【899号】アイスクリームビジネスはフレーバー選びで儲けが決まる？

Shannon Gillespie

◎本日のニュース

1)見出し
The Cold Calculations of Ice Cream Economics

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2)要約

ブルックリンにあるアイスクリーム店、アンプル・ヒルズ・クリーマリーの一番人気フレーバーは、ソルテッド・クラック・キャラメル。ただ、販売側にとって、このフレーバーが売れすぎると困るという。その理由は、製造するのが複雑で、原材料コストが高いから。アイスクリームビジネスは、どのフレーバーを扱うかで、利益率は大きく変わる。

また、個性的なフレーバーが売れるとは限らない。特に子供は、単純なフレーバーを好む傾向がある。さらに、集客だけ考えれば、メニューは多いほどいいが、効率を考えれば、少ないに越したことはない。

3）キーとなる英文

Welcome to the world of ice-cream flavor economics, where cold, calculated planning and whimsy can produce inspired creations or freezer-case flops.

4）キーとなる英文の和訳

アイスクリームのフレーバー経済学の世界へようこそ。

この世界では、冷静に計算された計画とアイデアにより、感動を呼ぶメニューができるか、それとも売場の冷凍ケースにも入らない失敗作に終わるかが、決まる。

5）気になる単語・表現

whimsy	名詞	気まぐれ、物好き；奇想
inspire	他動詞	～を鼓舞する；～を感激させる
flop	名詞	完全な失敗；ドスンと倒れる音
tricky	形容詞	コツのいる、扱いにくい
concoction	名詞	混合
confection	名詞	糖菓
creep in	自動詞句	そっと忍び込む
creep	自動詞	ゆっくり動く
aesthetic	名詞	美学
intellectual	形容詞	知性の；理論的な
toddler	名詞	よちよち歩きの幼児
craze	他動詞	～を発狂させる
choking	形容詞	息を詰まらせるような；（感動で）詰まった
borderline	形容詞	はっきりとは決められない；境界線上の
utilitarian	名詞	実用本位の
speed	他動詞	～を早める；～を急がせる
queue	名詞	（順番を待つ人・車などの）列；列を作って待っている人
bout	名詞	一期間
gaze	自動詞	じっと見つめる；凝視する
upside	名詞	良い面
bundle	名詞	大金；束、包み
clog	他動詞	～を詰まらせる

（今回ピックアップ英単語）

Flopは、頻出の単語。

もともとは、自動詞で「ドスンと倒れる、倒れこむ」「（髪などが）垂れ下がる」「のそのそと不格好に歩く」「（計画などが）完全に失敗する」などの意味がある。

「非常に疲れているために」「重く」「突然に」「バタッと」倒れるというニュアンス。

そこから、「コントロール不能で落ちる」「完全に失敗する」に意味が広がった。

6)ビジネスのヒント

アイスクリームビジネスにおけるフレーバーに関する記事。キーセンテンスにも取り上げたように、フレーバー経済学とも言える内容であり、大げさに言えばフレーバー選びで、そのアイスクリームビジネス（製造・小売）がうまくいくかどうかが決まる。

フレーバーが影響を与えるのは次の二点。

【アイスクリームのフレーバーが影響を与える収益性】

利益率→フレーバー間の価格差以上に、原価は大きく違う（勘定）
客数→個性的フレーバーよりもシンプルなフレーバーの方が好まれる（感情）

1について、アイスクリームの価格は、フレーバーによって異なるものの、原価ほどには変わらない。これは、消費者が受け入れられるアイスクリームの相場というものがあるからだろう。一方の原価は、1パイント20セントのものから3ドルのものまであるという。

2について、他アイスクリーム店との差別化のため、独創的なフレーバーを開発しがちだが、実際によく売れるのはシンプルなものが多いという。特に、子供はシンプルなものを好む。子供が親を引き連れてくると考えれば、子供の好みは無視できない。

1は、利益率に関するもので、もろに勘定に影響する。一方の2は、消費者の好みであり、感情と関連する。ただし、2で消費者ニーズに合うフレーバーを提供すれば、客数が増え、結果的に収益にプラスに働く。

アイスクリームビジネスの制約条件としては、次のようなものが上げられる。

【アイスクリームビジネスの制約条件】

売場の広さ→フレーバー数は限られる
価格→高くすればそもそも売れない

1について、直営店だろうが卸先の店舗だろうが、売場の広さという制約を受ける。だから、集客を増やせるからといって、無闇矢鱈にフレーバーを増やすことはできない。２について、これは先述の通り、製造原価が高くなったからといって、その分を価格に積み上げることはできない。消費者が受け入れられるアイスクリームの相場というものがあるからである。

これらの制約のもと、効率だけを考えれば、フレーバーを少なくすればいい。製造コスト・物流コストは下がり、長い行列による販売機会のロスも最小化できるからである。しかし、品揃えが乏しいことにより、消費者が飽きやすくなり、集客にはマイナスとなる。

そこで、要約で取り上げたブルックリンのアンプル・ヒルズ・クリーマリーは、

行列で待っている人に先にメニュー表を渡す
スクープする人を増やす

ことにより、長い行列による販売機会ロスを少なくしている。

ただし、行列は悪い面だけではない。程よい行列は、注文を選ぶ時間を待つ人に与える。記事によると、20分間メニューを見ることにより、納得するまで選べるという。さらに、迷うことで、迷った後にやめたフレーバーは次の機会ということになり、再来店を促してくれる。また、程よい行列は、人が人を呼ぶ効果が期待でき、集客にはプラスに働くだろう。

【アイスクリームビジネスでの行列の利点】

楽しく選べる時間が持てる→今の客数にプラス
迷うことで、再来店を促せる→将来の客数にプラス
人が人を呼ぶ→今の客数にプラス

制約の中で、いくつのフレーバーを提供するのか。どんなフレーバーを提供するのか。これらにより、利益率・客数が決まり、そのアイスクリームビジネスの収益性は決まると言えるだろう。

何気なく通り過ぎることの多いアイスクリーム店も、フレーバーという切り口から見ると、その収益性はある程度想像が付くことになり、面白い。

[記事で取り上げられていたアイスクリームビジネス]

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《今回のヒントのまとめ》

アイスクリームビジネスは、そのフレーバー選びが、利益率と客数に影響を与える。
原価の差ほど価格差を付けられないので、フレーバーにより利益率は大きく異なる。
個性的なフレーバーよりもシンプルなものが売れるので、フレーバーは客数にも影響を与える。
アイスクリームビジネスの制約条件は、売場の広さと製造コスト・価格である、集客を考えればフレーバーは多いほどいいが、売場の制約を受ける。価格も、顧客の相場に沿う必要がある。
効率を考えれば、メニューは少ないほどいいが、集客を考えればメニューは多いほどいい。
行列での待ち時間は販売機会のロスにつながる一方で、選ぶ楽しさを提供し、迷うことで再来店を促してくれる。

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