【737号】アメリカ実店舗型小売の悲鳴「お客さんが来ない」、その原因と対策とは?
by courtesy of Kevin Lim
◎本日のニュース
1)見出し
Stores Confront New World of Reduced Shopper Traffic
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2)要約
クリスマス商戦の不振を最初に発表したのは、家電量販店のベストバイ。不振要因は、値引き拡大による利益率低下と売上低迷である。しかし、これはベストバイに限ったものではない。アメリカの実店舗型小売は、総じてクリスマス商戦に苦戦している。来店客数の減少が主要因である。
実店舗型小売の来店客数が減少傾向にあるのは、ネット通販のせいだけではない。消費行動の変化が、大きく影響している。つまり、ネットで商品を探し、一番安い店舗で購入する消費行動が根付いたため、実店舗に来店する動機が大きく低下しているのだ。
金融危機とそれによる景気後退によって、小売企業の客数は大きく減少した。ただし、景気が回復基調になってから5年も経つが、客足は戻らない。来店客数の減少は、店舗閉鎖に拍車を掛ける。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
A long-term change in shopper habits has reduced store traffic—perhaps permanently—and shifted pricing power away from malls and big-box retailers.
4)キーとなる英文の和訳
長期に渡る買い物客の習慣の変化は、来店機会を減少させてきた。
恐らく、これはこの先も続くだろう。
その結果、ショッピングモールや量販店から価格競争力を奪ってきた。
5)気になる単語・表現
habit |
名詞 |
習慣;癖 |
permanently |
副詞 |
永久に、不変に |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
実店舗型小売とは、ショッピングモールや量販店などの、リアルに店舗を構える小売企業。この実店舗型小売が直面する一番の課題は、ショールーミングと思われてきましたが、それ以上に深刻な問題があるようです。それは、来店客数の減少。既存店売上などで出てくる購入客数(一般的には客数)とは異なります。購入しない人も含めた、実店舗に来店する消費者の数が減少しているのです。
記事に掲載されているデータは、以下の通り。
【来店客数の減少に直面する実店舗型小売】
[2013年]前年比14.6%減
[2012年]前年比16.3%減
[2011年]前年比28.2%減
→過去3年間で約半分になる
[クリスマス商戦におけるショッピングモール店舗への訪問数]
2013年 モール平均で3店舗
2007年 モール平均で5店舗
来店客数減少の要因をまとめると、次のようになります。
【実店舗型小売の来店客数が減少している要因】
[1] ネット通販の普及
[2] メディアからデジタルデータへのシフト
[3] 消費行動の変化
[4] 日用品定期購入サービスの普及
[5]
1は、ネット通販で購入する人が増えれば、その分実店舗での購入が減ることになります。店舗で確認せずに購入できる単価の低い商品は、ショールーミングさえ起こらないので、来店動機さえ無くなります。また、ネット通販は、おすすめ商品の提示など、低価格だけをウリにしているのではなく、ついつい買ってしまう仕掛けを施し、売上を伸ばしています。この結果、実店舗小売に来店する必要がなくなり、来店客数の減少につながります。
2は、特に家電量販店やCDショップに影響を及ぼします。従来は、CDなどのメディアで購入していた音楽やパソコンソフトが、データで購入されるようになると、来店する必要は無くなります。フールー(Hulu)などの動画ストリーミングサービスが普及し、DVD販売金額も大きく減少しています。
3は、来店客数を減少させた一番の要因。これまでは、実店舗で気に入った商品を、より価格の低いネット通販で購入するショールーミングが問題視されていました。ショールーミングでは、来店客数は増えるものの、売上に貢献する購入客数(客数)が減少するからです。しかし、ネットで欲しいモノを決めて、一番値段の安い店舗で購入するという消費行動が一般化してからは、実店舗で確認すらしなくなります。これが、来店客数を大きく減らすことになります。そして、価格の一番低い店舗は、大抵通販サイトなので、実店舗は大きな打撃を受けることになります。
来店客数の減少が、消費行動の変化によって引き起こったものならば、景気動向とは関係のなく、今後も続くものと思われます。実際、ウォルマートやターゲットなどの量販店では、ガソリン価格が下落しても、来店客数が減少。もちろん、不安定な経済状況も影響していますが、景気回復が始まって5年経過しても、クリスマス商戦の来店客数が年々減少していることを考えると、景気動向と関係ないと言っても過言ではありません。
