【768号】失敗事例から学ぶ、シェアビジネスの盲点

Photo:Sharing Is Caring - Fotosöndag By:Niklas Wikström
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◎本日のニュース

1)見出し
Startups Want to Be the Next Airbnb, Uber

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2)要約

シェア経済に着目したスタートアップ企業が、ユーザー層を拡大している。この成功を受けて、同様のビジネスモデルを活用する起業家が増加している。しかし、成功しているのは一部であり、現実には失敗事例が増えている。

失敗要因の多くは、資金ショートによるもの。クリティカルマスの獲得に苦戦し、予想を上回るコストに直面し、挫折する例が多い。また、顧客のサービス利用回避の容易さや、リピート率の低さ、規制による制約・既存企業の反発に直面する企業もある。

◎キーセンンスとその翻訳

3）キーとなる英文

Most ran out of money, following struggles that ranged from difficulties building a critical mass of supply and demand, to higher-than-expected operating costs.

4）キーとなる英文の和訳

多くは資金ショートに直面した。

それは、供給と需要のクリティカルマス獲得の困難さから、想定を大きく上回る運営コストにまで多岐に及び努力するも、報われなかった。

5）気になる単語・表現

run out of	自動詞句	～を使い果たす
range from	自動詞句	～から～へ及んでいる、またがる
follow	他動詞	～の後についていく
struggle	名詞	もがき；苦闘、努力

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

エアビーアンドビー（Airbnb）やウーバー(Uber)などの成功を受けて、シェアビジネスを指向する起業家が増えているそうです。シェアビジネスとは、消費者や企業をモノの利用で結びつけて、その手数料から収益を上げるというビジネス。エアビーアンドビーは、空いている個人の部屋を、ウーバーは自動車のスペースを扱います。ウーバーについてはシェアというよりも、配車サービスと言った方がいいかもしれません。シェアビジネスの成功事例として紹介されるのは、運転手と乗客を結びつけるサービスとして創業したからでしょうか。

このように成功事例が大きく取り上げられる一方で、挫折するサービスが増えているのも現実。失敗事例の共通点をまとめることで、シェアビジネスの難しさと成功の必要条件が見えてきます。失敗要因をまとめると、次のようになります。

【シェアビジネスの失敗要因】

［1］利益額に対する顧客獲得コストの高さ

［2］リピート・ニーズ自体の弱さ

［3］サービス回避のしやすさ

［4］利益額に対する運営コストの高さ

［5］既得権益による制約・反発

1について、手数料ビジネスのために、一回の利用でさほど大きな利益が見込めない一方で、顧客獲得コストが高く付き、ビジネスとして合わないことが多いようです。その結果、資金ショートが起こり、閉鎖に追い込まれます。

例えば、家庭教師と生徒をマッチングさせるチュータースプリー(Tutorspree)では、2011年1月にサービス開始するもの、成長に必要な需要を獲得できずに、2013年8月に閉鎖。家庭教師が欲しい見込み客の集客に失敗したのです。

また、高級車のカーシェアサービスのハイギア（HiGear）では、サービス開始4ヶ月後に売上100万ドル、400台以上の登録を獲得。ただし、売上の 30％の手数料収入しかない一方で、一回の利用者獲得に約300ドルもネット広告費を費やすことに。一回の手数料収入が、平均で約90ドルなので、赤字を垂れ流すことになります。これなら、100台の高級車を購入して、レンタルした方が安く付きます。閉鎖に追い込まれた直接のきっかけは、盗難クレジットカードによる高級車の搾取事件ですが、もともとのビジネスモデルが破綻しており、閉鎖は秒読み状態であったと言えます。

2 について、6ヶ月以内にリピートしなければ、顧客はその商品の存在を忘れるようです。これは、ブラックジェット(Blackjet)というシェアビジネスの投資家の言葉。　ブラックジェットは、プライベートジェットのシェアビジネス。プライベートジェットは毎日利用するほど安いものではありません。一方、毎日利用できるほど裕福な人なら、自分で買うことでしょう。つまり、たまに利用する人向けにシェアビジネスを提供しても、そうリピートしないために、ビジネスとして成り立ちにくいのです。顧客獲得コストの高さも、ネックになります。対照的なのが、ウーバー。こちらは一日に3回でも利用するもの。リピートしにくい商品ならば、単価を高く設定すればいいのですが、手数料収入に依拠するビジネスモデルなので、そうもいきません。

同様にリピートが少ないために閉鎖に追い込まれたのは、日用品のシェアサービスのネイボロードットコム(Neighborrow.com)。掃除機やハンマー・フードミキサーなどのシェアを想定していたようです。しかし、電機ドリルが無くて死ぬような緊急事態は、ほとんどありえません。リピートというよりも、ニーズ自体が弱いのです。結局、サービス開始4ヶ月後に閉鎖に追い込まれました。

3について、サービス回避のしやすさとは、無料サービスの存在や中抜きのしやすさのこと。例えば、相乗りサービスのライドジョイ(Ridejoy)。2011年に創業し、1ヶ月に利用者は 30％も増開始、2500人以上を獲得しました。推定利用回数は10000回で、この数字だけを見ると、成功したサービスのように思えます。しかし、大学サイト内の相乗りフォーラムなど無料サービスとの激しい競争にさらされることになります。さらに、利用者が運転手に直接支払い、サービスの利用を回避する利用者が増加しました。この結果、運転手の登録件数が十分集まらなくなり、2013年夏に閉鎖しました。

4について、顧客獲得コストだけでなく、運営費の予想以上の大きさにより直面する事例もあります。それは、ペット飼い主とペットシッターをマッチングさせるドッグヴァケイドットコム(DogVacay.com)。運営コストの半分以上、従業員52名のうち30名をカスタマーサポートに費やしています。というのは、顧客の質問が相次ぎ、終日回答しなければならないからです。さらに、ペット事故が起こってからは、総額300万ドルのペット保険に入ることになり、運営費をさらに押し上げています。

5について、新しいサービスは規制や既得権益者の反発を受けるものです。例えば、個人がアパートを知らない人に貸すことや、乗客に代金を請求することを禁じる州があり、この規制がエアビーアンドビーやウーバーの営業を妨害しています。同様に、両サービスは、既得業者による反発にも直面しています。この結果、両企業は、政府に働きかけるための専門部隊を抱えることになり、運営費の増大を招いています。

結局、シェアビジネスはマッチングビジネスの一種であり、創業しやすいサービスである一方で、手数料収入というか細い収入源に頼るという弱点があります。この弱点を克服するには、リピートの多い商材を選び、客数を増やす必要があります。エアビーアンドビーが好例です。または、手数料収入以外の収益源を獲得しなければなりません。これは、マッチングビジネスからプラットフォーム提供に転換した（と思われる）ウーバーが好例でしょうか。

失敗事例からは、手数料収入に依存するマッチングビジネス・シェアビジネスの限界が学べます。

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《今回のヒントのまとめ》