【1131号】ウォルマート・ストアーズ社のアマゾン対策は小選挙区型?
◎本日のニュース
1)見出し
Wal-Mart Courts Lord & Taylor for Online Challenge to Amazon
【出典】
www.wsj.com/articles/wal-mart-nears-web-deal-with-lord-taylor-1508410801
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2)要約
ウォルマート・ストアーズ社は、アマゾン対策として、自社の通販サイトに百貨店のロード・アンド・テイラーを加えることに合意が近いとされている。ウォルマートのネット・モール構想の一つである。
ロード・アンド・テイラーにとっても、客数減に悩む百貨店売上を補うことなる。さらに、自社の通販サイトの集客増にも、寄与することを目論む。
一方のアマゾンは、ファッションブランドの拡充に動く。また、ホールフーズ買収など、実店舗小売への進出も進める。
3)キーとなる英文
Wal-Mart, seeking to ramp up e-commerce sales after years of sluggish growth, wants to turn walmart.com from a discount site into an online mall that would also feature higher-end brands, the people said.
4)キーとなる英文の和訳
ウォルマートは、長年の売上低迷を経てネット通販売上の拡大を目指している。
その方針として、通販サイトのウォルマート・ドット・コムを、ディスカウントサイトから高級ブランドも扱うネットモールに変えようとしている。
5)気になる単語・表現
destination | 名詞 | 目的地 |
ramp up | 他動詞区 | ~を増やす |
(特に覚えておきたい単語)
【ramp】
(名詞1)(段違いの道路・建物のフロアーなどを結ぶ)傾斜路、スロープ;(高速道路の)ランプ
(名詞2)(飛行機用の)タラップ
(名詞3)
(自動詞)暴れまわる
【ramp-up】
(生産量の)増加
(コメント)
スロープのイメージ。
6)ビジネスのヒント
何とも、選挙後の世間の話題を盛り込んだタイトルになっていますが、次の号ではウォルマートとは全く異なるアマゾン対策をするターゲットを取り上げる予定です。その違いがわかるように、ウォルマートは「小選挙区型」と名付けました。簡単に言えば、アマゾンと同じ戦場で戦う直接対決型とも言えましょうか。
では、ウォルマートが戦うアマゾンと同じ戦場とは何か?
【ウォルマートが選択したアマゾンと同じ戦場】
- ファッション・アパレル販売
- 何でも揃うネットモール
1について、今回取り上げたのは、ウォルマートとロード・アンド・テイラーとの提携が合意に近いという記事です。この提携とは、ウォルマートの通販サイトであるウォルマート・ドット・コムでロード・アンド・テイラーの商品を販売するということです。ウォルマートの狙いは、アマゾン同様にファッション・アパレル商品の品揃えを増やすこと。これまでにも、ボノボス(男性用アパレル)・ムースジョー・シューバイを加えてきました。ただし、これらはどちらかというと中小ブランドであり、ボノボスは買収まで行いました。今回のニュースバリューは、百貨店のロード・アンド・テイラーという大型ブランドの商品を取り扱うという点です。
アマゾンも、ファッション・アパレル品の拡充に力を入れています。例えば、ナイキは、アマゾンでの公式販売を発表しました。そのほかにも、カルバンクラインやケートスペード・リーバイスなどと、販売に関する提携に合意しています。
2について、ウォルマートは、単にファッション・アパレル品の拡充に動いているのではなりません。高級ブランドを増やそうとしているのです。その目的は、ウォルマート・ドット・コムを、ディスカウントサイトからネットモールに転換すること。「ネット通販で買うなら、ウォルマート」となるように、ブランディングを進めているのです。その一環として、配送物を詰める段ボールを青のウォルマートの名前の入ったモノに変えています。
これは、アマゾンがこれまで行ってきたことに他なりません。実際、「ネット通販ならアマゾン」と考える人は多く、プライム会員なら、アマゾンで買わないと損するという気まで起こります。ウォルマートは、アマゾンと同じ市場で戦おうとしているのです。
