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【734号】米1ドルショップ業績が示す、アメリカ個人消費の実態

ファミリーダラーストアの看板

by courtesy of Steven Depolo

 

◎本日のニュース

1)見出し 
Low-End Retailers Had a Rough Holiday

 

 

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2)要約

回復基調にあるアメリカ経済であるが、低所得者の生活が依然苦しいという指標はたくさんある。1ドルショップの業績を見れば、低所得者にとってその価格さえ高すぎるという実態が垣間見れる。

 

低所得者の生活が苦しい要因は、緩慢な回復しない雇用環境や低迷する賃金であり、その一方で負担の増す税制改正や生活保護プログラムの縮小が追い打ちを掛ける。将来の生活向上が見通せないので、支出を削減し、それが低所得者をメイン顧客とする1ドルショップの業績悪化につながる。

 

ただ、低所得者を顧客としない小売業が好調というわけではない。ギャップなど中間層を顧客とする小売業も、増収幅が大きく鈍化。そのため、クリスマス商戦は、顧客の奪い合いが加熱し、値引き合戦になってしまった。

 

◎キーセンンスとその翻訳

3)キーとなる英文

Family Dollar Stores Inc. on Thursday lowered its full-year profit forecast and reversed course on strategy.

 

4)キーとなる英文の和訳

ファミリーダラーストアーズ社は、木曜日、通期利益予想を下方修正し、戦略の転換を発表した。

 

5)気になる単語・表現

reverse

他動詞

~を覆す、一変する

 

◎記事から読み取った今日のヒント

6)ビジネスのヒント

景気回復が続くアメリカですが、消費階層によって、その恩恵は全く異なるようです。二極化が進んでいるのです。

 

【アメリカ消費の二極化】

【高所得者】不動産価格・株価上昇による資産効果で、消費拡大。

【低所得者】緩慢な雇用回復や賃金上昇、所得税率の増加、生活保護プログラムの縮小による負担増加で、消費低迷。

 

要は、金融緩和により不動産市況・株式市場の好転で恩恵を受けた高所得者が、消費を増やすことで、景気が回復基調になっただけで、その恩恵を受けない低所得者は、生活が依然苦しいということです。その追い打ちを掛けるように、負担増の税制改正や恩恵縮小の財政赤字削減策が実施され、低所得者は高所得者とは全く逆の消費行動を取らざるを得なくなったのです。

 

消費を渋る低所得者の悪影響を受けるのが、低所得者をメイン顧客とする小売企業。その事例は次のようになります。

 

【低所得者をメイン顧客とする小売業とその苦戦ぶり】

【マクドナルド・バーガーキング】高単価バーガーの売れ行き不振と1ドルメニューの拡充

【化粧品メーカー】低価格帯の売れ行きが良くない

【ファミリーダラーストアーズ】11月までの第一四半期純利益は、昨年同期比で2.8%減、売上は3.2%減

【シアーズホールディングス】シアーズ・Kマートの過去2ヶ月の既存店売上が7.4%減。

 

要因は、客数減。支出を渋る低所得者が、来店頻度を減らしたからです。ただし、それだけではありません。ファミリーダラーとシアーズは、販売戦略ミスも収益減少をもたらしました。

 

【ファミリーダラーとシアーズの販売戦略ミス】

[ファミリーダラー]EDLP(常時低価格の販売手法)から週間特売に切り替えたが、非特売品の値頃感が小さくなったため、顧客離れが加速。今回EDLPへの回帰を発表。

[シアーズ]実店舗よりネット通販への投資を増やし、低価格よりも利便性向上に力を注ぐ。しかし、顧客の所得減少が続く中、顧客の支持を得られず顧客離れ。

 

アメリカ経済の回復基調を考慮して、値下げによる集客よりも収益向上に力点を置いたからでしょうか。ファミリーダラーは、1週間毎に特売品を切り替える期間特売手法を採用することで、客離れを引き起こすだけでなく、売場変更の必要性によるコスト増も起こりました。これも、収益悪化の要因となります。

 

ただし、売上減少に悩む企業は、低所得者向け小売業だけではありません。中間層をターゲットとする小売業も、アメリカ景気回復の恩恵を受けているとは言えないのです。

 

