【725号】サンドイッチチェーンのクイズノス、店舗の大量閉鎖に追い込まれた要因とは？

by courtesy of Ludie Cochrane

◎本日のニュース

1)見出し　
Crisis Quickens at Quiznos

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2)要約

かつて人気を誇ったサンドイッチチェーンのクイズノスが、事業再生に苦戦している。それは、大量の店舗閉鎖とフランチャイズ加盟店との対立に直面しているからである。

2008年のピーク時には全世界で5000店近くにまで拡大したクイズノスであるが、競争激化と顧客ニーズの変化により、業績は悪化。大量出店が重しとなり、債権者との債務軽減の交渉を余儀なくされてきた。その交渉がまとまったものの、不採算店は一向に減らず、今後も店舗閉鎖が続く。

フランチャイズ加盟店からは、クイズノス子会社からの購入が義務付けられている食材や備品の価格が高いとの苦情が押し寄せた。訴訟にまで発展し、新経営陣により価格は引き下げられることになった。しかし、高コスト体質は変わらず、これが留まることのない舗閉鎖を引き起こしている。

債権者や大株主から送り込まれた新経営陣は、事業の構造改革のため、QSCの改善に取り組んでいる。しかしそれによる変化が、顧客を混乱させ、さらなる顧客離れを引き起こしている。

◎キーセンテンスとその翻訳

3）キーとなる英文

The once-booming sandwich chain Quiznos is stumbling two years into a major turnaround effort, prompting the company to seek concessions from creditors owed nearly $600 million.

4）キーとなる英文の和訳

かつて好調であったサンドイッチチェーンのクイズノスは、重要な事業再建への試みで2年間の停滞を余儀なくされている。

再建計画では、クイズノスは、貸付額が6億ドル近くにも及ぶ債権者からの譲歩を探ろうとしている。

5）気になる単語・表現

boom	自動詞	(商売などが）にわかに景気づく
stumble	自動詞	つまづく
major	形容詞	主要な、大事な
turnaround	名詞	（企業の）再建；（志向・意見・行動などの）転換
prompt O to V	他動詞句	Oを刺激して～させる
concession	名詞	譲歩
creditor	名詞	債権者、貸し主
owe　A for B	他動詞	BにAを借りている

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

クイズノス(Quiznos)は、ピーク時の2008年には、全世界で5000店近くを展開していました。それまでは、トーストしたサンドイッチという商品で差別化し、サンドイッチチェーンを独占するサブウェイ(Subway)に対抗できていました。2008年以降から転落が始まります。

転落の要因は、競争激化と消費者ニーズの変化。ポットベリー社(Potbelly Corp.)やジミー・ジョンズ・フランチャイズ社(Jimmy John’s Franchise LLC)が参入し、早くて便利な食事がしたい消費者の心を掴むことになります。その後、2010年には約3000店にまで縮小。現在は約2100店（全米約1500店）で、店舗閉鎖の波はまだ続いています。

【クイズノスが大量閉店に追い込まれた要因】

［1］競争の激化

［2］消費者ニーズへの未対応

業績悪化により店舗閉鎖に追い込まれたわけですが、その一方で負債は増幅。これが、クイズノスにとって大きな重しになるばかりか、債権者との交渉に時間が取られ、事業の改善が後回しになったのです。結局、2012年初めに支払猶予で合意したものの、再建計画はうまく進まず、失敗。再交渉を余儀なくされて、漸く合意に到達したのです。

業績悪化は、フランチャイズ（FC）会社から購入することが義務付けられている食材や備品の価格が、実勢価格よりも高いという苦情が多数寄せられていました。業績悪化が、この高コスト体質を窮地に陥れます。売上は下がる一方で、仕入れ金額は高いままで、これまで以上に儲からなくなったのです。利益率の低下により、閉店に踏み切るFC加盟店が増加。その結果、広告への協賛金が集まらず、販促が思うように出来ません。（通常、本部が広告宣伝を行う代わりに、FC加盟店はその費用を負担します。）そのため、売上はさらに悪化し、店舗閉鎖はさらに増えたのです。実際、ある加盟店では、週の売上が3年前の7000ドルから5000ドルに低下し、週に300ドルも損失が発生したとのこと。

【大量出店後の業績悪化がもたらした負のスパイラル】

［1］大量出店後の業績悪化→負債の増加→財務の改善に時間が取られる→事業改革が進まず→さらなる業績悪化

［2］業績悪化・高コスト体質→利益率の低下→店舗閉鎖→広告宣伝協賛金が集まらず→販促の不足→売上悪化→さらなる店舗閉鎖

債務再編（支払猶予や債権の一部放棄など）後に、構造改革に取り組むわけですが、これにも失敗しています。構造改革で行ったのは、QSCの改善。清掃の更なる徹底や、新メニューの導入と売上不振メニューの廃止、オペレーションの効率化などです。

例えば、オペレーションの効率化では、野菜の鮮度をアピールするために、野菜を挟むタイミングをトースト前からトースト後に変更しました。しかし、トースト前に挟む野菜を指定してきた顧客は、トースト後に自動的に野菜を挟まれることに不満。その結果、顧客離れを引き起こし、結局オペレーションを元に戻ことになったのです。このようにオペレーションが混乱したのは、顧客の要望やニーズを考慮に入れなかったからに他なりません。

結局クイズノスが苦境に陥った一番根源的な要因は、消費者ニーズに対応できず、競争に負けたから。その結果、店舗の大量閉鎖に追い込まれ、債務危機やFC加盟店との対立に直面したのです。そして、構造改革においても、顧客ニーズを十分考慮に入れなかったため、顧客・店舗双方に混乱を招く結果になりました。クイズノスの業績悪化は、消費者・顧客に十分向き合わなかったのが要因と言えるのではないでしょうか。

Quiznos

Potbelly Corp.

Jimmy John’s Franchise LCC

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《今回のヒントのまとめ》

1）クイズノスが店舗の大量閉鎖に追い込まれたのは、消費者ニーズに沿わなかったために、競合との競争に負けたからである。

2）大量出店後の業績悪化は、財務を毀損させ、債権者との交渉に手間取ることになった。その結果、事業の構造改革が後手にまわることになり、業績はさらに悪化した。

3）また、業績悪化は、FC加盟店の不満をさらに増幅させた。利益率低下により店舗閉鎖に踏み切る加盟店が増加し、広告宣伝の協賛金が十分集まらず、思うような販促ができなくなった。その結果、売上はさらに悪化し、更なる店舗閉鎖を招いた。

4）事業の構造改革でも、顧客ニーズを考慮に入れない変更により、顧客・店舗双方を混乱させ、顧客離れを加速させる結果になった。

5）結局、消費者・顧客に十分向き合わなかったために、ニーズを満たすことができず、業績悪化に歯止めが効かなくなったのではないか。

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