【995号】ダノン社による有機飲料メーカー買収はうまくいくか?
◎本日のニュース
1)見出し
Food Giants Set Their Sights on Organic, Natural Companies
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2)要約
ダノン社が、有機飲料メーカーのホワイトウェーブ・フーズ社を買収すると発表した。これは、食品業界で頻発する大手メーカーによる中小有機メーカーの買収の最新事例である。この背景には、消費者の食事習慣の変化がある。
消費者の中で、よりシンプル・ナチュラルな食へのニーズが高まっている。これは単にニッチ市場での出来事ではなく、大手メーカーの売上低迷という形で食品業界全体を揺さぶっている。
ただし、増加する大手メーカーによるM&Aが、必ずしも成功するとは限らない。ケロッグ社に買収されたシリアルメーカーのカシは、ケロッグの組織構造が合わずに、売上を減少させている。
3)キーとなる英文
Danone SA ’s $10.4 billion takeover of WhiteWave Foods Co. is the latest in a flurry of food industry deals born out of pressure that longtime supermarket standbys face to adapt to changes in consumer eating habits.
4)キーとなる英文の和訳
ダノン社による104億ドルを掛けたホワイトウェーブ・フーズ社の買収は、食品業界で多発する買収の最新事例である。
この要因は、長期間スーパーマーケットに販路を依存してきた食品企業が、消費者の食事習慣の変化に対応するよう、株主の圧力に直面しているからである。
5)気になる単語・表現
flurry | 名詞 | 同時にたくさん起こること;にわか雪 |
standby | 名詞 | 頼りになる人;代替物 |
overall cost | 名詞 | 総原価 |
at a cost | 副詞 | 損をして;犠牲を払って |
(今回ピックアップ英単語)
おやすみ
6)ビジネスのヒント
消費者のシンプル・ナチュラル志向の高まりは、今に始まったことではありません。食品・外食市場での大きなトレンドです。だから、有機食材が売れているのであり、原材料にこだわったシェイクシャックが人気を博しているのです。
このトレンドの割を食っているのが、大手食品メーカーやファストフードチェーン。今回は食品業界の記事で、大手メーカーによる中小の有機食品メーカーの買収が増えています。その最新事例が、ダノン社による有機飲料メーカーのホワイトウェーブ・フーズ社の買収です。
【大手食品メーカーによる中小有機食品メーカーの買収事例】
- ホーメル・フーズ社:有機精肉のアップルゲート・ファームズ社を7億7500万ドルで買収
- ゼネラル・ミルズ社:有機マカロニ&チーズのアニーズ社を8億2000万ドルで買収
上記の2つの事例は、あくまで記事で紹介されている分に過ぎません。特に昨年はこのタイプのM&Aが多く、総額で1160億ドルに達したようです。金額ベースで、過去20年間で最大。今年6月まででは、430億ドル以上に達しています。ただし、昨年と比べると小粒感は否めません。この理由は、利上げにより融資環境が引き締まっていることや、株価の下落があるようです。
大手メーカーがM&Aに走る背景には、消費者ニーズの変化が無視できなくなる規模にまで拡大していることがあります。有機やナチュラルフーズと言えば、ニッチ市場というイメージが強いですが、このトレンドはもうニッチ市場での出来事ではなく、大手食品メーカーの売上にも大きく影響を及ぼす規模に発展しているのです。
実際、この消費者ニーズの変化に対応できず売上低迷に悩むメーカーは多く、株主の圧力も相当強くなっている模様です。一方で、ナチュラル・有機食品の売上成長率は、一桁後半から二桁前半の高さ。この急成長市場を無視するのは、機会損失に他なりません。だから、自社の収益に取り込もうと、大手食品メーカーは買収に動いているのです。
また、中小企業にはない大手食品メーカーの持つ製造設備・購買力・販路を活用することにより、傘下に入った中小の有機・ナチュラル食品メーカーは、コスト削減・売上拡大を狙うことができます。
ただし、必ずしも成功するとは限りません。
