【1109号】破産したアパレルブランドをネット通販で復活させるのに必要なたった一つの事とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Beyond Bankruptcy: How Failed Stores Come Back Online
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2)要約
破産したアパレルブランドが、ネット通販限定で復活する事例が増えている。ネット通販限定にすることで気まぐれな元顧客の利用が見込め、またネット通販運営を専門とする業者が実店舗販売にはないマーケティング・物流を担う。
実際、競争が激しく返品も多いネット通販は、販売員の人件費が必須の実店舗販売よりもコストは低い。ただし、実店舗販売からネット通販にスピーディーにシフトしないと、元顧客を他ブランドに奪われかねない。
3)キーとなる英文
Investors snapped up Wet Seal, American Apparel and The Limited, betting fickle consumers who long ago stopped visiting their shops would flock to new online-only storefronts.
4)キーとなる英文の和訳
投資家がウェットシールやアメリカンアパレル、ザ・リミテッドを買収に動くのは、長らく実店舗に来店しなかった消費者が、新たなネット通販限定店舗に群がることに賭けるからである。
5)気になる単語・表現
snap up | 他動詞句 | ~にパクっとかみつく |
fickle | 形容詞 | 気まぐれの |
nimble | 形容詞 | 素早い |
temporary | 形容詞 | 一時の |
(特に覚えておきたい単語)
nimble
- able to move quickly and easily
- able to think and understand quickly
【コメント】
「速さ」だけではなく、「簡単さ」という要素も含まれる。
6)ビジネスのヒント
日本だけではなくアメリカでも、市場全体が苦しいアパレル市場。一番の要因は、ネット通販(特にアマゾン)がアパレル販売が一般的になったからでしょう。それを逆手に取り、実店舗で破産したアパレルブランドを、ネット通販限定ブランドとして復活させる事例が増えています。
そのパターンは、
1)破産しアパレルブランドを
2)投資ファンドが買収して、
3)マーケティング業務や物流業務などネット通販運営に長けた専門業者と提携することで、
4)ネット通販専業ブランドとして復活させる
というものです。
1の破産したアパレルブランドとは、ウェットシールやアメリカンアパレル、ザ・リミテッドなど。実店舗で一世を風靡したものの、ネット通販市場の拡大により、商品に割高感が持たれるだけではなく、ブランドに新鮮味も無くなり、店舗閉鎖・破産に追い込まれるというパターンです
2の投資ファンドとは、ゴードンブラザーズグループやシカモアパートナーズ、マーキーブランズなど。小売やブランド買収に特化した投資ファンドです。ブランド復活に必須なカネを提供します。
3のネット通販運営専用企業とは、ワンストップ・インターネットやニューマインなど。集客・販売・フルフィルメント(受注から出荷まで)・返品などネット通販で発生する業務に精通しています。
これら3社が協力することで、まだ価値の残るアパレルブランドを、ネット通販専用ブランドとして復活させることができるのです。
【破綻した実店舗型アパレルブランドをネット通販専用ブランドとして復活できる理由】
- 消費者は気まぐれだから
- ネット限定ブランドとして新鮮味があるから
- マーケティング・フルフィルメントなどネット通販運営に長けた企業と提携できるから
- 実店舗で販売するよりも固定費が低く、利益を上げやすいから
- 破産したものの、ブランドという知的財産と顧客をまだ持っているから
1について、気まぐれだからこそネット通販市場に奪われ、破産に追い込まれました。しかし、2の新鮮味が有るからこそ、今度は逆に集客・販売が見込めるのです。
3は戦術の通り。重要なのは4。アパレルは、実店舗販売とネット通販ではコスト構造が大きく異なります。
【150ドルのプレミアムジーンズの実店舗販売・ネット通販でのコスト構造の違い】
実店舗販売:原価45ドル、販売員人件費27ドル、店舗への物流費4.5ドル、家賃22.5ドル、他運営費用12ドル、販売費用15ドル→利益24ドル(利益率16%)
ネット通販販売:原価45ドル、送料・返品費用10ドル、フルフィルメント費用5ドル、運営費用(ソフト・メンテナンス)30ドル、販売費用15ドル→利益45ドル(利益率30%)
実店舗販売では、販売員人件費・家賃負担の大きさが理解できると思います。ネット通販販売では、これら2つの大きな費用が無くなるので、他に新たなコスト負担が発生するものの、利益率は向上するのです。投資ファンドは、このコスト構造の違いと、ブランドとしての認知度をある程度残るアパレルブランドを活用することで、集客コストを含む販売費用を節約できると考えるのでしょう。ならば、ネット通販限定ブランドとして復活可能です。
実店舗ブランドをネット通販専用ブランドとしてシフトさせるのに一番難しいのは、物流です。元々物流倉庫から店舗への配送をベースに作られた仕組みを、エンドユーザー宅への宅配に作り変えるのはそう簡単なことではありません。だから、ネット通販運営専用企業が必要なのです。また、送料・返品無料が当たり前の市場だけに、物流コスト引き下げの努力も必須。UPSなど大手運送会社と交渉して、運賃を引き下げなくてはなりません。