【中間層を顧客とする小売業の実態】

【ギャップ社】一昨年は既存店売上が大きく増加したが、昨年11月・12月は1%に大きく鈍化。

【エルブランズ社】ヴィクトリア・シークレットの下着からバス&ボディワークスの化粧品まで扱う小売企業。既存店売上増加率が2%に鈍化。合わせて、第四四半期の利益見通しを下方修正。

 

低所得者ほどはないものの、中間所得者も財布の紐を緩めているわけではないのです。ギャップの事例が示すように、昨年よりも売上増加率が鈍化しているということは、財布の紐を固くしたのかもしれません。所得税負担の増加や財政支出削減の悪影響が出ていると推測されます。

 

このように、中間所得者・低所得者向けの小売業が振るわないとどうなるか。それは、財布の紐が一年で一番緩みやすいクリスマス商戦でも、顧客の奪い合いが起こるので、価格競争が加熱することになります。商戦が進むに連れて、小売企業は値引率・値引き幅を拡大したので、直前の買い物が極端に増加し、以前取り上げたUPSの配達遅れが発生したのです。クリスマス商戦全体を見れば、恐らく売上は伸びているものの、減益の恐れさえあると言えます。

 

金融緩和による景気回復を目指す日本が、同様の方法で先に回復したアメリカの後追いをしていると考えれば、同様の光景が日本でも起こるかもしれません。今春にベースアップが起こったとしても、その後の賃金上昇はあまり期待できないかもしれません。さらに、消費増税やマクロ経済スライドによる年金削減は、アメリカの所得税アップ・保護プログラム削減とほぼ同様の影響を及ぼします。日本でも、賃金の伸びが期待できない中間所得者・低所得者向け小売企業は、今後苦しくなるかもしれません。

 

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《今回のヒントのまとめ》

1)  景気回復が続くアメリカ経済だが、その恩恵を受けるのは高所得者であり、低所得者は、緩慢な雇用・賃金の回復や税負担増・保護プログラム縮小により、生活は依然苦しい。

2)  この悪影響を受けるのが、低所得者をメイン顧客とする小売業である。さらに、ファミリーダラーやシアーズは、価格戦略のミスで、顧客離れが拡大し、業績悪化に苦しんでいる。

3)  ギャップなどの中間所得者向け小売業も、売上増加率の鈍化に苦しむ。これは、税負担増・財政支出削減の悪影響だろう。

4)  その結果、クリスマス商戦は顧客の奪い合いの様相で、価格競争は激化。売上が伸びたとしても、減益の恐れがある。

5)  消費の二極化は、アメリカと同様の方法で景気回復を目指す日本でも起こる可能性がある。消費増税・年金削減など、外部環境も酷似している。

 

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7)おすすめ商品・サービス 

◎最近見つけたいいもの

お正月に飲んだ日本酒がこちら。

スッキリしていて、とても飲みやすく、どんどん進みました。

ちなみに、松竹梅さんの日本酒は始めて。

また飲みたい辛口です。

松竹梅 特選山田錦 特別純米

 

◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語

WSJメルマガを始めてから、5年経ちました。

この5年間でわかったことがあります。

読む上で知っておくべき単語さえわかれば、

大まかな内容はわかるということ。

備忘録の意味でも、調べた単語をサイト上にアップしています。

今後、メルマガとしてスピンアウトする予定にしています。

english.ryotarotakao.com/

 

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

ワインカルテを作る時にいつも感じるのは、

ワインの情報を探すのが大変ということ。

公式サイト・通販サイトをいくつかあたって、

作っています。

wine.ryotarotakao.com/

 

編集後記

10日の深夜に西宮えびす神社にお参りに行きました。

夜遅くだったので、空いていると思いきや、1000人近い人でかなりの混み様。

あの光景、外国人から見たらかなり異様でしょうね。

それにしても、あそこまで人を集めるえべっさんは、スゴイ。

 

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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私もごく少ない部数の時に、

いろんなメルマガ執筆者様に助けていただきましたので、

今回は私が恩返しします!

 

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