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【886号】ジレットがマーケティングをバリュー訴求に変えざるを得なかった理由

gillette

 

 

◎本日のニュース

1)見出し
Razor Sales Move Online, Away From Gillette

 

 

 

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2)要約

アメリカで、男性用カミソリと替刃の消費が急速にネットにシフトしている。割安さと定期購入を武器に、直近1年間の売上は昨年の倍。これに対し、プレミアム戦略を取ってきたジレットは、市場を奪われる立場にある。

 

全体のトップシェアはジレットである一方、急拡大のネット通販市場のシェアトップは、ダラー・シェイブ・クラブ。低価格の定期購入サービスを3年前から始めたばかりであるが、カミソリ・替刃のネット通販市場では50%近くシェアを持つ。一方、ネット通販では20%しかシェアのないジレットは、最上位商品を、ダラー・シェイブ・クラブよりも割安な価格で提供して、シェア拡大を目指している。

 

ただし、カートリッジあたりの価格では、ダラー・シェイブ・クラブの最上位プランの方が割安であるので、単に月当たりの料金が安いだけに他ならない。また、髭が社会的により受け入れられなくなってカミソリ・替刃全体の市場も縮小している点も、トップシェアのジレットに取っては逆風となる。

 

 

3)キーとなる英文

The online market for razorblades barely existed a few years ago, yet Americans have taken to it quickly.

 

4)キーとなる英文の和訳

カミソリの刃のネット通販市場は、数年前にはほとんど存在していなかったが、アメリカ人は急速にネット購入にシフトしている。

 

5)気になる単語・表現

gear 名詞 道具
incredible 形容詞 信じられない
off balance 形容詞句 バランスを失って;不安な状態にさせて
swivel 名詞 回り;~を回転させる
untested 形容詞 実証されていない
principally 副詞 主に
stubble 名詞 無精髭;(トウモロコシなどの)刈株
beard 名詞 あごひげ
tout 他動詞 ~をほめちぎる;~をうるさく勧誘する
razor 名詞 カミソリ
blade 名詞
significant 形容詞 重大な;意味がある;かなり
rut 名詞 わだち

 

(今回ピックアップ英単語)

おやすみ

 

 

6)ビジネスのヒント

日本ではまだそうではありませんが、アメリカではカミソリ・替刃のネット購入が増加しているようです。

 

【急拡大するカミソリ・替刃のネット通販市場】

  1. 今年5月までの一年間→市場規模は倍の2億6300万ドルに増加
  2. 今年1月~5月までの5ヶ月間→市場規模は倍以上の1億3100万ドルに増加
  3. 今後5年間で平均25%増の見込み

※3はジレットの予測

 

1でもスゴイ成長率ですが、2によればその成長スピードはさらに速まっています。買う先を小売店からネットに切り替える人が、相当増えていることがわかります。

 

この買物行動の変化に対し、危機感を持つのがトップシェアのジレット。P&G傘下の髭剃り用カミソリブランドです。市場全体では60%以上のシェアを持つものの、ネット通販だけに限ると20%に過ぎません。ネット通販売上は伸びているのですが、ネット通販全体の伸びに比べては、満足いく増加率ではないからです。つまり、ジレットは市場を食われているのです。

 

カミソリ・替刃の購入がネットにシフトしているのは、その割安さに要因があります。トップシェアのダラー・シェイブ・クラブ始め、ネット通販専業は、ジレットよりも割安な点を強調しています。これまで高い価格のジレットを仕方なく買っていた顧客が、より割安なネット通販に切り替えたというのが実態なのです。

 

ちなみに、このようなネット通販での提供が可能になった背景には、主にPB商品を製造するカミソリ・替刃メーカーの存在があります。ジレットとシックに寡占されている小売店ではなく、急拡大するだけではなく、定期購入サービスで売上が安定的に伸びるネット通販の方が収益は高いので、PBメーカーは喜んでネット通販に商品を提供しているのです。

 

先に述べましたが、カミソリ・替刃のネット通販の特徴は、定期購入サービス。その元祖でネット市場トップシェアのダラー・シェイブ・クラブは、毎月1~9ドルでカミソリ・替刃の定期購入サービスを提供しています。その会員数は200万人。今年の売上は1億4000万ドルの見込みで、推定時価総額は6億1500万ドルにも及んでいます。実は、2012年4月のメルマガで、ダラー・シェイブ・クラブを取り上げています。その時は珍しいおもしろサービスと取り上げましたが、今では人気サービスに成長しました。

 

このような割安なネット通販企業の攻勢に対し、市場トップシェアのジレットは販売戦略を転換することで対応しています。

 

【ジレットの販売戦略転換】

高付加価値戦略→バリュー戦略

 

5枚刃・回転ヘッドなどの高付加価値商品を高単価で販売してきたジレットですが、これを割安さの訴求に切り替えています。具体的には、

 

