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【997号】ショッピングモールから百貨店が消える理由とは?

JCPenney mall entrance

 

 

◎本日のニュース

1)見出し

Mall Owners Push Out Department Stores

 

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2)要約

従来ショッピングモールの要として君臨していた百貨店が、専門店やレストラン・エンターテイメント施設などに転換されている。その背景には、もちろんネット通販市場の拡大があるが、それだけではない。

 

元々百貨店は、その高級さ・豪華さが他のテナント誘致や集客に寄与していたので、家賃は割安に設定されていた。しかし、集客力が劣った今ではその割安家賃が足かせとなっている。そこで、モールオーナーは、より集客力があり、より家賃の高い専門店などの他業態への転換を進めている。

 

また、モールに立地する百貨店の店舗面積の大きさも、大きなネック。というのも、小さく区切り複数のテナントを誘致することにより、単位面積あたりの家賃はさらに上昇するからである。

 

3)キーとなる英文

Once the linchpin of American shopping malls, department stores are being displaced by newer types of retailers that do a better job of driving shoppers to the centers and lifting overall mall sales.

 

4)キーとなる英文の和訳

百貨店は、かつてアメリカのショッピングモールの要であった。

しかし、今では新しい業態の小売店に転換されている。

というのも、集客力が高く、モール全体の売上上昇により貢献するからである。

 

5)気になる単語・表現

tear down 他動詞句 ~を取り壊す;~を分解する
linchpin 名詞 (仕事・組織などの)要
demolish 他動詞 (人・災害・爆弾などが)(建物)を(こなごな)に破壊する;(議論・理論)を粉砕する
landlord 名詞 地主
nudge 他動詞 ~をひじで軽くつつく;~を押しのける
covet 他動詞 ~をむやみやたらに欲しいと思う
multiple 形容詞 多様の、複合的な
marginal 形容詞 収支トントンの
be contingent on 形容詞句 (将来の不確定要素に)依存する;~の次第である
antiquated 形容詞 時代遅れの

 

(今回ピックアップ英単語)

【marginal】

(意味)

  1. (資格・能力などが取るに足らない、重要でない;(人が)影響力を持っていない(↔mainstream)=small and not important; not part of a main or important group or situation
  2. 欄外の、余白に書かれた
  3. 縁の;辺境の
  4. (経済学)限界(収益点)の、収支トントンの= that cannot produce enough good crops to make a profit

(派生語)

marginally 「わずかに、少々」

marginalize 「~を主流から排斥する(はずす)」

 

(同義語)

「最低限の」 minimum, bare

「重要でない」 unimportant, small minor, humble, indifferent

(コメント)

経済紙WSJだけに、marginalは頻出と思いきや、さほど見たことはありません。

一番有名なのは、marginal balance 「限界利益(=売上ー変動費)。」

 

6)ビジネスのヒント

ネット通販が日本よりも普及しているアメリカだから、モール自体の集客力も低下しているのですが、その中でも特に大きく衰退しているのが百貨店。よって、現在モールの百貨店から他業態への転換がどんどん進んでいるようです。

 

【モール立地の百貨店の転換事例】

  1. ノードストローム@フロリダ・モール→スポーツ専門店・エンターテイメント施設
  2. サックス・フィフス・アベニュー@同上→レストラン街
  3. ロード&テイラー@同上→売り場面積縮小し、一部ファストファッションに
  4. シアーズ@クールスプリング・ガレリア→ファストファッション・レストランチェーン

 

百貨店が他業態に転換される特徴をまとめると、次のようになります。

 

【百貨店の他業態転換の特徴】

  1. より集客力のある専門店・フィットネスジム・レストラン・エンターテイメント施設に転換
  2. 売り場面積の広い百貨店が複数のテナントに分解

 

このような特徴の転換が増える理由とまとめると、次のようになります。

 

【百貨店が他業態に転換する理由】

  1. 集客力が従来よりも弱くなり、モール全体の売上にも悪影響を及ぼすから
  2. 家賃が相対的に低く設定され、モールオーナーにとって魅力的なテナントではないから
  3. モールオーナーが、百貨店など小売からファンドなど収益重視の組織に転換したから

 

1について、もともとモールに百貨店が立地したのは、その豪華さ・高級さが他テナントの誘致・モール全体の集客に大きくプラスに働いたからです。しかし、今では専門店やレストランに大きく劣るようになりました。もう百貨店が無くても、集客の高いモールを作ることは可能なのです。逆に、若者にダサいと認識される百貨店が大きな売場を有していれば、モール全体の集客にマイナスに働くことになります。もちろん、ネット通販市場の拡大が、多種多様なモノを集めた百貨店にマイナスに働くことは、言うまでもありません。

 

2について、1で述べたようにテナント誘致・モール全体の集客に大きな影響力を持っていた百貨店は、家賃が比較的低く設定されていました。しかし、今ではかつての集客力はありません。ならば、収益面からも、売場を百貨店に貸すことはマイナスなのです。

 

3について、もともとモールの所有者は、百貨店などの小売企業でした。だから、百貨店が大きな面積を専有できたのです。しかし、今ではリートなどファンドが主体。より収益重視の姿勢になるので、家賃・集客上不利な百貨店は転換の対象になります。

 

モールの百貨店閉鎖について、次のようなデータが掲載されていました。

 

【モールの百貨店閉鎖データ】

  1. サイモン・プロパティーズ・グループ社:過去15年間で50の百貨店(全体の11%)を閉鎖
  2. ゼネラル・グロース・プロパティーズ社:過去5年間で65の百貨店(全体の15%)を閉鎖