4は、アマゾンの「サブスクライブ&セーブ」を代表とする日用品の定期購入サービスの利用者が拡大することにより、日用品目当ての来店機会も減少しています。日用品は、単価が低く、購入機会の多い商材だけに、日用品を目的とした来店が減少すれば、GMSやホームセンター・スーパーへの訪問機会が減り、来店客数の減少をもたらします。
より深刻なのは、3により単価の高い商品も値段の安い通販サイトで買うようになり、4により日用品も通販サイトで定期的に購入するようになれば、衝動買いの可能性が著しく減少するということです。衝動買いする商品の利益率は高いだけに、実店舗型小売の収益に打撃を及ぼします。
このように、店客数の減少に直面した実店舗小売企業は、傷口を少しでも小さくしようと、不採算店舗の閉店を進め、一方でネット通販への投資を拡大させています。その結果、販売面積の増加が、金融危機前と比べて8分の1にまで縮小しています。
【実店舗の販売面積の増加数】
[2013年]4400万平方フィート
[2006年]3億2500万フィート
※ 主要54都市
これが、実店舗型小売からネット通販へのシフトにさらに拍車を掛け、来店客数がさらに減少することになります。
ただし、実店舗型小売の中には、ネット通販への投資を、単にネット通販売上を伸ばすだけでなく、強みである実店舗を活用するために行っている企業もあります。例えば、百貨店大手のメーシーズは、840店の実店舗の半数以上を、ネット通販商品の倉庫として活用しています。つまり、注文品を実店舗から配送することで、従来なら倉庫に眠っていたであろう在庫品を店頭に並べることができ、クリスマス商戦での店頭売上拡大を促せます。同様に、ベストバイでは、実店舗からの配送可能店舗を400店以上に拡大し、配送時間の短縮に努めています。
記事には説明がなかったですが、実店舗を配送拠点にすることにより、実店舗での引き渡しも可能になります。それはそのまま来店客数の増加になるだけでなく、店頭で新たに商品を気に入ってもらえれば、実店舗売上の増加にも寄与します。
しかし、それだけでネット通販の便利さに勝るわけではありません。ついつい買ってしまう仕掛けという点では、現状の実店舗型小売では、ネット通販に負けているからです。購入履歴や閲覧履歴からおすすめ商品を提案するネット通販の強みを取り入れるべく、顧客の好みや購入履歴を将来の購入につなげる仕組みが必要なのは、間違いありません。それは、ビッグデータでもあり、接客でもあります。
ネット通販との連携だけに頼るだけでなく、ついつい買ってしまう仕掛けを作ることこそ、来店したい実店舗を作る上で一番重要なように思えます。
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《今回のヒントのまとめ》
(1) 実店舗型小売が直面する一番の課題は、ショールーミングではなく来店客数の減少である。
(2) その要因には、「ネット通販の普及」「デジタルデータへのシフト」「消費行動の変化」「日用品の定期購入サービスの普及」などがあり、特に消費行動の変化の要因が大きい。
(3) 消費行動の変化とは、実店舗ではなくネットで欲しい商品を見つけて、一番安い店舗で買うというもの。値段の一番安い店とは、大抵通販サイトなので、実店舗の出る幕はない。
(4) そこで、実店舗型小売は、拡大するネット通販への投資を増やす一方で、店舗閉鎖を進めている。これも、来店客数の減少につながる。
(5) 一部の店舗で、実店舗をネット通販の配送拠点に活用するなど、強みを活かす動きがある。さらに実店舗には、ネット通販の持つ「ついつい買ってしまう」仕掛けも必要になるだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
これまではケシポンを使っていたのですが、インクがすぐに無くなるなど、面倒なので、ついにシュレッダーを購入しました。
いろいろ悩みましたが、選んだのはこちら。
大きさ・消音性・使いやすさ、そして価格で、一番バランスがいいと判断したからです。
そして、実際に使ってみると、少し音は大きいものの、そこそこのスピードで紙を吸い込んでいき、たまった個人情報付き紙を処分できました。
大丈夫とは思いますが、夜間の利用はやめておこうと思います。
ちなみに、コクヨの商品も検討しましたが、シュレッダー後の紙片が大きいので却下。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
日本でも、高齢化が進めば、来店客数の減少に直面するかもしれません。
ただし、阪急うめだ本店の人混みを見れば、その懸念はまだだいぶ先のようにも感じます。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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