About

*

【704号】エレクトロラックスが教えてくれる、新興国での家電の売り方とは?

エレクトロラックスのデザイン開発室ロゴ

by courtesy of Electrolux Design Lab

 

 

◎本日のニュース

1)見出し
Wash, Rinse, Rebrand: Electrolux Spiffs Up Appliances in China



毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)

 

2)要約

スウェーデンのエレクトロラックス社は、中国の家電市場で、高級ブランドとして再出発を図ろうとしている。従来は大衆市場をターゲットに販売してきたが、低コストの中国メーカーに敵わないことがわかったからである。

 

また、同じ新興国であるブラジルでの成功体験も影響している。ブラジルでは、現地の大手メーカーを買収することにより、低コスト生産を可能にした。さらに、消費者の好みを緻密に探るマーケティング活動に力を入れ、消費者ニーズに合致する商品の開発を行っている。その結果、家電市場におけるシェアは二位を獲得した。

 

中国の家電市場は、販売台数で世界一位。さらに、欧米市場よりもその成長率は高い。よって、外国ブランドも多く参入しているが、シェアの大半は中国メーカーが抑えている。エレクトロラックスも約0.5%(2012年)に過ぎない。

 

◎キーセンテンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Now, conceding that its initial strategy was a flop, the Swedish appliance maker is preparing to reintroduce itself in China as a premium brand.

 

4)キーとなる英文の和訳

しかし現在、そのスウェーデンの家電メーカーは、最初の戦略を完全な失敗と判断し、高級ブランドとして中国で再出発しようと準備している。

 

5)気になる単語・表現

concede 他動詞 ~と容認する;~を(権利・特権として)許す、与える
flop 名詞 完全な失敗
initial 形容詞 初めの、最初の
appliance 名詞 (家庭用の小型)危惧、道具;電気(ガス)器具
reintroduce 他動詞 ~を再紹介する;~を再導入する

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

日本では小型掃除機でお馴染みの、エレクトロラックス(Electrolux)。中国市場では苦戦しているようです。ただし、中国市場で苦戦しているのは、エレクトロラックスだけではありません。日本や欧米メーカーは軒並み苦戦を強いられ、中国メーカーに牛耳られています。記事に掲載されていたシェアをまとめると、次のようになります。

【中国家電市場におけるシェア】

[1位]ハイアール(中国) 27.2%

[2位]GDミディア(中国) 13.5%

[3位]ガランツ・エンタープライズ(中国) 4.4%

[4位]パナソニック(日本) 4%

[5位]ボッシュ・シーメンス・ハウスゲレーテ(ドイツ) 2.8%

[6位]エレクトロラックス(スウェーデン)0.5%

このように中国市場で日欧米メーカーが苦戦するのは、中国メーカーの価格競争力が高いからです。つまり、安いことでシェアを獲得していることになります。実際、エレクトロラックスも、15年前より、中国メーカーに対抗し低価格路線を歩んできました。しかし、その結果が、0.5%のシェアに他なりません。そこで、販売戦略を大きく転換しました。これが、この記事の主題です。

その戦略転換をまとめると、次のようになります。

【エレクトロラックスが行う中国市場での戦略転換】

[ステータス]大衆向けブランド→高級ブランド

[差別化]価格→品質

一見すると、低価格の大衆ブランドから高価格の高級ブランドにシフトするように見えますが、決して高価格でもないようです。というのも、低コスト生産もさらに推し進めるからです。従来は、中国の自社工場で生産していましたが、4つの自社工場のうち3つを閉鎖。タイの工場からの輸入と中国での外注にて、コストダウンを行うようです。

このような戦略転換に至ったのは、ブラジルでの成功体験があるからです。ブラジルでのシェアは、二位の22%。成功に至った要因をまとめると、次のようになります。

【ブラジルでの成功要因】

[1]    低コスト生産→ブラジルの大手メーカーを買収

[2]    スピーディーで緻密な商品開発→ブラジル人へのインタビュー、70%ルール

1について、現地の大手メーカーを買収することにより、生産に規模の経済が働くことになり、その結果コストが大幅に削減されます。この低コスト生産の仕組みは、外注という形で中国に適応されています。