【大手食品メーカーによるM&Aの失敗事例】
ケロッグ社によるシリアルメーカー・カシの買収→カシの2014年売上は5億ドルに低下(ピーク時よりも17%減少)
同じシリアルメーカーなので、施設や販路の共有で収益は拡大すると思いきや、なんと売上は減少。その要因として記事では、ケロッグが持ち込んだ組織や変化により、従業員や消費者が離反したことが取り上げられています。恐らく、仕事の進め方において、大企業の論理が持ち込まれ、また収益性の低い販路が打ち切られたのでしょう。
大手食品メーカーと中小の有機メーカーでは、規模の違いだけではなく、大量生産品と少量高付加価値品という商材特製も違います。よって、安易に企業文化を持ち込むと、統合効果どころか収益にはマイナスに働き兼ねないのです。これは、同じ乳製品メーカーである、ダノンとホワイトウェーブにも起こること。よって、ダノンには、ホワイトウェーブにある程度独立性を認めるという、太っ腹な決断が望まれます。
注目点は、以下のとおり。
【注目点】
- 有機・ナチュラル食品ビジネスのイグジットとして、大手メーカーへの売却が今後一般化するかもしれない
- 大手メーカーの傘下に入ることで、有機・ナチュラル食品のコスト削減が進み、価格が下がるかもしれない
1について、スタートアップの主要なイグジット方法は、IPOと大手企業への売却。食品業界でも、同様のことが当てはまるようになるかもしれません。どちらかというと、大手メーカーの収益が低迷しているだけあって、IPOよりも大手メーカーへの売却の方が主流になるのではないでしょうか。
2について、大手の傘下に入ることにより、コスト削減が進むことが期待できます。その結果、販売価格が下がり、有機・ナチュラル食品市場がさらに拡大するのではないでしょうか。そうなれば逆に、有機やナチュラルだけでは差別化しにくくなるかもしれません。価格競争が始まる恐れも十分ありえます。
(記事で紹介された有機・ナチュラル食品メーカー)
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《今回のヒントのまとめ》
- 大手食品メーカーによる中小の有機食品メーカーの買収が増えているのは、消費者の有機・ナチュラル志向が収益にマイナスに働くほど、拡大しているからである。もうニッチ市場での話ではない。
- 買収により、大手食品メーカーは、高成長の続く有機・ナチュラル食品の市場拡大を取り込むことができる。
- 一方買収される中小の有機食品メーカーは、大手企業の持つ製造設備・販路などを活用することにより、コスト削減・売上拡大など収益拡大が見込める。
- ただし、大手企業の組織構造や収益拡大策が安易に持ち込まれると、中小企業の従業員や顧客の離反を招く恐れがある。収益拡大どころか、縮小しかねない。
- IT企業のように、有機食品ビジネスのイグジット手法として、大手メーカーへの売却が主流になるかもしれない。
- 大手メーカーの傘下に入ることにより、有機・ナチュラル食品のコスト削減が進み、価格が下落するかもしれない。逆に、新たな差別化が必要となるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
アサヒのスーパードライプレミアムがリニューアルされました。
今回は、「豊穣(ほうじょう)」という名前です。
(思わず、阪神で頑張っている北條選手が頭に浮かびましたが)
今回はサンプル缶を頂いたのですが、これがなかなかの苦味。
プレモルやエビスのような独特の味わいよりも、苦味が強いという印象です。
アルコール度数6.5%というのが効いたのでしょうか、「さわやかさ」というよりも「どっしり」したという感じ。
旧ドライプレミアムとは、随分変わりました。(旧ドライプレミアムはプレモルに似ている)
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。
この7年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
また風邪を引いたようで、喉が痛くなりました。
免疫力が相当下がっているように思えてなりません。
厄年のせいかなぁ。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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