一方、アマゾンは、ウォルマートの強みである実店舗への進出を進めています。その最たるものは、高級スーパー(私は少し違和感がありますが)ホールフーズ・マーケットの買収。さらに、百貨店のコールズと提携し、82のコールズ店舗でアマゾンで購入した品が返品できるようになりました。百貨店との提携は、ウォルマート・アマゾン全く同じです。
ロード・アンド・テイラーにとっても、ウォルマートとの提携にメリットが生じます。
【ロード・アンド・テイラーのウォルマートとの提携のメリット】
- 実店舗の客数減・売上減を補えること
- ネット上の露出が増えることで、自社サイトの集客増が期待できること
- 将来的には、ネット通販購入品をウォルマート店舗で引取・返品できること
1について、実店舗の売上低迷の打開策としてネット拡充を目指すウォルマートと同じです。
2について、ウォルマート・ドット・コムで販売されるようになりますが、独自サイトもそのまま継続します。というのも、集客力が断然大きいウォルマート・ドット・コムで販売されることで、ロード・アンド・テイラーの商品がネット検索されるようになり、結果的に独自サイトの売上増が期待できるからです。
3は、あくまでまだ創造の話。実店舗数が多いウォルマートで、ロード・アンド・テイラーの通販品の引取・返品ができるようになれば、そりゃ利便性は大きく改善します。
このように、アマゾンと同じ土俵で戦うことを決めたウォルマートですが、課題もありいます。
【アマゾンと直接対決を選んだウォルマートの課題】
- 安売りイメージを嫌い高級ブランドが集まりにくい
- アマゾンに次ぐ2のネットモールになっても、アクセス数はアマゾンには到底及ばない
1について、ウォルマートがディスカウントサイトからネットモールに転換したいと考えても、その安売りイメージを嫌うのが、高級ブランド。ウォールマートで販売されたからには、定価では売れないのではないかと考えても不思議ではありません。既存の顧客がブランドから離れていくかもしれません。ただし、ネット通販市場の拡大とアマゾンの独占が進む中、アマゾンに対抗するにはウォルマートと手を組まなくてはならないと考え直すブランドが増えているのも事実。ロード・アンド・テイラーは、その1つなのでしょう。
2について、アマゾンと対抗できるNo.2のネットモールになっても、アクセス数はアマゾンに到底及びません。あくまで全米のみですが、月間アクセス数でアマゾンが1億6000万有るのに対し、ウォルマートは7900万しかありません。
【注目点】
- アマゾンなど巨大企業と同じ市場で対峙するには、同規模が必要。
- 独自サイト・モール内サイトなど複数サイトで販売することで、ブランドロイヤルティが高まる
1について、ウォルマートのやり方は、中小企業にはおすすめできません。というのも、規模で劣れば、到底業界トップ企業には勝てないからです。実際、ウォルマートのやり方にも課題があり、成功する保証はありません。
2について、日本でも楽天市場・ヤフーショッピングに出店して、さらに独自サイトを持つネット通販があります。その理由は、ネット上の露出を増やすことで、ブランドロイヤルティを高めることができるからです。
アマゾンとの直接対決を選んだウォルマート。政治で言えば、小選挙区の戦いです。どちらが勝つか、それとも…
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《今回のヒントのまとめ》
- ウォルマート・ストアーズ社が、ネット通販事業で進めるのは、アマゾンと同じ市場・やり方で戦うこと。つまり、ファッション・アパレル品を拡充し、ネットモール形式で販売するというやり方である。
- ウォルマートとの提携が近いロード・アンド・テイラーには、ネット通販の売上増により実店舗の売上減を補えるというメリットがある。
- さらに、独自サイトも継続することで、ネット上の露出が増えることで、ブランドロイヤルティが高まることもメリットである。
- 一方のアマゾンは、ウォルマートの強みである実店舗進出を進める。ホールフーズ買収に続き、百貨店のコールズと提携し、ネット購入品の返品をコールズ店舗で可能にする。
- ウォルマートの課題は、安売りイメージの強さから、高級ブランドから提携を拒否される可能性が高いということである。ただし、アマゾン対抗を迫られる中、ウォルマートとの提携を余儀なくされる例もある。
- さらに、アマゾンに続く2の地位を築けても、アクセス数では到底及ばず、成功する保証はない。
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編集後記
先日、佐々木常夫さんの講演を聞く機会がありました。
徹夜で仕事をするのは、ただの能力不足。
反省します。
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