【701号】世界で広がるフレーバーリキュールブーム、その要因と限界とは?
by courtesy of Will Vanlue
◎本日のニュース
1)見出し
Spirits Soar on Flavored Liquors
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2)要約
スピリッツを製造販売する企業が、競って大胆な新型フレーバーリキュールを発売している。さらに、フレーバーリキュールは、各社の業績に大きく寄与している。
この背景には、清涼飲料水やノンアルコール飲料に求めていたものをアルコール飲料にも求めるという、消費者ニーズがある。また、アメリカに限っては、脆弱な経済状況にも関わらず、消費者がより価格の高いスピリッツにシフトしていることも、挙げられる。
しかし、開発競争が激化するにつれ、商品アイデアがより奇抜になり、売上とロイヤリティー確立への寄与が弱まる結果に至っている。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
From honey whiskey to pumpkin pie vodka, bold new flavors are the toast of the global drinks industry.
4)キーとなる英文の和訳
ハニーウィスキーからパンプキンパイウォッカまで、奇抜な新しいフレーバーが、世界の飲料業界で評判となっている。
5)気になる単語・表現
bold | 形容詞 | (輪郭・色彩などが)はっきりした、目立つ;(人目のつくところで)大胆な、勇気のある |
toast | 名詞 | (地域・芸能などの)花型、評判の人;完売、祝杯 |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
世界中で、新しいフレーバーリキュールが人気のようです。そのため、スピリッツ製造販売企業各社は、商品開発に力を入れるとともに、次々と新商品を発売しています。さらに、その新商品が業績に大きく寄与しているから、さらに開発・発売に拍車が掛かっています。
記事で紹介されている商品開発・業績寄与の事例をまとめると、次のようになります。
【スピリッツ製造販売企業による新フレーバーリキュールの開発事例】
[ディアジオ社(Diageo PLC)]
◯過去5年間に開発・発売された酒類で、同期間の売上増加分の半分が生まれる。
◯商品開発を目的とする投資の約80%が、3年以内の発売予定の商品開発に向けられる。
◯ベイリーズ・ショコラ・リュックス(Baileys Chocolat Luxe)
→アイリッシュクリームのリキュール。3年間の開発期間に、300種類のチョコレートの分析と839パターンの配合を実施。
◯スナップ(Snapp)→シャンパン風のりんご飲料。ケニアとナイジェリアの女性向けに発売。
◯シャーク・トゥース(Shark Tooth)→ロシアで発売。
◯スミノフ(Smirnoff)のキスキャラメルバージョンとアイスケーキバージョン→北米部門の営業利益9%増に寄与。
[ビーム社(Beam Inc.)]
◯ピナクル(Pinnacle vodka)のホイップクリームとコットンキャンディが混ざったウォッカ→ピナクルブランドの第二四半期売上13%増に寄与。
◯中期の売上増加目標分の約1/4を新商品から作るために、過去数年で新商品発売数を3倍以上に増加させた。
◯女性向けのそのまま飲める缶入りスピリッツの販売増を目指す。
[ペルノ・リカール社(Pernod Ricard SA)]
◯ココナッツラムのマリブ(Malibu)ブランドから、1年間で5商品を全世界で発売。テキーラを入れたマリブレッド(Malibu Red)など。マリブブランドの売上V字回復を目指す。
実際、アメリカでは、キャンディやケーキフレーバーのウォッカが大変売れているようです。その結果、フレーバーウォッカが、アメリカのウォッカ消費量の1/5以上に達し、ウォッカ販売数量が、全スピリッツ販売数の1/3を占めるようになったほど。
また、節約志向がいまだ根強いアメリカ経済ですが、リキュールに関しては、より単価の高い商品にシフトしているようです。その証拠に、スピリッツのプレミアム商品の販売増加率が、市場全体の増加率よりも高くなっています。
では、なぜフレーバーリキュールが売れているのか。その要因は、次のように推測されます。
【フレーバーリキュールが売れる要因】
[1] グルメ同様に、飲料に関する消費者の知識が増加したから
[2] 美味しさだけでなく、楽しさも求められているから
1について、食材の産地や調理方法などをこだわる人が多いグルメと同様のことが、飲料でも起こっているということです。それだけ、飲料に関する知識が消費者に広がっていることであり、逆に言えば、目新しさがなければ興味を持ってもらえないということでもあります。だから、各社、売上を増やすために新商品開発に精を出さざるを得ないのです。実際、オールドファッションドやジントニックなどのオーソドックスなカクテルが売れるバー業界でも、フレーバーリキュールを取り入れる動きがあるようです。
2について、カクテル文化へ興味を持つ消費者が増えていることが、お酒に楽しさを求めている証拠です。美味しいだけでなく、見た目にも楽しめるからこそ、フレーバーリキュールが売れているのではないでしょうか。
しかし、開発競争が激化するにつれ、弊害も出てきています。
【加熱するフレーバーリキュール競争の弊害】
売上増加・ロイヤリティ確立への寄与度の低下
フレーバーリキュール市場の拡大よりも新商品の増加が上回ると、成功しても大きな売上規模が期待できなくなります。経済学で言う「収穫逓減の法則」と似ています。大きな売上が期待できないことは、大きな利益も期待できないことでもあり、新商品開発の投資収益率(ROE)が低下することになります。また、目新しい商品が増えると、新しい商品を試す消費者増えるようになり、再購入される確率が低くなります。この結果、さらに新商品が開発されるようになり、リピート率が低下するという負の連鎖が生まれます。この結果、さらなるROEの低下につながります。
さらに、商品数が増えると、消費者は、選択することにフラストレーションを感じるようになり、フレーバーリキュール自体に不満を持つようになります。よって、市場自体の成長性が損なわれる可能性があるのです。
このように、乱発気味のフレーバーリキュールですが、消費者のアルコール離れを食い止めている役割を果たしているとも捉えることができます。実際、アメリカなどの先進国では、ビール類の売上が低迷しています。だからこそ、今日本でもフレーバーリキュールの新商品が増えているのかもしれません。
Smirnoff kissed caramel and ice-cake versions
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《今回のヒントのまとめ》
1) 世界的にフレーバーリキュールが売れているのは、飲料に関して消費者の知識が増加しており、目新しい商品で無ければ興味が惹けないからである。
2) また、美味しさだけでなく楽しさも欲しい消費者ニーズが、見た目も楽しめるフレーバーリキュール人気に火をつけている。
3) ただし、新商品開発競争が激化すると、弊害も起こる。新商品が乱発されると、ヒットしても大きな売上増加が期待できないことになり、商品開発のROEが低下する。
4) また、新商品を試す消費者が増えることによって、リピート率の低下を招き、更なる新商品開発をしなければならなくなる。
5) さらに、商品数が増えると、商品選択にフラストレーションを感じる消費者が増え、フレーバーリキュール自体に不満を持たれる恐れがある。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
普段、缶コーヒーやペットボトルコーヒーをほとんど飲まないのですが、たまたま飲んだこちらのコーヒーは、本当に美味しかった。
ほんのり香るオレンジの香りが、ペットボトルコーヒーらしからぬ上品な味わいを醸し出していました。
あまり甘くないのも、いいですね。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
先日、コンビニで、サントリーの注ぐだけでカクテルができる商品を見つけました。
コンビニにも置いているということは、それだけ売れている証拠かもしれません。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
メルマガ連動のブログサイトを作りましたので、
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