗剤のように、洗濯量に応じて分量を計る必要は ありません。しかし、そのタイドポッドの魅力を削ぐような変更を、P&Gは行いました。商品そのものは何も変更せず、使用方法だけの変更です。変 更後の使用方法では、洗濯量により使用個数が変わります。強みを否定する変更だけに、ちょっと耳を疑いたくもなります。

【タイドポッドの使用方法変更】

(変更前)使用量は、洗濯量に関わらず1個

(変更後)使用量は、洗濯量に応じて最大3個まで

P&Gがこのような使用方法の変更をした理由をまとめると、次のようになります。

【タイドポッドの使用方法変更理由】

  1. 利用者は洗濯量を過小に判断しているから
  2. 利用量増が見込まれ、売上増に寄与するから

1 について、このような結論に至ったのは、利用者の意見や1回分の洗濯量調査から。つまり、1回分の洗濯量がタイドポッド発売後に増加しており、1個では十 分な洗浄ができないと、P&Gは判断したのです。実際、タイドポッド発売前に比べて、洗濯機は30%も大型化しているようです。

2 は、もろに企業側の論理。これまで1回の洗濯で1個しか使っていなかった人が、2個使えば、売上数量・金額はほぼ2倍になります。1回の洗濯量がもっと多 い人は3個使ってくれるので、それ以上の売上増が見込めます。タイドポッド以来ヒット商品のないP&Gにとっては、この変更により売上を飛躍的に 伸ばす機会を得ることができます。

しかし、2が本当に起こるかはかなり疑問。というのも、複数個の使用を勧めることにより、タイドポッドの従来の魅力・強みが無くなるからです。

【タイドポッドが支持を得ていた魅力・強み】

  1. 粉末・液体洗剤で起こる使いすぎを回避してくれること
  2. 計量不要で素手で軽く放り込めるなど、利便性の高さ
  3. 粉末・液体洗剤よりもさほど割高ではないこと

1 について、タイドポッドが受け入れられたのは、利用者にとって使いすぎという非経済的行為を回避できるからです。一方メーカーにとっては、必要以上に使っ てくれるという消費機会を失うことで、売上が減少する恐れがあります。実際、年間70億ドルもの全米洗濯用洗剤市場は、タイドポッド発売後、使いすぎが 減ったために、市場は拡大していません。ちなみに、タイドポッドに代表されるボール型洗剤は、約15%までシェアを急速に伸ばしています。従来企業は、売 上を伸ばそうと、使い過ぎを含めた使用量を伸ばす努力をしてきました。タイドポッドはその姿勢とは真逆であるために、消費者の支持を得たのかもしれませ ん。

2について、1個入れるだけなので、計量不要。しかも、何キロもする粉末や液体を持ち運ぶ必要はないので、手軽に洗濯できます。実際に、WSJ記事では、重い液体洗剤を運ぶのに疲れたユーザーの事例が掲載されています。

3について、タイドポッドは1個あたり約25セント。液体1回分が19セントなので、高いものの、割高さはそう強くありません。1の経済性と2の利便性を考えれば、十分割に合う価格差とも言えます。

2・ 3個の使用を公式に勧めることにより、1の使いすぎが生じることになります。2個でいいのか3個でいいのか悩むことで、しょうがなく3個入れる利用者がい るからです。2の利便性は、個数を数えるだけなので、さほど毀損されないでしょう。しかし、3の価格差は、2個で12セント、3個で18セントまで広がり ます。しかも、タイドポッドの減りようが目に見えてわかるので、さらに割高さは増幅されるでしょう。

さらに、競合他 社も、タイドポッドと同様のボール型洗剤を販売していますが、その単価はタイドポッドよりも低く、しかも最大2個の使用までしか謳っていません。洗浄力の 差にどの程度あるかはわかりませんが、使用方法通りに使うとすれば、1回あたりの洗剤コストの差は大きく感じるでしょう。これでは、粉末・液体洗剤に戻る ばかりか、他社に顧客を奪われかねません。

このように、使用量を増やすという変更だけでは、単純に売上は上がるとは限りません。ただし、もしタイドポッドがサブスクリプションで販売されていたら、契約を切り替えるハードルが存在するので、顧客の流出はそう多くはなく、売上増の確率は高まります。

こ の記事の注目点は、高単価商品の投入が、市場拡大に寄与するとは限らないということです。タイドポッドを含めたボール型洗剤は、粉末・液体よりも単価は高 いものの、使用量全体が減ることにより、市場全体の拡大には寄与しませんでした。高単価商品にスイッチすることで、消費量・購入機会が減ることもあるので す。

また、「使いすぎ」を回避してくれる商品は、例え割高でも消費者の支持を受けやすい点にも、注目でしょう。これ を訴求できるのは、市場シェアの低い企業か新規参入企業。企業収益にプラスでも、消費者にはマイナスな点を削り取れば、シェアを一気に取れることも不可能 ではありません。

(記事で紹介されたタイドポッドの競合品)

All Mighty Pacs

Arm & Hammer Power Paks

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《今回のヒントのまとめ》

  1. P&Gがタイドポッドの使用方法を、洗濯1回につき1個から、洗濯量に応じて最大3個までに変更したのは、ユーザーが洗濯量を過小評価しているからである。実際、タイドポッド発売後に洗濯機は大型化しており、調査でも1回の洗濯量は増加している。
  2. また、1回の洗濯で複数個の使用を勧めることで、販売数量・金額を簡単に増やすことができる。売上成長が乏しく、ヒット商品に恵まれないP&Gにとっては、売上を引き上げる方法なのである。
  3. し かし、この売上増加策が失敗する可能性が高い。というのも、使用方法変更により、タイドポッドの強みが失われるからである。粉末・液体洗剤の利用で起こる 使いすぎを回避してくれる強みは、とりあえず3個使う人の増加で、皮肉にも使いすぎが生じるようになる。計量不要・放り込むだけの軽さは、損なわれないだ ろう。しかし、粉末・液体よりもさほど割高ではない点は、複数個の利用で割高さを感じられるようになるのではないか。割安で最大2個までの競合品と比べて も、割高感は拭えない。
  4. タイドポッドのような高単価商品の投入により、使用量が減れば、市場全体が伸びないこともある。
  5. また、概して企業は使いすぎにより収益を稼ぐだけに、使いすぎを回避してくれる商品を投入することで、シェアの低い企業が新規参入企業は勝てる可能性が高くなる。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

まだ飲んでませんが、キリンビールの株主優待で各地の一番搾りセットを頂きました。

これはもう飲み比べなくてはなりません。

そして、また新たなローカル一番搾りが発売されれば、飲みたくなります。

気がつけば、一番絞りユーザーになっていたりして。

一番搾りだけではなく、NBのローカル商品投入は、食品業界のブームのようですね。

一番搾り地元うまれ

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

編集後記

舛添都知事が辞任しました。

あれだけ世間に嫌われれば、仕方ないとも思いますが、本人にしたら、なぜ私だけという認識なのでしょう。

それだけ、政治家の経費感覚は世間離れしていると考えて良さそうです。

それにしても、辞任にまで発展するとは思わなかった。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

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