このように実店舗販売で失敗したアパレルブランドをネット通販専用ブランドとして復活させる方法を述べてきましたが、一番重要なことはスピードです。いかに、破綻したブランドの通販サイトをスピーディーに作成・開設するか。いかに速く、店舗配送をメインとした物流システムを、宅配向けに切り替えるか。速くしないと、まだ残ったブランド認知度がさらに下がるだけではなく、元顧客が他ブランドに奪われるからです。そうなれば、破産したブランドを活用する意味がありません。新規ブランド同様に、販売費用が高くなるからです。いろんな業界での成功の方程式で必須のスピードですが、ここでも必須とされます。
【破産したアパレルブランドをネット通販専用として復活させるのに一番重要なこと】
スピード=スピーディーに通販サイトを開設し、スピーディーに物流システムを宅配主体に切り替えること
ただし、問題点もあります。
【破産したアパレルブランドのネット通販復活で起こる問題点】
- スピーディーにネット通販専用ブランドに切り替えても、復活できる保証はない。
- 一時的にネット通販を強化するだけで、最終目的は実店舗販売を目指すブランドがある。
1は当たり前と言えば当たり前で、100%はありません。やはり、破綻する前の人気・認知度に左右されます。2について、ネット通販専用ブランドとして再出発を果たしても、過去の栄光が頭をよぎるのか、実店舗販売を目指すブランドもあります。実店舗内で、モノ・サービスを通じてブランドを感じてこそ、欲しくなると考えるからです。欲しいと感じてもらえれば、価格競争に巻き込まれにくくなります。しかし、コスト構造の高い実店舗販売だけに、また破綻する可能性が高いのも事実です。
【注目点】
- 需要のなる商品は、コスト構造を変えることで儲かるビジネスに転換できる。
- 実店舗は、販売店ではなくブランドを感じられるショールームの意味合いが高くなる。
1について、コスト構造の違いは他商材にも適用可能です。金融を含めたネットへのシフトは、コスト構造の違いに着目したからです。
2について、実店舗をショールームとして活用するのは、ウォルマートに買収されたボノボス。特に単価の高いブランド品や耐久消費財は、実店舗での接客やディスプレーでブランドや商品特性を知ってもらい、実際の購入はネットでという動きが強まるかもしれません。実店舗は顧客の集まるサロンのようになれば、顧客を組織化でき、囲い込みが可能になります。
一方で、ネット通販は参入障壁が低いのも事実であり、激しい競争を余儀なくされます。いくら知名度が残っているとは言え、実店舗で失敗したブランドをネットで復活させるのはそう簡単なことではないでしょう。一時的なブームで終わる可能性も否めません。
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《今回のヒントのまとめ》
- 実店舗販売で破産したアパレルブランドがネット専業で復活できるのは、カネを出す投資ファンドが買収し、ネット通販での販売・物流に長けた専門企業が協力するからである。
- さらに、コスト構造の違いも大きい。実店舗販売には必須の販売員の人件費と家賃という固定費のないネット通販では、利益を出しやすいことも要因である。
- 一番重要なのは、スピーディーに通販サイトを開設し、店舗配送主体の物流を宅配主体に切り替えることである。スピーディーに転換しないと、元顧客が他ブランドに奪われかねない。
- 固定費などコスト構造を変えることで、儲かるビジネスにできる商材は他にもあるだろう。
- 今後、実店舗は販売店ではなくショールーム・サロンとしての意味合いが強まるかもしれない。
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誰がアパレルを殺すのか [ 杉原 淳一 ]
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけた気になるもの
酒類規制の強化により、ビールの店頭価格が上昇しています。
値上げ後から買ったことがありませんが、第三でもケースで2500円前後はなかなか見当たらないみたい。
これでは、ますます焼酎シフトが自分の中で進みそうです。
そんな中で見つけたのが、ビールのふるさと納税。
こちらも規制が強化されましたが、まだまだ1万円で1ケースの記念品(?)は残っているようです。
編集後記
結局、買取業者に車を買い取ってもらうことになったのですが、その価格の低さに閉口してしまいました。
まだまだ乗れる車ですが、走行距離や古さ・人気のなさ・傷の多さが影響したのか、本当に微々たる金額です。
自分で廃車にした方が、手取りは多いというレベルですよ。
愛着を持って10年乗っていた車だけに、悲しいの一言。
しかし、これが現実なので、受け入れざるを得ません。
車の乗換は、もう少し計画的にした方が経済的なメリットは大きい、というのが今回の教訓です。
次の車は大事に乗りたいものです。
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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2017/09/03 | ファッション・アパレル業界 ネット通販, 店舗, 販売戦略
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