【819号】豪ドミノ・ピザの高単価ピザの販売を成功したSNS活用法とは?
◎本日のニュース
1)見出し
Domino’s Pizza Crowdsources Its Menu
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2)要約
オーストラリアのドミノ・ピザを運営するドミノ・ピザ・エンタープライゼス社は、グルメ好きのSNSユーザーを対象にしたキャンペーンを実施した。この企画では、スマホアプリを使って、自分独自のトッピングピザを作ることができ、そのピザをSNS上でシェアできる。
さらに、シェアされたピザが売れれば、その売上を一部が開発ユーザーに割戻しされる。この点は、他のSNS販促になかった点である。トッピング数が多いほど割戻し額も多くなる仕組みで、粗利の大きな高単価ピザの拡販につながる。
このキャンペーンは、コカ・コーラ社の「シェア・ア・コーク」キャンペーンに似ている。いずれも、ブランドそのものよりも人を全面に出すことで、販売につなげている。
◎キーセンンスとその翻訳
3)キーとなる英文
But it is among tens of thousands of customer-inspired culinary concoctions helping Australia’s Domino’s Pizza Enterprises Ltd. go after a bigger slice of the global fast-food market.
4)キーとなる英文の和訳
しかし、それは顧客が考えた数万にも及ぶメニューパターンの一つである。
これにより、オーストラリアのドミノ・ピザ・エンタープライゼス社は、世界中に広がるファストフード市場のシェア拡大を目指そうとしている。
5)気になる単語・表現
culinary | 形容詞 | 料理の;台所の |
concoction | 名詞 | 混合物;調合物 |
go after | 自動詞句 | ~を求める;~を追いかける |
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
オーストラリアでドミノ・ピザチェーンを運営するドミノ・ピザ・エンタープライゼス社は、SNSを使ったキャンペーンを実施しました。その概要をまとめると、次のようになります。
【豪ドミノ・ピザの「ピザ・モーグル」キャンペーン】
- スマホアプリ「ピザ・モーグル」で自分好みのトッピングのピザを開発することができる
- 開発したピザはSNSを通じてシェア
- SNSの投稿から生まれた売上の一部は、開発者に割り戻される
SNSを使ったマーケティングは、特に珍しいものではありません。SNSを通じて、商品を購入・体験した人が感想を発信し、その感想から新たな顧客がその商品を購入・体験するという仕組みです。ピザ・モーグルが特殊なのは、3の点。つまり、投稿者のコメントにより売上が生まれれば、その売上の一部が割り戻されるという点です。これが大きな動機となって、豪ドミノ・ピザの売上拡大に大きく貢献しているようです。
具体的には、平均1枚のピザが売れる毎に、22セント~2.86ドル(25豪セント~3.25豪ドル)が支払われます。金額が異なるのは、利用するトッピング数により支払金額に差をつけているから。その理由は、トッピングが多くなれば単価が高くなり、利益率が高まるからです。つまり、トッピングを多く乗せたピザを開発するインセンティブを付けることにより、単価と粗利益の引き上げを目指しているのです。ピザの宅配サービスの場合、単価が異なっても、運ぶコストは同じ。よって、単価が高いほど、利益率は高まります。
このキャンペーンのメリットは、次の通り。
【ピザ・モーグルのメリット】
- 客単価引き上げ・利益率の向上(収益面)
- 新たなメニューの着想(商品開発面)
- 顧客の囲い込み・集客拡大(客数面)
1は、上記で述べた通りですが、他のピザチェーンやグルメピザレストラン・バーとの競争激化により、利益率は低下傾向にあり、利益率の引き上げは大きな重要課題なのです。2は、プロが思いつかない奇想天外なメニューが多く集まり、今後の商品開発に寄与することが期待できます。3は、顧客との直接コミュニケーションが増えることで、既存顧客のマインドシェアが上がります。さらに、これまでドミノ・ピザを利用しなかった人にとって、この面白い企画は大きな利用動機になりえます。
ただし、この企画が長期的な収益増につながるとは限りません。
【ピザ・モーグルの問題点】
- トッピングの制限などにより飽きられやすい点
- もともと自分で好きにトッピングを選べるので、割戻しが生まれにくい点
1は、この企画ではトッピング数に制限が課せられています。トッピングが増えれば、割戻金も増えるので、この制限は仕方ありません。しかし、この制限があるために、開発パターンが限れられるというデメリットが生じます。そのため、飽きられやすくなります。
