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【987号】若者高所得リア充の都市部移住で消費はどう変わるか?

Ohio City LimitsJimmy Emerson, DVM

 

 

◎本日のニュース

1)見出し

Influx of Younger, Wealthier Residents Transforms U.S. Cities

 

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2)要約

国勢調査を開始した70年代以来素早いスピードで、若い高学歴・高所得者の都市中心部への移住が、アメリカでは進んでいる。これにより、従来廃れていた都市中心部が生き返り、新たな不動産開発・リノベーションや、公共交通機関や公園・文化施設の刷新が行われ、その結果、更なる雇用増・犯罪減少という好循環をもたらしている。

 

しかし一方で、都市中心部の不動産価格や家賃の上昇により、低所得者や中間所得の公務員が郊外への移住を余儀なくされている。流入した郊外では、公的サービスなどで新たな緊張が生まれる事態に陥っている。

 

3)キーとなる英文

The Baurs are part of a wave of young, educated, relatively high-earning workers flocking to many American cities at a rate not seen since the U.S. Census Bureau began tracking such data in the 1970s.

 

4)キーとなる英文の和訳

バウワー一家は、多くのアメリカ主要都市に群がる、若年・高学歴・比較的高収入労働者の急増の一部である。

この現象は、1970年代にアメリカ国勢調査局が調査を開始した以来、最速のスピードで進んでいる。

 

5)気になる単語・表現

influx 名詞 到来;殺到;流入
pockmarked 形容詞 あばた状の
decay 自動詞 腐敗する;(歯が)虫歯になる;荒廃する;衰える
brim with 自動詞 ~で縁までいっぱいになる;(be brimming with)(希望などに)あふれる
a wave of 形容詞句 ~の高まり、強まり;急増
spur 他動詞 ~をせきたてる;(馬に)拍車をかける;急ぐ(自動詞)
transit 名詞 通過;運送
needy 形容詞 貧乏な
foreclosure 名詞 抵当権受渡し
downtown 名詞 中心街

 

(今回ピックアップ英単語)

【spur】

(意味)

  1. (名詞)拍車、刺激、動機
  2. (他動詞)~を~へとせきたてる、~にはっぱをかける;~を~するようにとせきたてる(SVO to do)
  3. (他動詞)(進歩など)を促す
  4. (他動詞)(馬)に拍車をかける、(馬)を急がせる
  5. (自動詞)馬に拍車をかける;急ぐ

(コメント)

もともとの意味は、「馬の拍車(馬に乗る時靴のかかとに取り付ける金具。一端に歯車があり、馬の腹部を刺激して馬を操るもの)。」

そこから派生して、「拍車をかける」→「急がせる」→「せきたてる」という意味に広がる。

「刺激・動機」という意味には、「better, more quickly」というニュアンスが含まれる。(より良く、またはより素早くしたいと思わせる事実・出来事)

「せきたてる」という意味には、「emcourage them to try harder to achieve something」というように、「より一生懸命努力する」というニュアンスを含む。

 

6)ビジネスのヒント

今日の記事は、アメリカの若者動向。高齢化・人口減少の日本とは異なり、アメリカでは、最大の消費者層になりつつあるミレニアル世代に、各業界は注目しています。今回取り上げるのは、ミレニアル世代とその上の世代を足した層ですが、高学歴・高所得者という特性を持ちます。

 

この若い高学歴・高所得者の都市中心部への移住が、急ピッチで進んでいるようです。それに関するデータは以下の通り。

 

【若い高学歴・高所得者の都市中心部の移住を示すデータ】

  1. 全米の高所得トップ30%(年収85000ドル以上)の世帯で、都市部に住む人が40万人以上増加(2006年比較)
  2. クリーブランドの中心街の居住者で、25~44歳の大卒以上の高所得者のシェアが、2000年の8%から2014年の12%に急増
  3. オハイオシティ居住者の平均所得は、2006年の23000ドルから9300ドル以上に増加

 

記事で取り上げられているのが、オハイオ州クリーブランド。クリーブランドは、住宅バブルの崩壊で、住宅差し押さえと人口流出の打撃を受けた都市です。そのような荒廃した都市でも、2のように、若者・高学歴・高所得者の流入が急速に進展していることがわかります。ちなみに、オハイオシティとは、クリーブランド中心街で、新たに開発された区域です。

 

では、なぜ若い高学歴・高所得者は都市中心部に集中するのか?

