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【828号】マクドナルド全米部門低迷の原因は、プレミアムマックラップ?

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◎本日のニュース

1)見出し
McDonald’s Menu Problem: It’s Supersized

 

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2)要約

米マクドナルド全米部門のメニューが肥大化したが、それが業績テコ入れに結びついていない。店舗数が飽和状態の中、売上を伸ばす最善策としてメニューを増やしてきたが、その一方でオペレーションが複雑化し、「ファストフード」としての機能が大きく低下。その結果、客離れが起きている。

 

さらにマクドナルドを苦しめるのが、より小規模のメニューに特化したチェーンの台頭。この対抗策のために、メニューを増やすばかりではなく、カスタマイズサービスも検討しているという。

 

メニューの肥大化に悩むのはレストラン業界だけではない。ゼネラル・モーターズ社やスーパーなど、顧客層拡大を狙って製品の種類拡大に走る企業は多い。しかし、増やしたものの、それが売上増につながっているとは必ずしも言えない。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

But swelling menus have made the company’s kitchen operations increasingly complex.

 

4)キーとなる英文の和訳

しかし、肥大化するメニューによって、マクドナルドのキッチン運営はより複雑化してきた。

 

5)気になる単語・表現

swell 自動詞 膨らむ;(数量などが)増大する
complex 形容詞 入り組んだ;複雑な;多くの部分から成る

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

WSJ記事タイトルを見ると、 “Supersized”となるので、各メニューの大きさが肥大化したようにも思えますが、内容はメニューの数が肥大化したことの弊害を論じています。つまり、2年以上続くマクドナルド全米部門の収益低迷の要因として、メニュー数の肥大化が考えられるのです。

 

まず、マクドナルドメニュー数のデータを見ると、次のようになります。

 

【マクドナルド全米部門のメニュー数】

[1]2007年 85種類→2014年121種類

[2]朝食に14種のバーガー類、ランチにビックマックと他15種のバーガー類を提供

[3]2013年3~7月に6種類の新メニューを追加

 

驚くことに、1948年には9種類のメニューしかなかったようです。それが今では12倍以上に増加。2008年からの8年間で36種類、一年平均4.5種類増やしたことになります。それが、昨年の5ヶ月間で6種類も増加したということは、最近になってメニュー増加ペースが増したことを示しています。業績テコ入れのためのメニュー増は鮮明なのです。

 

マクドナルド全米部門が業績テコ入れにメニュー増を採用したのは、店舗数が限界に近づき、店舗数を増やすことがほぼ不可能になったからです。全米の店舗数は約14300店舗。一つの郡に平均4.6店舗。ちなみに、日本マクドナルドの店舗数は、約3300店舗(2011年現在)であり、人口比で考えるとアメリカは日本よりも2倍近く店舗数が多いことがわかります。(1万人あたり、アメリカ0.45店舗、日本0.26店舗)そこで、客数を伸ばすために、メニューを増やすという方法を採用したのです。

 

しかし、メニューを増やした一方で犠牲になったのは、スピード提供。マクドナルドの基本サービスである「ファスト」が損なわれる結果になりました。スピード低下を示すデータは、以下の通りです。

 

【メニューを増やしたマクドナルドのサービススピードが低下】

[1]2013年のドライブスルースピード調査で、過去15年間で最悪の189.49秒を記録。→目標の2倍以上(目標は90秒)

[2]2013年に発売したプレミアムマックラップは、提供するのに85秒も掛かる店舗あり↔目標は60秒

 

ドライブスルーは、食事を早く手に入れたから利用するもの。マクドナルドがこれに3分以上掛かるなら、他のファストフードチェーンを利用しようと思うのも不思議ではありません。マクドナルド店舗に出来たドライブスルーの行列を見て、近くの競合チェーンに流れる顧客は多いようです。

 

特に効率の悪いのは、プレミアムマックラップ。10インチの小麦トルティーヤに、生野菜、2種から選べるチキン、3種から選べるソースを載せるメニューです。20・30代のミレニアル世代をターゲットに、新鮮でカスタマイズ可能な料理を提供できるファストカジュアルに対抗して開発されました。写真を見るだけでも、この調理の複雑さは容易に想像できます。しかも、プレミアムマックラップだけでも8種類あり、プレミアムマックラップの注文により、他のバーガー類の調理も相当混乱することでしょう。