  1. ネット通販で最上位モデルを1ヶ月5ドルで提供(ダラー・シェイブ・クラブは9ドル)
  2. 小売店販売商品のパッケージ・広告で、一ヶ月あたりの費用の低さを強調

 

という二点です。

 

1について、ジレットは、最上位のフュージョン・プログライドの替刃を毎月5ドルで販売。一方、ダラー・シェイブ・クラブの最上位プランは毎月9ドル掛かります。この安さをアピールしているのです。ただし、カートリッジあたりの費用は、1つしか提供しないジレットが5ドルであるのに対し、4つ提供するダラー・シェイブ・クラブは2.25ドルで、ダラー・シェイブ・クラブの方が割安。ジレットは、1週間3~4回の髭剃りを想定し、月1回の交換を推奨しています。

 

2について、ジレットは価格を変えず割安さをアピールする方法を発明しました。それは、あまり頻繁に替刃を交換しないように消費者に伝えるという方法です。このやり方は、市場規模を縮小しかねないので、シックなど同業者の反発を招いています。ただし、基準を変えることで、割安さを出すというのは、とても興味深い方法であるのは間違いありません。

 

改めて、ジレットが販売戦略をバリュー訴求に切り替えた理由をまとめておきます。

 

【ジレットがバリュー訴求に切り替えた理由】

  1. 割安さを訴求するネット通販市場が急成長しているものの、ジレットのネット通販売上は比較的低成長だから
  2. ジレットのシェアが高い小売店での市場がネット通販市場に奪われているから

 

本当は、バリュー訴求なんてしたくないのだと思います。だって、高付加価値路線で売上はこれまで伸びてきたのだから。しかし、ネット通販の急拡大が無視できないばかりか、自社の顧客を奪う自体にまで成長しているので、従来の戦略を変えざるを得なくなった。これが実情でしょう。だから、自社の売上が減少しかねない、バリュー訴求・長期間使用の薦めをするようになったのです。

 

また、カミソリ・替刃市場全体が縮小しているのも、トップシェアのジレットにとっては大きな向かい風。2012年に30億8000万ドルあった市場は、2014年29億6000万ドルにまで縮小しています。その要因は、以下の通りです。

 

【カミソリ・替刃市場縮小の要因】

  1. 髭が社会的により広く受け入れられるようになったから=客数減→客単価引き上げで補填
  2. ネット通販の低価格モデルへ急速にシフトしているから=価格下落・客単価下落→バリュー訴求

 

1について、無精髭やあごひげが職場でより広く受け入れられるようになったのは、カミソリ・替刃市場にとっては逆風です。カジュアル化の影響ですね。カミソリ・替刃の利用頻度・利用者が減ることは、客数が減少するのと同じ。客数減少に対し、ジレットはプレミアム路線による客単価の引き上げ・売上増を目指していたのです。

 

2は、先述の通り。市場の寡占状態により高単価が維持できていたのが、ネット通販の割安定期購入サービスの登場で、割安さを求める顧客がネットに流出しているのです。客数が同じとすると、客単価が下がるので、市場規模は縮小します。これに対し、ジレットは、割安さの訴求で、顧客流出の最小化を目指しています。

 

本当ならば、カミソリ・替刃利用者の減少に対し、高付加価値商品の投入により客単価引き上げで売上増を目指したいところ。割安なネット通販の急拡大が、それを不可能にさせたのであり、ジレットは仕方なくバリュー訴求をしているのが実情ではないでしょうか。

 

Gillette

Dollar Shave Club

 

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《今回のヒントのまとめ》

  1. ジレットが販売戦略を高付加価値訴求からバリュー訴求に切り替えたのは、割安さが武器のネット通販市場が急拡大しているからである。ジレットのネット通販売上も伸びているものの、ネット通販の高い成長率には及ばない。
  2. また、全体でトップシェアのジレットが、割安なネット通販市場に顧客を奪われているからである。
  3. ネットでの定期購入サービスと小売店販売の商品双方において、ジレットは価格を変えずに、長期間使えることで割安さをアピールしている。ただし、頻繁に替刃を変える人にとっては、ネットトップシェアのダラー・シェイブ・クラブの方が割安である。
  4. カミソリ・替刃市場全体は縮小している。その要因の1つは、髭が社会的により受け入れられるようになったからであり、客数減少を意味する。これに対しジレットは、プレミアム品の投入で、客単価引き上げによる売上増を目指した。
  5. もう一つの要因は、割安なネット通販市場の拡大である。これは、客単価の下落を意味し、これに対しジレットは、バリュー訴求に転換することで対処している。客数が減少している以上、単価引き上げを動きたいのが本音で、バリュー訴求は必要に迫られて取った苦肉の策と言えるだろう。

 

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7)おすすめ商品・サービス

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◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

体調はだいぶマシになりました。

咳がたまに出るぐらい。

外で動いている時はあまり出ないのですが、デスクワークをすると出るのが不思議です。

まぁ、我慢していればいいのですがね。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

 

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

 

 

 

 

 

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