 

【若い高学歴・高所得者が都市中心部への移住を進める理由】

  1. 新しいアメニティが多く住みやすいから
  2. コストが掛かり面倒な自動車を所有する必要がないから
  3. 住宅ローン金利の上昇・住宅保有リスクの上昇で、借家希望者が増加したから

 

1は、荒廃した都市中心部の復興が行われた結果、オハイオシティのような新規に開発された住宅地が生まれ、新しく飲食店・小売店・公園などのアメニティが集積されました。この結果、都市中心部がより住みやすくなりました。高所得者がさらに集まると、この有料見込み客目当てに、さらに多くの店舗が生まれる好循環が生まれています。

 

2について、記事ではオハイオシティに移住した若者の移転理由に、車が不要だからを上げていました。都市中心部に住むと、徒歩圏内にスーパーなどの小売店・飲食店があります。日常生活を営む範囲では、自動車は不要なのです。一方、郊外に住めば、通勤通学に必須。ガソリン価格が下がったとはいえ、購入費・維持費は結構掛かります。

 

3について、アメリカは利上げ以降、住宅ローン金利が上昇。さらに、住宅バブルでローンを組んでまで住宅を保有するリスクの高さが、浸透しています。この結果、保有より賃貸を好む若者が増加しています。その結果、ローン付きの広い郊外の住宅よりも、少々狭くても刺激のある都市中心部の借家を好む傾向が高まっています。だから、借家住まいでも、都市中心部への移住を進めるのです。

 

このように若い高学歴・高所得者が都市中心部に集まることにより、社会では変化が起こります。

 

【若い高学歴・高所得者の都市中心部集中によって起こる変化】

  1. 不動産バブルの形成
  2. 都市中心部・郊外の所得格差の拡大

 

1について、消費旺盛な若い高所得者の都市中心部への集中によって、それを狙った商業施設が進出します。そして、商業施設の進出によりさらに刺激が増し、さらなる集中を招きます。その結果、都市中心部の住宅・商業用不動産価格は高騰。賃料も上昇し、空室率は低下します。

 

【都市中心部の不動産関連データ】

  1. 全国主要都市の家賃:平均1730ドル⇔郊外1250ドル未満

平均で都市中心部は郊外よりも2%高い。2010年は郊外の方が4%高かった。

  1. オハイオシティの平均住宅価格:2000年比で8倍の2700万ドルに
  2. クリーブランド中心部の平均家賃:2010年後半から47%増(2015年後半)
  3. オハイオシティのオフィス・商業施設空室率:2011年の40%から、2016年現在では2%未満に改善

 

2について、不動産価格の高騰により、低所得者や中間所得の公務員は、中心部から郊外への移転を余儀なくされます。皮肉なのは、住宅バブル崩壊で荒れた都市中心部の復興に尽力してきた人まで、住めなくなったということ。それだけ、不動産価格が高騰し、バブルの様相を呈しているということです。

低所得者などが郊外に流出することで、今度は郊外で新たな緊張が生まれています。学校や交通・低所得者向けサービスなどが混みあい、既存住民の反発を招いているのでしょう。高所得者が中心部に、比較的低い層が郊外に移ることにより、郊外の税収に悪影響を及ぼす恐れもあります。(記事ではここまで書かれてませんが)

 

このように、若者の高学歴・高所得者が都市中心部に移住することによって、その消費も変化を余儀なくされます。

 

