【717号】米小売チェーンのターゲット、アマゾンのサービスを真似る本当の理由
by courtesy of Sarah Gilbert
◎本日のニュース
1)見出し
Target Fills Its Cart With Some of Amazon’s Tricks
ウォール・ストリート・ジャーナルの最新情報をいち早く知りたい人は、
2)要約
小売チェーンのターゲットが、ネット通販でアマゾン・ドット・コムと似たようなサービスを提供している。その理由は、顧客の半数以上がアマゾンユーザーでもあり、その結果客数の減少が続くからである。
実は、2011年までターゲットは、ネット通販をアマゾンに委託していた。まさか、ネット通販のアマゾンが、実店舗の自社のビジネスを脅かすとは思わなかったからである。実店舗での販売だけでは成長は見いだせないので、ネット通販の拡充に力を入れるが、アマゾンの攻勢が続き、ネット通販売上は思ったほど伸びていない。
アマゾン対策として、実店舗を持つ利点を活かし、接客サービスに力を入れ、アマゾンに売上を奪われたベビー用品や化粧品の販売に励んでいる。また、店舗引き渡しサービスを始めるなど行うが、いずれも利便性においてアマゾンに劣っている。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Target Corp. has come up with an answer to Amazon.com Inc. Copy it.
4)キーとなる英文の和訳
ターゲット社は、アマゾン・ドット・コム社への対応策をついに発見した。
それは、真似るということ。
5)気になる単語・表現
come up with |
自動詞句 |
(考えなど)を思いつく;(人・物)を発見する;~に追いつく |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
ディスカウンターのターゲットがアマゾンを意識するのは、ターゲットの顧客がアマゾンに奪われていると考えるからです。実際、市場調査会社のデータによると、ターゲット利用者の62%が、来店した4週間以内にアマゾンを訪れています。恐らく、ターゲットの実店舗で気になった商品を、後日アマゾンで買うという消費行動が広がっているのでしょう。つまり、ターゲットはアマゾンのショールームと化しているのです。
実際、ターゲットは客数が3四半期連続で減少。実店舗でしのぎを削るウォルマート・ストアーズ社のみならず、アマゾンにも顧客が奪われているのです。この客数減を食い止めるために、実店舗・ネット通販ともに対策を立てています。
【客数増を狙ったターゲットの対策】
[実店舗対策1]生鮮品の拡充→来店頻度を高める
[実店舗対策2]自社ブランドのクレジットカード・デビットカードの白黒→顧客の囲い込み
[実店舗対策3]カナダへの進出→新規顧客の獲得
[実店舗対策4]接客を強化し、利益率の高いベビー用品・化粧品の売り込み→ネット通販ユーザーの獲得
[ネット通販対策1]店舗引き渡しサービスの開始→ネット通販専業との差別化
[ネット通販対策2]アマゾンとの類似サービスの提供→顧客ニーズへの対応
実店舗対策として、毎日消費する生鮮品の品揃えを増やせば、来店頻度が高まり、客数は増加します。また、自社カードの発行を通じ、割引などのサービスを提供すれば、他小売店よりもターゲットを利用する動機が高まり、既存顧客の喪失回避・囲い込みができます。これらは成功しているようです。
一方、失敗しているのが、カナダへの進出。新規顧客獲得を狙った市場開拓ですが、リピーターが増えず苦戦しているようです。実店舗を持つ利点を活かしたのが、接客の強化によるベビー用品や化粧品の販売強化。この2カテゴリーは、ネット通販に売上を奪われた商品群。さらに、利益率が高いので、実店舗の売上が減少すれば、利益にもマイナスに働きます。ネット専業のアマゾンにはできない接客を通じて、これら2カテゴリーの売上を、アマゾンから奪い返そうという目論見です。
実店舗の利点を活かした試みは、ネット通販対策でも行われています。それは、店舗引き渡しサービスです。しかし、長年他の小売チェーンも実施していますが、店舗に引き渡し専用のスペースが必要となるというデメリットがあります。そのため、ターゲットの実店舗で引き渡しサービスを行っているのは、ほんの一部に限られています。
アマゾン対策そのものなのが、アマゾンが提供する類似サービスの提供です。例えば、おむつの定期配送サービスや動画ストリーミングサービス、送料無料・割引が受けられる会員制度など。しかし、これらの類似サービスに対する評判は、さほど良くありません。それは、品揃えや割引率がアマゾンには敵わないからです。
このように、ターゲットが、アマゾンの真似をすることによって、アマゾンへの対抗に力を入れるのは、アマゾンへの顧客流出が他小売りチェーンよりもひどくなっているからです。先ほどの顧客のアマゾン利用率を2007年と比べると、その深刻さがよくわかります。