 

このメニュー肥大化によるスピード提供の劣化に対して、マクドナルドは次のような対策を打っています。

 

【マクドナルドの対策】

[人による効率化]ピーク時のスタッフ増員

[人による効率化]デュアルポイントの導入

[人以外による効率化]仕込み・調理テーブルの導入

 

調理スピードを引き上げる方法として、人による効率化と人以外による効率化という2つの方法があります。人による効率化として、マクドナルドはピーク時の人員を増員。また、注文場所と提供場所を分けるというデュアルポイントを導入することにより、注文から提供までの時間短縮を目指しています。人以外による効率化として、キッチンに新たなテーブルを導入。ここで、集中的に仕込みとカスタマイズに対応します。

 

おやっと思った人もいるかもしれません。マクドナルドは、メニュー削減にはまだ踏み切っていないのです。そればかりか、ファストカジュアルに対抗し、カスタマイズサービスの導入も検討しており、調理の複雑化は依然進むと予想されます。

 

顧客離れを引き起こしているメニューの肥大化ですが、これはレストラン業界だけの話ではありません。自動車や小売など他の業界でも起こっています。

 

[販売品目肥大化の事例]

[ゼネラル・モーターズ社]数十年で販売車種を増加

[スーパーマーケット]1991年 15000種類→2014年 50000種類

 

ゼネラル・モーターズ社は、破綻に際しポンティアックとサターンから撤退したものの、数十年前と比べると、販売車種は増加しています。スーパーマーケットは、販売商品の種類が約25年前と比べて3倍以上にまで増大しています。

 

面白いのは、販売品目を増やしても、それが収益拡大に必ずしも貢献していないということです。

 

【販売品目増が収益拡大に貢献していない事例】

[マクドナルド]プレミアムマックラップの週間販売数は140個。チーズバーガーは1000個。(あるFC店舗の実績)

[スーパーマーケット]50000アイテムの内、四分の一は一ヶ月に一個も売れない

 

つまり、コストを掛けて販売品目を増やしても、大した売上を生み出していないのです。その分売上を伸ばした可能性は高いですが、収益拡大への貢献は低いと言えるでしょう。

 

消費者ニーズの多様化を考えれば、ついつい販売品目を増やしたり、カスタマイズサービスをしたくなったりしますが、それが必ずしも収益拡大につながるとは限りません。逆に、顧客がより重視する価値を毀損することになり、収益を悪化する要因になりかねません。

 

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《今回のヒントのまとめ》

  • マクドナルド全米部門がメニュー数を増やしているのは、店舗数が飽和状態の中、客数を増やす最善の策だから。業績低迷のテコ入れ策として実施している。
  • また、競合する小規模なメニュー特化型チェーンやより高品質なファストカジュアルへの対抗策という意味合いもある。
  • しかし、その一方で作業効率の悪化・作業スピードの低下を招き、顧客離れを引き起こしている。
  • その対策として、ピーク時のスタッフ増員や、デュアルポイント導入や仕込み・調理テーブル導入によるオペレーションの効率化を行っている。しかし、メニュー削減はなく、それどころか、ファストカジュアル対策としてカスタマイズサービスの提供を計画している。
  • 消費者ニーズを多様化を考えた安易は販売品目の拡大は、本当に顧客が求める価値を毀損する恐れがある。

 

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7)おすすめ商品・サービス

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私が食べたのは、麻婆豆腐セット。

四川料理の専門店だけあって、汗が出るほど辛かったですよ。

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ランチセットは平日のみ。

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中華料理 四川

 

 

 

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WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

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備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

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ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

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編集後記

日本マクドナルドでも、2007年頃にマックラップが販売されていたようです。

その後姿を消したということは、何か問題があったからでしょう。

ラップというメニュー自体、日本人にはほとんど馴染みがないので、販売不振が一番の原因だったのでしょうね。

ラップにしてタコスにしろ、あの手の包む食事メニューは、日本人の口に合わないのかなぁ。(クレープは人気ですが。)

 

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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