【高学歴・高所得の若者の都市中心部移住によって変わる消費】

  1. (若者の)自動車関連消費金額がさらに減少
  2. ミニマリスト志向が高まり、小型・兼用の消費財へのニーズ拡大

 

1について、理由でも述べた通り、都市中心部への移住理由の1つに、自動車の不要のコスト優位性があります。これまで郊外で自動車を保有していた人が、都市中心部に引っ越せば、その分自動車の販売台数が減ることになります。ただし、本当の問題は、自動車を持たなくなったのが、高級車を買える高所得者ということ。つまり、高単価商品を買ってくれた顧客を失うことになり、台数だけではなく、金額まで大きく減少することになります。保険を含め、自動車関連業界は、優良顧客を失うことになるのです。

 

2について、郊外よりも狭い借家住まいが増えることにより、ミニマリスト(より少ないモノでシンプルに暮らす人)が増加します。その結果、大型家具や家電が売れなくなる。一方で、いろんな機能を持つマルチなモノへのニーズが高まります。6月14日の日経新聞に掲載されていたのですが、家具チェーン大手のイケアでは、モノニーズの低下を見越して、小型で兼用できる家具の開発を進めているようです。

 

(引用開始)

家具販売で世界最大手のイケア(スウェーデン)が新たな事業領域を探り始めた。都市化で狭い住宅に住む人が増え、若者を中心に家具を減らしたいと考える傾向が強まっていることに対応。家電や自転車などに商品を広げ、一つの家具で複数の機能を備えた製品にも挑む。

2016年6月14日付 日経新聞朝刊より 引用終わり)

 

 

注目点は、高所得の若者が、住宅の広さよりも、刺激・利便性を重視しているということ。オハイオシティの寝室一部屋の家賃を払えば、郊外では寝室三部屋の大きな住宅に住めるのです。それでも狭い借家に住むのは、それだけオハイオシティが魅力的だからに他なりません。住宅の付加価値は、単に広いではなく、周辺環境の雰囲気や利便性にシフトしているのかもしれません。

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. 若い高学歴・高所得者が都市中心部に移転している理由は、刺激的な新しいアメニティが多いからであり、さらに徒歩圏で生活できるためコストの掛かる自動車が不要だからである。さらに、住宅ローン金利の上昇・住宅保有リスクを懸念する傾向の高まりにより、借家希望者が増加していることも、借家住まいしかない都市中心部への移転ハードルを下げている。
  2. この結果、不動産価格の高騰と中心部・郊外の所得格差の拡大を招いている。消費旺盛な若い高所得者の集中は、商業施設の進出を促し、さらに利便性・刺激が増すことで、高所得の若者を集める。その結果、不動産価格は高騰した。逆に、低所得者や中間所得の公務員は郊外への移転を余儀なくされ、郊外では新たな緊張が生まれている。
  3. 消費への影響もある。自動車が売れなくなることによって、販売台数が減少するだけではなく、高級車も買える高所得の顧客を失うことで、販売金額も減少する。また、狭い借家住まいが増えることで、ミニマリスト志向が高まり、小型・兼用の消費財へのニーズが高まる。
  4. 郊外の広い住宅よりも、狭くても刺激的で利便性の高い借家を好むことは、住宅ニーズの質が変化しているのかもしれない。より重視される点が、広さよりも周辺環境の雰囲気・利便性にシフトしているのではないか。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

まだ飲んでませんが、キリンビールの株主優待で各地の一番搾りセットを頂きました。

これはもう飲み比べなくてはなりません。

そして、また新たなローカル一番搾りが発売されれば、飲みたくなります。

気がつけば、一番絞りユーザーになっていたりして。

一番搾りだけではなく、NBのローカル商品投入は、食品業界のブームのようですね。

一番搾り地元うまれ

 

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

なかなか微熱が下がりません。

かれこれ一ヶ月ぐらい37度前後が続いています。

かといって、しんどくて何も出来ないほどではないのですが、一度病院で相談した方がいいかもしれません。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

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