1・2の企業ともモールオーナー。両社とも大幅な閉鎖を進めてきたことがわかります。もちろん、閉鎖後の売場は、ファストファッションやフィットネスジム・スーパー・レストランチェーンなどの他業態に、転換されています。

 

百貨店衰退に関するデータをまとめると、次のようになります。

 

【百貨店衰退に関するデータ】

  1. 企業数(ブランド数):56→12程度(1980年代→現在)
  2. 近年閉鎖店舗急増→ただし、売場効率を10年前に戻すにはまだ不足
  3. 百貨店売上:9%減少(2015年4月~2016年3月)、10%減少(2005年~2015年)

※3はゼネラル・グロースでのデータ

 

1について、モールなど立地先に関わらず、百貨店という業態自体がジリ貧であることがわかるかと思います。市場規模が小さくなっているからでしょう、プレーヤー自体が激減しています。

 

2について、特に最近閉鎖店舗が急増しています。もちろん、市場がさらにネット通販に食われ、若者の集客に苦戦しているからです。ただし、その閉鎖規模はまだ足りないとされ、10年前の単位面積あたりの売上に戻そうとするなら、業界全体であと800店もの閉鎖が必要とされています。

 

3について、専門店と比較するとその勢いの違いが理解しやすくなります。

過去1年間:百貨店1.9%減少⇔専門店4%増加

過去10年間;百貨店10%減少⇔専門店33%増加

これだけ増減が異なると、もう百貨店にテナントを貸し出す意味はありません。

 

先述の家賃の違いも無視できず、モール全体の収益に大きな影響を及ぼします。

 

【百貨店と他業態の家賃比較】

  1. 百貨店:2ドル~(とあるモールのシアーズ29ドル)
  2. 他業態:15~20ドル(同上の場合12~24ドル)
  3. 百貨店の後に複数業態:100ドルに到達することも

※1平方フィートあたり

 

3倍ほど違うことがわかります。さらに、売場を複数業態に小分けすれば、20倍以上に化けるのです。百貨店を閉鎖して、ファストファッション・レストラン・ジムなどに転換するモールが増えるわけです。

 

【注目点】

  1. ワンストップショッピングが強みのモールに立地できなくなると、百貨店の立地は相当制限されることになる→市場がさらに縮小
  2. 外食・習い事・エンターテイメント施設などモールのコト化が進んでいる
  3. モールは品揃えよりも収益重視の投資対象に

 

1について、百貨店は核テナントとしてモールには必須の存在という認識がありました。また、モール自体ワンストップショッピングができる商業施設なので、百貨店は是非とも立地したいはず。そのモールから嫌われれば、百貨店はどこに立地すればいいのか、という話になり兼ねません。市場縮小どころか、何でも揃う百貨店という業態は、もうすぐ死滅するかもしれません。

 

2について、ネット通販市場の影響でしょう、モールのコト化はどんどん進んでいます。百貨店転換後の業態は、専門店はあるものの、それ以外は外食やジムなどの習い事、家族で楽しめるエンターテイメント施設が主体。単にモノを買うだけではなく、楽しめる施設がないと、ネット通販との競争に勝てないのかもしれません。

 

3について、収益性にある程度目をつぶって、品揃えの豊富なモールを作ろうと思えば、ある程度の知名度のある百貨店は必須のはず。それが外されるということは、収益性がより重視されているということです。リートなどの投資対象だから、仕方ないのかもしれません。

 

日本に目を転じれば、アメリカほどモータリゼーションが進んでいない都市中心部では、百貨店は街の核テナントとして生き残れるでしょう。問題は地方の百貨店。アメリカのように、モールの核テナントとしては到底無理。逆に、小型店のセレクトショップとして残り、残りの売場をテナント貸しするのが現実的な階かもしれません。(大阪梅田のルクアイーレや大丸梅田店など)

 

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. モールから百貨店が消える理由は3つある。一つ目は、集客力が弱まり、一方で専門店などの集客力が強まっているからである。
  2. 二つ目は、百貨店には割安な家賃が設定され、モールオーナーにとっては収益上魅力的なテナントではないため。従来は、その豪華さ・高級さがテナント誘致・集客に有利に働いたため、家賃は低めに設定されていた。
  3. 三つ目は、モールの所有者が、小売企業からファンドなどの収益重視の主体に変化しているから。品揃えよりも収益面が重視される。
  4. 百貨店の集客力が弱体化した原因は、ネット通販市場との競争が激化し、また若者に時代遅れと認識されているからである。
  5. ワンストップショッピングという魅力のモールへの出店が嫌われれば、百貨店の立地はより制限されることになる。もしかしたら、業態自体が死滅するかもしれない。

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7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけた気になるもの

アサヒのスーパードライプレミアムがリニューアルされました。

今回は、「豊穣(ほうじょう)」という名前です。

(思わず、阪神で頑張っている北條選手が頭に浮かびましたが)

今回はサンプル缶を頂いたのですが、これがなかなかの苦味。

プレモルやエビスのような独特の味わいよりも、苦味が強いという印象です。

アルコール度数6.5%というのが効いたのでしょうか、「さわやかさ」というよりも「どっしり」したという感じ。

旧ドライプレミアムとは、随分変わりました。(旧ドライプレミアムはプレモルに似ている)

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、7年経ちました。

この7年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

今年初めて、ZOZOTOWNでジャケットを買ったのですが、本当に楽ちんです。

サイズ感が不安なものの、それは実店舗で試着すれば解決できます。

もちろん、実店舗で買えばいいのですが、少し値の張るものはちょっと迷うものです。

ネットで買えるとわかれば、焦って実店舗で買わなくてもと思ってしまいます。

アパレルの売上が苦戦しているのは、焦って買う人が相当減ったからではないでしょうか。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

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