2は、ブラジル人消費者のニーズに合致した商品を開発するために、毎年5000人ものブラジル人にインタビューを行っています。さらに、新商品の試作品を競合する人気商品と一緒に消費者に見せて、7割以上の消費者がエレクトロラックスの商品を選ばないと発売しないという、「70%ルール」を設定・順守しています。この結果、超音波で汚れを取り除く洗濯機や、レシピが見えるディスプレー付きのキッチン用品を、開発・発売しています。また、今後、開発を加速させるために、数年前までは売上の2%ほどだった研究開発予算を約3%まで引き上げ、さらにこの比率を高める方針です。記事には明記されていませんが、中国市場で高級ブランドとして販売するにあたり、消費者インタビューや70%ルールが恐らく導入されることでしょう。

2の「スピーディー」に関しては、特に事例は紹介されていませんでした。しかし、CEOが、開発研究費を増やす目的として、“to speed innovation”「技術革新のスピードを速めるために」としているので、商品開発のスピードも成功要因の一つであることがわかります。

興味深いのは、低コスト生産を追求している点。高級ブランドとして展開するなら、コスト削減よりも商品開発に力を入れていいもの。コストが高くついても、価格に転嫁すればいいのです。しかし、新興国市場は、高単価商品を少量販売するよりもそれなりの価格でも大量に販売する方が、よりその成長の恩恵に預かることができます。実際、中国の家電市場は、販売台数において世界第一位であり、アジア・中南米の家電市場は、中間層の拡大により販売数量が飛躍的に拡大し、市場規模が2~3倍に拡大すると予想されています。この爆発的に拡大する市場で売上を最大化するには、シェア獲得競争に参加する必要があり、そのためには高級ブランドと言えども、低コスト生産が必要になるのです。

Electrolux 

Haier 

GD Midea 

Galanz Enterprises

BSH Bosch & Siemens Haugerate 

***************************

《今回のヒントのまとめ》

1)  スウェーデンの家電メーカー・エレクトロラックスは、中国市場でのシェア拡大を目指し、大衆向けブランドから高級ブランドへの転身を図ろうとしている。

2)  この戦略転換は、ブラジルでの成功体験を適応したものである。ブラジルでは、現地の大手メーカーの買収により低コスト生産を可能にするとともに、現地消費者の頻繁なインタビューや発売前の消費者テストを通して、より消費者ニーズに合致する商品開発を行い、シェア2位の獲得に成功している。

3)  また、商品開発スピードにもこだわり、素早い商品開発を行うために、研究開発予算を拡大している。

4)  興味深いのは、低コスト生産を追求した点。高級ブランドと言えども、販売数量が飛躍的に伸びる新興国でシェアを拡大するには低コスト生産が必要なことを、物語っている。

*************************


毎週火曜・土曜の18時、メルマガにて配信。

(サイトへの掲載は、翌日以降です。)

ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、

メルマガの登録をお願いします。(もちろん無料です。)


7)おすすめ商品・サービス

◎最近見つけたいいもの

こちらのドイツビールがかなり美味しく、再度購入しに行ったのですが、売り切れ。

かなり売れているようです。

ヴァイツェンという白ビールで、苦味よりもフルーティな飲みくちです。

カプツィーナ・ヴァイツェン

 

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

編集後記

アップルがiPhone5Cを導入したのも、

新興国でのシェア拡大を目指したもの。

低価格と高級感という2つの特徴を持つ商品なので、エレクトロラックスに似ていますね。

ただ、他の格安スマホと比べてまだまだ価格が高いので、売れるかどうかはわかりませんが。

 

高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao

高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com

高尾亮太朗のTubmlr⇒ ryotarotakao.tumblr.com

高尾亮太朗のGoogle+⇒ gplus.to/ryotarotakao

高尾亮太朗のPinterest⇒ pinterest.com/ryotarotakao/

今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

感謝・感謝・感謝です!

 

 

メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。

 

私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

ad

関連記事

新着記事

コメント/トラックバック

トラックバック用URL:

この投稿のコメント・トラックバックRSS




管理人にのみ公開されます

*

ad

PAGE TOP ↑