2について、日本の宅配ピザでもそうですが、もともと顧客は自分好みにトッピングを選べます。よって、SNSを通じて興味深いピザを見つけても、そのピザを元に自分でトッピングすればいいのです。そうなれば、割戻金は発生しません。ユーザー獲得・利用拡大の肝となる仕組みが働かなくなる可能性があるのです。
これに対し、豪ドミノ・ピザを運営するドミノ・ピザ・エンタープライゼス社は、運営するニュージーランド・オランダに水平展開する予定とのこと。ちなみに、ドミノ・ピザ・エンタープライゼス社は、オーストラリア・ニュージーランド・日本。フランス・オランダのマスターFC権を所有しています。よって、日本でも同様のキャンペーンが実施されるかもしれません。
記事では明記されていませんでしたが、この企画がヒントとしたのは、コカ・コーラ社の「シェア・ア・コーク」キャンペーン。以前の記事でも取り上げました。
【808号】コークを専門家から友人に引き上げた「シェア・ア・コーク」キャンペーン
簡単に言えば、個人名の入ったコカ・コーラを販売することにより、自分用のみならず友人・家族用としても売れ、売上増をもたらした、という企画です。ピザ・モーグルとの共通点は、SNSでシェアできる点。シェアすることで、企画を宣伝してもらうだけではなく、ブランドとの接点を増やしました。一方、ピザ・モーグルが差別化したのは、売上の一部を割り戻すことにより、利用動機をより高めた点。お金が絡むと、動機は高まるものです。
記事に掲載されている広告代理店幹部の言葉が印象的でした。その言葉とは、
「人はブランドではなく人を信じる」
というものです。つまり、ブランド・企業がいくらその商品の良さをアピールしても、人が発した言葉ほど効果は発揮しないということです。企業ではなく、その商品を利用している人が推せば、売上につながる確率は高まるのです。企業は、ユーザーとの接点をこれまで以上に増やす必要がありそうです。
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《今回のヒントのまとめ》
- 豪ドミノ・ピザのピザ・モーグルキャンペーンは、スマホアプリで独自のピザを作れ、それをSNSでシェアできる。さらに、そのピザが売れれば、売上の一部を開発者に割り戻される。
- さらに、トッピング数が多いほど割戻金額が高くなるように設定することにより、客単価引き上げに成功している。
- 豪ドミノ・ピザは、この企画により、客単価引き上げ・利益率の向上、新メニューの着想、顧客の囲い込み・集客増というメリットを享受する。
- ただし、トッピングに制限があり、またもともと購入者独自にトッピングができるので、飽きられやすいというデメリットがある。よって、オーストラリア以外の国に、水平展開することで、収益拡大を目指す。
- この企画が成功したのは、人を通じてブランドを宣伝した点。人はブランドではなく人を信じるからである。
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7)おすすめ商品・サービス
◎最近見つけたいいもの
先日、友人に連れて行ったもらった御影のコーヒー専門店。
世界でここでしか飲めないのが、バターブレンドコーヒー。
コーヒーの嫌な苦味や酸味がない一方で、コクが味わえる、とても美味しいコーヒーでした。
普段ミルク無しではコーヒーを飲まない私も、ブラックでおかわりしたくなったほど。
オーナー兼マスターの開発話も、とても興味深かったです。
是非とも外国人観光客に飲んでもらいたいですね。
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。
この5年間でわかったことがあります。
読む上で知っておくべき単語さえわかれば、
大まかな内容はわかるということ。
備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。
今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。
◎Winecarte 簡単ワインの選び方
ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、
ワインの情報を探すのが大変ということ。
公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、
作っています。
編集後記
日銀の追加緩和で株価が大きく上昇しています。
この株高により、消費増税を強引に実行するようです。
高尾亮太朗のツイッター⇒ twitter.com/ryotarotakao
高尾亮太朗の公式サイト⇒ ryotarotakao.com
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!
メルマガ相互紹介を希望されるメルマガ執筆者様は、ご連絡お願いします。
私もごく少ない部数の時に、
いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、
今回は私が恩返しします!
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