【791号】全米生保最大手のメットライフが、ウォルマートで保険を売る理由とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Struggling Life-Insurance Companies Look to Middle-Class for Revival
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2)要約
全米生保最大手のメットライフは、ウォルマートで生命保険の販売を行っている。タッチパネルを備えた店舗内売り場で、最初の付きは5ドルから加入できる。ウォルマートで販売することにより、メットライフは中間層にリーチできる。この背景には、長期間にわたり、中間層への生保売上が減少していることがある。
中間層への生保売上が減少したのは、より低価格の定期保険へのシフトや、雇用主が提供する生保だけしか加入しない人が増えたからである。一方で、中間層の契約した生命保険契約だけでは保障が不十分であり、30兆ドル以上もの保障ギャップが生まれている。メットライフは、このギャップに事業機会を見出し、直販による販売増を狙っている。
ただし、直販が、従来型の代理販売員による販売と同程度販売できるか疑問視する向きがある。実際、マスミューチュアルは、多くの販売員を通じた販売に依然軸足を置いている。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The kiosks are part of a push by the biggest U.S. life insurer in assets to reverse a long slide in sales of life insurance to the middle class. I
4)キーとなる英文の和訳
その売店は、資産規模で全米最大手の生命保険会社による試みの一つである。
この試みにより、長期に渡る中間層への生保売上の減少を反転させようとしている。
5)気になる単語・表現
kiosk | 名詞 | 売店 |
insurer | 名詞 | 保険業者;保証する人 |
asset | 名詞 | 資産;財産 |
reverse | 他動詞 | ~を覆す;(判決など)を破棄する |
slide | 名詞 | 減少、低下;悪化 |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
メットライフがウォルマート内で生保の販売を行うのは、減少の止まらない中間層への生保売上をテコ入れするため。記事で紹介された個人への生保売上データは、以下の通りです。
【個人への生保売上データいろいろ】
[1] メットライフの個人向け生保売上は、2005年比で26%減(5億5300万ドル→4億900万ドル)
[2] 生保市場全体の個人向け生保売上は、80年代半ば以来45%減
[3] 約30%のアメリカ載せたいは、生保を持たない←30年前は19%
[4] メットライフの個人向け生保事業は、全営業利益のたった16%(変額年金保険は25%、海外は30%)
このような事態に至った要因をまとめると、次のようになります。
【個人向け生保売上の減少が止まらない要因】
[1] 貯蓄用として投信・401Kの普及
[2] アドバイザーであるFPが、より低額な定期保険や定年後の収入保障保険を薦めているから
[3] 保険会社は上場後、自社の販売員を減らす一方で、富裕層に変額年金保険を販売しがちな社外の代理販売員に依存するようになったから
[4] 福利厚生として企業が提供する生保で十分と考える人が増えたから
1は競合商品の登場・普及により、生保の客数・客単価減少を招いています。2は、より低単価の商品にシフトすることにより、客単価を減少させています。
3は、上場後、投資家からのプレッシャーにより、より収益にシビアになりました。その結果、販売を社外のファイナンシャルアドバイザー・プランナーに依存することに。彼らは、保険料に対する手数料を収入源とするので、より高額な保険を売ることを目指します。その結果、中間層への生保販売が減り、富裕層への変額年金の販売が増えることになりました。その結果、客数が減少します。
4について、企業が福利厚生として従業員に提供する生保で十分と考える消費者が増えることにより、個人契約の生保売上が減少したということです。個人契約が団体契約にシフトしたということなので、客数の減少となります。
このように、個人向け生保の客数・客単価とも下落しているので、個人向け生保売上の減少に歯止めが掛からないのです。
一方で、個人向け生保にはまだまだ売り込む余地があります。というのは、中間層の生保保障ギャップが30兆円以上に膨らんでいるからです。保障ギャップとは、実際に加入している保険による保障額と必要な保障額の差。平均年収5万477ドルの人は、現在の保証内容よりも166,000ドル多くなければ、もしもの時の備えにならないのです。この保障ギャップに、メットライフはビジネスチャンスを見出し、中間層にリーチできるウォルマートでの販売に力を入れているのです。
メットライフが中間層への販売方法として採用したのが、直販方式。代理店経由ではなく、自社が直接保険加入者に販売する手法です。そのために、ネット通販や電話通販経験者の採用を進めています。生保のネット販売は、加入者の健康状態を事前に検査する必要があるので、なかなか普及していません。そこで、メットライフは、処方薬や保有自動車の情報やその他データベースを結合することで、50万ドルまでの保障額の保険に関して、ネット上で加入者情報を確認・分析できるシステムを開発しました。また、医療チェックの不要な死亡保険の販売に力を注いでいます。
ただし、ウォルマート内売店での販売は、苦戦を強いられています。まず、売店設置コストが大きく掛かり、実際、立ち上げコストと運営費で4000万ドルの損失を想定しています。(2014年)
また、当初店内で保険内容を決定し、その後レジで1年分の保険料を支払うという仕組みだったため、興味を持っても契約にまで至らないケースが多々発生しました。そこで、初月の保険料を一律5ドルに設定し、その後性別や年齢によって毎月の保険料を変えられるようにしたようです。これにより、興味を持った人の加入ハードルは一気に下がります。
また、タッチパネル方式を使って、興味を持った人が保険内容と保険料をシュミレーションできるようにしたことから、毎月20~30ドルの保険商品に興味を持つ人が多いことがわかったようです。これは、ウォルマートという集客力の高い立地に出店できたからわかったこと。決して売上に至らなくとも、これらの情報は、商品開発に活かされることになり、将来の中間層への販売増に貢献すると期待されます。
しかし、メットライフが採用した直販方式に対し、疑問視する声があるのも事実。生身の人間が販売する代理販売員方式よりも、販売効率が高いかどうかという疑問です。対面販売ではない分利益率が高いのは事実ですが、実際に売れなければその利益率は実現しません。販売員には可能なクロージングへのプッシュができない点が、直販の弱点と捉えられているのです。
いずれにせよ、メットライフが、中間層向け生保をビジネスチャンスと捉え、その販売戦略として、集客力の高いウォルマートを選んだことは、とても戦略的です。また、ITを活用することで、販売コストを下げるだけではなく、潜在顧客のニーズを吸い上げている点は、注目に値するでしょう。
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《今回のヒントのまとめ》
(1)生保業界では、個人向け商品の売上減少が続く一方で、中間層の保障ギャップが30兆ドル以上の発生している。
(2)メットライフはここにビジネスチャンスを見出し、中間層への生保販売を強化。そのために、ウォルマートでのタッチパネルを活用した販売を行っている。
(3)ITを使った直販により、販売コストを下げられるだけでなく、潜在顧客のニーズを拾い上げることができる。
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◎Winecarte 簡単ワインの選び方
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編集後記
日本の生保市場はどうなんでしょうか。
少子高齢化が続くとなると、生保販売額の減少は必至。
だから、保険会社は医療保険など新型保険の販売に力を入れているのでしょうね。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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