【ターゲット顧客のアマゾン利用率の推移】
33%→62%
62%という数字は他の小売チェーンと比べて格段大きくはないですが、利用率の増加は極めて大きいようです。この顧客流出の拡大を食い止めるために、ターゲットはアマゾン対策に力を入れるのです。
ターゲット顧客のアマゾン流出が大きい要因は、次の通り。
【ターゲット顧客のアマゾン流出要因】
[1]2011年までターゲット通販サイトをアマゾンに委託していたから
[2]ターゲット顧客のネット利用率・クレジットカード所持率が高いから
[3]ターゲットの取扱商品がアマゾンに似ているから
1について、アマゾンに委託していたので、ターゲット通販サイトの利用者は、クリック一つでアマゾンの他のページに移ることができます。ターゲットは、ネット通販の売上拡大を通じて、みすみすアマゾンの売上拡大に貢献していたことになります。自社サイトへの移行により、これにはメスを入れました。
2は、顧客属性によりアマゾン利用率高まるということです。ターゲット顧客は、他の小売チェーンよりもスマホ・タブレットの所持率高い傾向があります。また、自社のクレジットカードを発行しているなど、クレジットカードの所持率も高い。これらにより、アマゾへの訪問やアマゾンでの購入が容易になります。対照的なのが、ダラージェネラル(Dollar General)などの1ドルショップやウォルマート。これらの顧客は低所得者が多いため、スマホ・タブレットの利用率やクレジットカード所持率が低くなります。これが奏功して、アマゾンへの顧客流出を回避できているようです。
3は、取扱商品がアマゾンにも売っていれば、顧客のアマゾン利用率も高まります。こえれは、ある程度どうしようもないことかもしれません。
ターゲットは、実店舗のショールーム化やアマゾンへの顧客流出を食い止めるために、いろいろな対策を講じていますが、利便性においてアマゾンにはなかなか敵いません。小さな子供を持つ女性の言葉がそれを象徴しています。出産までターゲットの顧客であった彼女は、出産後より便利なアマゾンの定期購入サービスを利用し始めたようです。その結果、ターゲットへの来店は激減。その理由は、アマゾンの方が安いからではなく、便利だからです。わざわざ小さな子供を連れて買い物に行くのは、面倒極まりないのです。その点、アマゾンを利用すれば、自宅で注文・受取までできます。低価格ではなく利便性の高さが、消費者の心を鷲掴みしているようです。
このように考えると、ターゲットがアマゾンの真似までして対策を練るのは、それだけアマゾンの影響力が増したから、と捉えることができます。小売企業ならば、どんな企業でもアマゾンの影響を受ける可能性があるのです。特に、顧客属性や取扱商品でアマゾンと競合する小売企業はアマゾン対策は必須となり、消費者が求める利便性を高める必要があります。
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《今回のヒントのまとめ》
1) ターゲットがアマゾン対策に力を入れるのは、実店舗のショールーム化やアマゾンへの顧客流出が拡大しているからである。実際、客数は3四半期連続で減少している。
2) 実店舗の客数増対策は、来店頻度の向上や既存顧客の囲い込み、新規顧客の獲得を狙ったもの。
3) 一方で通販サイトの販売強化策は、実店舗を持つ利点を利用した店舗引き渡しサービスや、アマゾンの類似サービスの提供である。アマゾンへの顧客流出食い止めを狙う。
4) しかし、顧客属性や取扱商品でアマゾンと競合しやすいターゲットは、利便性においてアマゾンに及んでおらず、今後も顧客を奪われる可能性がある。
5) それだけアマゾンの影響力が強くなったということであり、アマゾンと競合しやすい小売チェーンは、アマゾン対策が必須となるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
先日、こちらの格安ワインを飲みました。
実は、カルディの特売にて500円で購入。
格安ピノ・ノワールは失敗することが多いのですが、これが意外に美味しかったんです。
カリフォルニアだったからかな。
今でも一部店舗で販売されているので、熟したピノを飲みたい人は是非。
ちなみに神戸の店舗では以前598円で販売されていました。
(今はプロパーの798円です。)
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
セブン&アイグループが、ネットと実店舗のオムニチャネル強化に力を注ぐのは、アマゾン対策なのかもしれません。
日本では行っていないですが、アメリカではアマゾンによる生鮮食料品販売も始まっています。
物販もサービスによる差別化が必要な時代が来ているということですね。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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